解離性同一性障害の詳しい話

■同一性

解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder。以下DID)とは
2つ以上の他とはっきり区別できる同一性あるいは、人格状態が存在していて、
それらが繰り返しその人の行動を制御し、普通の物忘れでは説明が付かないような
重要なことを思い起こすことができなくなっている状態。
絶えることのできない心的外傷によって発症します。
というのは先の解離性同一性障害についてのページで書きました。
もう少し詳しい話をしたいと思います。
まず「解離性同一性障害」という長い名前。
これを漢字の熟語の羅列ではなく日本語としてわかりやすく書くならば、
「『解離』によって引き起こされる『同一性』の『障害』」となりますね。
【同一性とは…】
知覚・思考・行動など「意識的なもの」は、「自我」と呼ばれます。
「自我」はその人の歴史の中で持続し、一貫し、記憶はほぼ連続しています。
この場合、自我は、ある時間的・空間的・社会的な内容を伴った存在として
自分を認識することができます。
これが自我同一性(私が私である)です。
難しいですね。
逆に同一性が障害を起している例と比べるとわかるかもしれません。
【同一性の障害】
健忘・離人症・現実喪失感では自分の記憶が一貫していなく、
自分の身体が自分の身体であると感じられず、
自分が世界になじんでいないと感じています。
他の解離性障害も「自分が自分である感覚=同一性の障害」は認められます。
しかし、DIDにおける同一性の障害はそれ以上のものです。
同一性の障害は2つに分けられます。
@主観的な面(同一性混乱)
A行動的(客観的)な面(同一性変容)
という分け方になります。
@同一性混乱
転職や引っ越しなどしたときに感じられる事があるような、
「自分がどこにいるのか、何をしているのか、何なのかわからない」
といった感覚です。
「自分の同一性や自己意識に対する不確実・不信・困惑・葛藤」
などを自覚することとも言えるでしょう。
また、精神の内側で複数の考えが衝突し、
葛藤が繰り広げられるという同一性混乱もあります。
交代人格同士が、患者の内部で闘争するため
患者は一体自分の考えが何なのかわからなくなるといったものです。
例えばこの同一性の混乱が性に関して生じてくると、
自分が男なのか女なのかわからなくなる(=性同一性障害)
と言ったことにもなります。
多重人格で、異性の人格が出現してくるのは、このためで、
内部での異性人格との葛藤の結果として性同一性混乱が生じるのです。
A同一性変容
「他人から、その人の行動パターンの変化によって気付かれることが多いような
患者の社会的役割の変化」
となっています。簡単にいえば、他から指摘されるような行動上の変化です。
例では、別の名を用いる・できるはずのない楽器の演奏や外国語会話などができる・
自分に対して三人称を使うなどです。
このような行動の変化は、多重人格では交代人格による行動である場合もありますが、
すべてがそうであるわけではありません。

■症状と疑うポイント

【症状】
解離症状では健忘があげられます(98%)
健忘といっても実際上はその程度も(交代人格や本人同士の)
意識の共有の程度も、交代人格同士の認知の程度も様々です。
「人格Aは人格Bを知っているが、人格Bは人格Aを知らない」とか
「存在を知っているがどういう状態にあるのかわからない」など
様々なパターンがあります。
その他の解離症状としては、遁走、離人感、夢遊があります。
感情症状としては、抑うつ、気分変動、自殺企図が多いようです。
これらの症状は多重人格に限らず、児童虐待の犠牲者にはよく見られる症状です。
多くの場合、低い自己評価、自己嫌悪、自己処罰の傾向を示すようになります。
虐待のフラッシュバックとして、抑うつや不安、恐怖症状が見られるようになります。
身体症状で一番多いのは頭痛です。
これは、交代人格の間での身体支配権争いの時に見られたり、
人格が入れ替わるときなどに見られます。
【診断と疑うポイント】
多くの場合DIDと診断されるまでに平均6.8年ほどかかっています。
それまでに躁うつ病、境界性人格障害、不安障害、精神分裂病などとして
治療されていることが多いです。
誤診されているケースが多く、違った診断名で治療を受けていますが、
改善していきません。
解離性同一障害と診断するためには、交代人格と出会うことが不可欠です。
しかし、患者は多くの場合、交代人格の存在を隠そうとします。
解離性同一障害を疑うポイントとしては、
・性的虐待、身体的虐待を受けていたことがある
・女性
・20〜40歳
・記憶の欠落、健忘
・頭の中に声がする
・境界性人格障害の診断基準を満たす
・過去に色々な治療を受けたが失敗している
・自己破壊的行為
・思考障害はない
があります。
この中でも、健忘、幻聴、自己破壊行為、境界性人格障害には特に注目します。

■原因

【児童虐待との関連】
DID患者のほとんどが、小児期に重大な心的外傷(特に被虐待体験)を持っています。
90%に性的、身体的虐待の既往があるともされています。
性的虐待には、性行為だけではなく、口唇的、性器的、肛門直接接触や
浣腸、膣洗浄などがあります。
虐待者は親、同胞、近親者、他人など様々です。
身体的虐待には、殴る、蹴るなどの暴力の他に、
やけどを負わせる(タバコを押しつける)、刃物で切るなどもあります。
子供の自由を奪う監禁やロープによる束縛、生き埋めなどは、
子供に解離を起こしやすくします。
他にも、侮辱、威嚇を受けたり、兄弟の虐待を目撃する、大切なものやペットを壊される、
社会的に孤立させられる(いじめなど)でも起こりえます。
これらの耐え難い外傷体験によって、普通のままでいたのではとても耐えられず、
強い恐怖感のため、自分の心を防衛しようとして、別の人格が生まれると考えられています。
既に自分の中に複数の人格を持っていることを自覚しることもあります。
しかし、解離症状が幼少期から存在する場合「これが当たり前だ」と思ってしまっているため、
その状態が、周りの人にはなく自分だけなんだと気付くのが送れます。
また、気付くことによって症状が悪化してくることも多いようです。

…この先「治療」の事も書きたいのですが、まだ勉強不足です。すみません。。。