PTSDの症状

PTSDの症状は「侵入性反応」と「感情鈍麻性反応」の二つの症状にまとめられています。
■侵入性反応…「何かやっていなくてはいられない」という過剰にたかぶった状態で、トラウマとなった事件の後は興奮が続いてよく眠れません。アルコール乱用や薬物乱用など様々な嗜癖にはまってしまう人もいます。この状態の時「怒りの爆発」も見られます。また、驚愕反応やパニックがあります。戦争から帰還した人がヘリコプターの音を聞いただけでその場から逃げ出そうとしたり、エレベーターの中でレイプされた経験を持つ女性が、エレベーターの前で立ちすくんだりなどという形で現れます。
また、とても嫌な・思い出したくない記憶が、何も関係のない場面(例えば静かに読書している時など)に、フッと意識の中に侵入してくるような「侵入性回想」が起こることもあります。夢に出てくると、悪夢になります。そうした回想が、事件当時に感じた恐怖や冷や汗などの生理反応と一緒になって、そのままよみがえってきて体験されることを「フラッシュ・バック」と言います。フラッシュ・バックに入ると、冷や汗・寒気・鳥肌などの生理反応が逆に当時の記憶をまざまざと再現させ、生々しくその状況に引き込まれていきます。こんなことが何度も何度も繰り返されたら、まともに生きていけなくなります。
もっと困るのは、「トラウマの再演」や「再演技化」と呼ばれるものです。演じるというと、故意にやっているようですが、これは無意識に演じてしまうものです。例えば、性的虐待を受けた人が、もう一度性被害に遭うような状況に持って行ってしまう、などです。 性的虐待を受けた人が売春に走る場合が多いというのも、このことで説明されます。また、戦争から帰還した人が、帰国後に殺人を繰り返したり、他国の軍隊に雇われて戦争に参加し続けたりするという場合もあります。自分ではコントロールできなかった状況での心の傷を、自分を同じ状況に置くことによって再現し、それによってその状況を自分の意思と力で今度こそ支配しようとする試みと解釈されています。
■感情鈍麻性反応…もうひとつの症状は感情鈍麻性反応ですが、むしろこちらの方が重大と言えるかも知れません。例えば、被害にあった人が、それから五年後にも無気力で憂鬱であったとします。しかし、不安やパニック・悪夢などは最初の半年で治まってしまっていたとすると、影響はその半年のうちに収まっていて、後に残った無気力や憂鬱はその人のもともとの病気であったと解釈されてしまいがちです。しかし、侵入性反応がなくなり、表面上は平穏で落ち着いているように見えたとしても、事件以来、深刻な人格変化が生じているという場合があるのです。震えたり、汗をかいたり、フラッシュバックが起こったりという派手な症状は消えても、友人との関係をうっとうしく感じたり、配偶者や恋人との関係も以前ほど親密でなくなったり人間関係において、深いところでの情緒的な関係を避けてしまって、ひとりになりがちになるということがよく見られます。
人生なんて面白い事やいい事なんてない、こんな思いをしてまで生きなければならないのかと思い、自分の要求や感情を人に言えなくなったり、心身症のように常に身体が不調だったり、身体的にも感覚が鈍ったり麻痺したりすることがあります。

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