不安障害
全般性不安障害/パニック障害/恐怖症/強迫性障害(強迫神経症)

■不安障害

不安とは「対象のない怖れ」のことです。
神経症は不安が症状の中心になることは同じですが、特に不安障害ではその度合いが大きいです。
不安が前景に立ち、それによって障害される疾患群を「不安障害」と言います。
急性の不安と慢性の不安があり、急性に起きる不安状態を不安発作と言います。
不安発作には、激しい動悸が生じて心臓が苦しくなり死ぬような恐怖を体験する心臓神経症や、
呼吸が苦しくなって手足がしびれ、ときには失神発作を起こす過換気症候群などがあります。
不安発作は、治療をすれば治まりやすいですが、また発作が起こるのでは、という「予期不安」に悩まされます。

不安の症状には、精神症状と身体症状があります。
精神症状は、恐れ・緊張・心配・恐怖・不穏・焦燥・苦悶・興奮などで、
身体症状は、手指振戦・発汗・頻脈・嘔気・嘔吐・下痢・尿意・呼吸困難などです。
また、不安障害をその症状や特徴別に分類しますと、
全般性不安障害‥‥根拠のない強い不安感に絶えず苦しめられる。
パニック障害‥‥‥激しい不安のために発作が起きる。
恐怖症‥‥‥‥‥‥ある特定の対象を異常に怖がる。
強迫性障害‥‥‥‥心の底の不安や葛藤が、強迫行動や強迫観念にすりかわってしまう。
となります。

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■全般性不安障害

「様々な身体症状を伴って過剰で広範な憂慮」と定義されています。
その憂慮が患者の社会的、職業的機能を障害し、困難の原因となっているものを言います。
この全般性不安障害では何らかの精神的疾患と共存していることが多いようです。
急な不安発作、パニック発作などはありませんが、いつも不安な気分で、身体的な不安症状が消えません。
自分ではどうにもならない不安感に苛まれるのです。

【症状】
全般性不安障害の主な症状は、不安、運動性緊張、自律神経系の過剰活動、認知的過覚醒です。
不安は過剰で患者の様々な生活の側面が障害されてきます。
運動筋肉の緊張・落ち着きのなさ・頭痛などが頻繁に見られるようになります。
自律神経の過剰活動では呼吸が早くなる・多汗・動悸や胃腸症状が出ます。
認知的過覚醒とは、患者がちょっとした刺激に反応する、驚きやすくなることが顕著です。
診断基準は、
・仕事などの出来事、活動について過剰な不安と心配が起こる日の方が起こらない日よりも多い。
・本人が心配を制御するのが難しいと感じている。
・以下の症状のうち3つ以上あてはまる。 1.落ち着きのなさ、緊張感、過敏になっている。
2.疲れやすい。
3.集中困難、心が空白になる。
4.易刺激性
5.筋肉の緊張
6.睡眠障害(入眠、睡眠維持の困難、熟眠感がない)

【原因】
原因ははっきりと分かっていません。色々な患者さんがなる可能性があります。
ある程度の不安は正常であるので、正常な不安と区別する事や、
心理社会的・生物学的要因を区別する事は難解です。

@生物学的要因
セロトニン系の調節の異常と考えられています。大脳基底核、大脳辺縁系、大脳皮質などでの
神経伝達がうまく行かないためではないかといわれています。
A心理社会的要因
誤って不正確に認知された危険に対して反応しているため、というものと 不安は解決されない無意識の葛藤の症状であるという考えがあります。
何らかのストレスが引き金によって起こるものだと思います。

【治療と経過】
比較的慢性な病気なので、治療を開始してもすぐに治ることはあまり期待できません。
また、他の精神疾患や身体疾患を合併していることが多いので、そちらも治療することが必要です。
パニック障害のように急を要するようなものではないので、気長に構えることが大切です。
治療は精神療法と薬物療法を組み合わせて行っていきます。
@精神療法
認知行動療法、支持療法、力動精神療法などが行われます。
A薬物療法

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■パニック障害

「自然発生的な予測のできないパニック発作を特徴とし、発作を繰り返す」ものです。
パニック発作は比較的短時間持続する強い恐怖・不安で、動悸や息苦しいなどの身体症状も伴います。
パニック障害の患者さんがパニック発作を感じる頻度はまちまちで、1日数回のこともあれば、
一年間に1〜2回のこともあり、他の体の病気やヒステリー症状と誤診されることがあります。
また、パニック障害には必ずと言っていいほど「広場恐怖」が伴います。
広場恐怖は「今いるこの場所が逃げられない場所だと考え、激しい恐怖に恐れる」と言ったもので、
起きる場所として駅、電車やバスの中、デパート、エレベーター、地下鉄など、公の場所が多く、
そのため社会生活能力が著しく障害されることが問題となっていきます。
恐がる必要のない場所であり、本人たちも頭の中では「恐がる必要はない」と思っています。
しかし、理屈よりも先に恐怖がでてきてしまうのです。
特に、パニック発作が起きて、どこかに逃げたいのに逃げられない、
そういう場所にいるとなると非常な恐怖におそわれ、発作はいっそうひどいものになります。
【症状】
@パニック発作
最初のパニック発作はまったく自然発生的に出現します。
中には、興奮や身体的運動、性行動で生じることもあるようです。
パニック発作が始まると急速に症状が悪くなることが多く、主な精神症状としては、
死が迫ってくる感じ、死と身の破滅の感覚、極度の恐怖です。
この恐怖の原因が何であるかを特定することができません。
身体症状としては、頻脈、動悸、呼吸困難、発汗などで、その場から立ち去ろうとします。
発作は通常20〜30分続きます。
心臓や呼吸器系に症状がでるのでなおさら死が身近に感じられてしまうようです。
発作消失後も、またこの発作が来るのではないだろうかといった「予期不安」を持つことが多いです。
「予想つかない、自然にわき出るパニック発作」がメインです。
パニック発作の診断基準としては、強い恐怖または不快を感じ以下のうち4つ以上が突然出現し、
10分以内に不安が頂点に達するものです。
・動悸、心悸亢進、心拍数の増加
・発汗
・身震い、震え
・息切れ感、息苦しさ
・窒息感
・胸痛、胸部不快感
・嘔気、腹部の不快感
・めまい、ふらつき
・現実感消失、離人症状
・気が狂うことに対する恐怖
・死ぬことに対する恐怖
・異常感覚(感覚麻痺)
・冷感、熱感
パニック発作は他の障害(特定の恐怖症、社会恐怖、PTSDなど)でも出現することはあります。
その場合のパニック発作ははっきりとした引き金となって発作が起きるものです。
パニック障害の場合とは引き金を同定することはできません。

A広場恐怖 助けが求められないような場所や状況をできるだけ避けようとします。
車や人通りの多いところ、混雑したところ、地下鉄、電車、飛行機、エレベーターなど
公共性の強いところで友人や家族と一緒にいることを望みます。
外出するときも誰かと一緒じゃなきゃいやだと主張することが多くなります。

Bその他 パニック障害の場合、同時に抑うつ症状を持っていることがよくあります。
他に、仕事ができにくくなるために経済困難、アルコールや薬物乱用などの問題もあるようです。

【原因】
何かのストレスが原因となって、自律神経のバランスが崩れ、
神経伝達物質の変化によって引き起こされるものと考えられています。
@生物学的要因
パニック障害では自律神経の交感神経の緊張が亢進していることがまず第一です。 繰り返される刺激に対する反応が遅く、ちょっとした刺激にも過剰に反応しやすくなっています。
パニックを誘発する物質として二酸化炭素や神経伝達物質があります。
神経伝達物質はノルアドレナリンやセロトニン、GABAなどの受容体に
拮抗(邪魔)するように働く物質がパニック障害に関係していると考えられています。
A遺伝的要因
精確な調査はまだ行われていないようですが、報告では一親等者間でのパニック障害は
4〜8倍の確率で発生しやすくなっているそうです。
B心理社会的要因
発作は逃げられない場所にいると感じたときに起きるのですが、実際のところ
その場所は逃げられない場所ではないはずです。
そのものに対するその人の捉え方が歪んでしまったためにそう感じるようになります。
別の考えでは「分離不安」があります。
不安を呼び起こすような刺激に対する自己防衛が追いつかなくなったために起こるのです。
【治療と経過】
比較的長い経過をたどる病気ですが、患者によっても異なってきます。
30〜40%の患者では長期間無症状、50%の患者では症状が軽く、生活が脅かされるものではない様です。
カフェインやニコチンを過剰に摂取すると症状は悪化するようです。
依存症に陥りやすいこともあります。
治療法は薬物療法と認知行動療法です。ほとんどの患者さんで劇的に症状の改善がみられます。
症状が改善してくれば、デパートや電車を実際に利用していくようにします。

@薬物療法
A認知行動療法

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■恐怖症

恐れる必要のないものに対して恐れることを恐怖症と言いますが、不安と違いその対象がはっきりとしています。
恐怖症は対象に対する強迫神経症のようなものです。この対象に対して色々と命名されます。

【対人恐怖症】
日本人に多い不安障害の一つです。
「他人と同席する場面で不当に強い不安と精神的緊張を生じ、他人に軽蔑されるのではないか、
嫌がられるのではないかと思い、対人関係からできるだけ身を退こうとする神経症の一型」
となっています。
対人関係をできる限り避けようとする反面、それを不甲斐なく思い克服しようとする面もあります。
対人恐怖の場合は、「1対1」の局面に緊張し、
親しい人と見知らぬ人の中間ぐらいの人との時に症状がでやすいようです。
思春期、青年期の病気で、男性に多い傾向にあるようです。
ひどく緊張するため相手の目を見て話すことができず、落ち着いていられません。
なるべく早くその場を立ち去ろうとし、できるなら会わないでおこうと努力します。
原因は様々考えられていますが、「対人関係の持ち方に対して、非常に甘えが強い」と言われています。
対人関係が確立してなく、甘えていいかわからない、自分を受け入れてくれるかどうかはっきりしない
というような相手に対して緊張し、対人恐怖になりやすいようです。

【社会恐怖】 「知らない人の前では、食事をしたり話をしたり行動をするのが恐くてたまらない」と言うものです。
他人の視線が気になるあまり起きて来るものです。
社会恐怖自体日本では現実問題となることがあまりありません。
日常生活でなんなかの問題が生じてくるようなケースも少ないようです。原因はよくわかっていません。
しかし、人前で話すことが必要な職業(芸能人、政治家など)で、話すのが恐くなったりしたら大変です。
この場合、行き過ぎると転換性障害などの診断名がつくことがあります。
診断基準は
・知らない人の前で恥ずかしい思いをするのを恐れ、行動したり不安症状がでるのを恐れる。
・ことによってはパニック発作が出現する。
・本人は意識しすぎだと自覚している。
・そういった状況を避けたり、そのような状況の時は我慢している。
・社会生活に支障をきたす。
・他の精神疾患にはあてはまらない。
などです。
治療は、薬物治療と、精神療法として、暴露療法、力動精神療法などが用いられます。

【特定の恐怖症】
明白に限定された対象に対して、恐怖しそれを回避しようとする状態です。
本人は恐がるのはおかしいと思っていても、どうしようもない状態です。分類すると
・動物型…特定の動物などを極端に恐れる。小児に多く、5歳以降ではほとんど生じない。
・自然環境型…嵐、高所、水、雷など。
・血液・注射・外傷型…血液を見たり、傷口を見たり医療的行為に恐怖する。
・状況型…公共の輸送機関、トンネル、橋、エレベータ、飛行機など。
・その他
とあります。
あまりにもひどいとパニック発作を起こすこともあります。
原因としては、単純に対象が恐い場合と心の中の葛藤が特定の対象に転化している場合があります。
診断基準は
・特定の対象に対して、理屈に合わない強い恐怖を感じる。
・すぐに強い不安におそわれ、パニック発作を生じることもある。
・本人の頭の中では理屈よりも先に恐怖を感じてしまう。
・恐怖の対象をできるだけ避けているか、苦痛や不安を感じながらたえている。
・日常生活に支障がある。
となっています。
【先端恐怖】
鉛筆、針、フォークなどの先の尖ったものを見ると、被害的に恐れる状態、または
加害的な観念が浮かんで、恐怖にかられる場合もあります。

【疾病恐怖】
自分が何か悪性の病気にかかったと恐れる状態です。
その恐れとなる病気によって細菌恐怖、エイズ恐怖、梅毒恐怖、癌恐怖などがあります。
医師が診察、検査して心配ないと保証しても、再三受診したり、病院を変えたりします。

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■強迫性障害(強迫神経症)

ばかばかしい、不合理であるとわかっていてもやめることのできない、
「わかっちゃいるけどやめられない」症状を強迫症状と言います。
この強迫症状が前景に立つ神経症が強迫性障害(強迫神経症)です。
@強迫観念
強迫観念とは、ばかばかしいとわかっていても、ある考えが浮かんできて困るものです。
例えば、「ドアの鍵をかけたか」「ガス栓をとしたか」などの考えが、払っても浮かんでくるものです。
内容では「不潔」「汚れ」に関してが一番多く、次に「他人を傷つけたのではないか」、
そして「身体的」「セックス」「宗教的」なものとなっています。
ひどい場合「殺人したのではないか」という考えが浮かんで、新聞で確認することもあります。
周囲の人に聞いてまわる、質問癖というのも見られます。

A強迫行為
ばかばかしいとわかっていても、ある行為を繰り返しせざるを得ないものです。
強迫観念に基づくものが多いです。
何回も手を洗う洗浄強迫、何回も確認する確認強迫、寝る前に儀式的行為を行う就眠儀式などがあります。
不潔恐怖を消すために手を洗う=強迫観念をうち消すために強迫行為をすると言うことになります。

B強迫性格
強迫状態を呈しやすい人は、強迫性格があると言われています。
強迫性格とは、良心的、几帳面、杓子定規、融通性・柔軟性の欠如、ささいなことにこだわる、
ケチ、自信欠乏、完全癖の強い性格をさします。自己不確実性性格ともいい、小心な性格です。
強迫症状には自分で確認している「自己完結型」と、確認のために他人も巻き込む「他者巻き込み型」の
二つのタイプに分けられ他者巻き込み型は女性に多く、より重症感があります。

【症状】
強迫観念・行動は「精神分裂病」の妄想とよく似ています。しかし、実際は大きく違います。
強迫神経症では「自分でもおかしい」思っています。分裂病では病識はありません。
そこが大きな違いです。 わかっちゃいるけどやめられない状態で、それをきちんと言葉で言うことができるのです。
一方、分裂病の場合は自分の行動にまったく違和感を覚えません。
一般的によく見られる症状は、「汚いもの」に触れることに対する恐怖から、
トイレに入れない、何十分も手を洗い続ける、体を洗い続ける、服を着替えるなどがあります。
また、「何度も同じことを繰り返す」儀式的な行動もよく見られます。
玄関をまたぐタイミングが決められず、玄関の前でいったりきたりを繰り返したりするものです。

強迫観念の診断基準
・あることを何度も考え、衝動、心に引っかかり、自分でも理屈に合わないとわかっており、
やめたいがどうしても浮かんできてしまうため、強い不安や苦痛を引き起こす。
・その思考、衝動、イメージは単に現実生活の問題についての過剰な心配ではない。
・強い不安や苦痛を取り除くために、他の行動や考えでうち消そうとする。
・自分でもその間替え、衝動、イメージは自分自身の心の産物であるとわかっている。
強迫行為の診断基準 ・何度も同じ動作を繰り返したり、心の中で考えたりする。強迫観念に反応したり、
厳しい規則などに従って行動したりしなければならないと感じている。
・行動や心の中で考えたりすることは、苦痛を予防したり、緩和したり、
何か恐ろしい出来事や状況を避けるとこと目的としています。
・本人が強迫観念、強迫行為に関しておかしいと思っている。
・強迫観念や強迫行為によって、1日の大半を浪費したり、社会生活に支障をきたす。
・その他の精神的疾患などが存在しない。

【原因】
大部分は何らかのきっかけによって、突然発症します。
それが、受験、失恋、妊娠などのストレスをきっかけに発現したりもします。
多くは20歳前後で発症することが多いようです。思春期では男性の方が若干発生しやすいようです。
既婚者よりも未婚者の方が発症しやすく、35歳以降での発症の例もあります。

@生物学的要因
セロトニンの調節の失調が原因であると考えられており、遺伝的要因も強いと考えられています。
父か母のどちらかが強迫神経症である場合、35%に発症するとも言われています。

A行動学的要因
ある特定の行為をすることで不安が減少すると言うことを経験的に学びます。
そのため、強迫行為や儀式的行動によって不安を制御するために行います。
不安という苦痛を伴うもので、強迫行為というものが効果的だと学習するのです。

B心理社会的要因
強迫性人格を持っているかといって強迫神経症になるとは限りません。
大部分の患者さんは病前では強迫症状を持っていないことが多いようです。
子供の発達段階において肛門期の重要な特徴として、両価性と言うものがあります。
同一の対象に対して、愛情と殺したくなるような憎しみの両方を同時に感じることを言います。
これと同じようなことが強迫神経症の患者さんにも見られます。
この相反する感情の葛藤によって、実行打ち消し行動や優柔不断などとなってきます。

【経過と治療】
治りにくいようで、30%は非常によくなり50%はある程度改善し社会生活に困らないレベルに、
残りの20%は日常生活に支障をきたすようなことが多いようです。
一般的な治療としては、薬物療法と行動療法的治療が行われます。



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