人格障害

「人格」とは、普段使う性格と同じような意味で「気質」と「性格」が含まれています。
「気質」は遺伝的な要素が強く「性格」は周りの環境や社会・文化などに強い影響を受けるものです。
人格障害とは、その人「人格」が常道からはずれてしまって、社会生活に障害を来すものを言います。
青年期や成人期早期に始まることが多く、長期にわたってその人格が安定しいて、苦痛を伴います。
この中でその障害が他の精神障害に原因がないものを一般的に人格障害といいます。
DSM(アメリカの精神医学の診断基準)では、
「最近(過去1年)、またはもっと長期にわたって持続する機能状態に特徴的な行動傾向や人格傾向のことで
これらの組み合わせのタイプは重大な社会的、職業的、主観的な苦痛をもたらすもの」
となっています。 機能障害とは、
「認知、感情、対人関係、衝動のコントロールの領域の2つ以上の領域に及ぶこと」
などとなっています。
人格障害に関しては色々な考え方があります。
人格異常を精神病と正常との中間なものと考えるか、それともまったく別なものと考えるかです。
現在は、その両者の考え方をそれぞれ採用しているような感じです。
人格障害には、それぞれに診断基準というものが存在しますが、各類型ごとの診断基準に加えて
「全般的診断基準」というものを満たさないと、人格障害があるとは言えません。
つまり、まずは「この人は人格障害があるだろう」(=全般的診断を満たす)と思われ、
次に「どのタイプの人格障害だろうか」(=類型ごとの診断基準)を見ていくのです。
全般的診断基準は以下の6項目からなります。
@次のうち二つ以上が障害されている。
・認知(自分や他人、出来事を理解し、考えたりすること)
・感情(感情の反応の広さ、強さ、不安定さ、適切さ)
・対人関係
・衝動のコントロール
Aその人格には柔軟性がなく、広範囲に見られる。
Bその人格によって自分が悩むか社会を悩ませている。
C小児期、青年期から長期間続いている。
D精神疾患(統合失調症、感情障害など)の症状でもない。
E薬物や一般的身体疾患(脳器質性障害)によるものではない。

■人格障害の種類

人格障害は3つのグループ10種類に分けられ、クラスターA・B・Cという風にグループ分けされます。
A.遺伝的に統合失調症気質を持っていることが多く、自閉的で妄想を持ちやすく、
奇妙で風変わりな傾向があり、対人関係がうまくいかないことがあります。
ストレスが重大に関係することは少ないですが、対人関係のストレスには影響を受けます。
(「妄想性人格障害」「分裂病質人格障害」「分裂病型人格障害」)
B.感情的な混乱の激しい人格障害です。演劇的で、情緒的で、うつり気に見えることが多いです。
ストレスにかなり弱い傾向があります。
(「反社会性人格障害」「境界性人格障害」「演技性人格障害」「自己愛性人格障害」)
C.不安や恐怖感が非常に強い人格障害です。
まわりに対する評価や視線などが非常にストレスになる傾向があります。
(「回避性人格障害」「依存性人格障害」「強迫性人格障害」)

【妄想性人格障害】

妄想性人格障害の基本的な特徴は「猜疑心」と「敏感性」です。
これに伴うものとして「不信」「論争好き」「頑固」「自負心」があげられます。
つまり、猜疑心が強く、嫉妬深いタイプがこの人格障害の特徴です。
更に、すぐに人をねたんだり、疑ったりするので社会になかなか溶け込めません。
ちょっとしたことで怒りを爆発させることもあります。
診断基準は、
・根拠がないのに、他人が自分を利用したり、危害を加えたり、騙しているなどと疑いを持つ。
・友達の誠実さ、親切を不当に疑い、そのことに心を奪われてしまう。
・何か情報を漏らすと自分に不利に利用されると恐れ、他人に秘密を打ち上げることができない。
・悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなしたり、脅かすようなことがあると深読みする。
・侮辱されたり、傷つけられたり、軽蔑されたことを恨み続ける。
・自分の性格や評判に対し過敏に反応し、
勝手に人から不当に攻撃されていると感じたり、怒ったり、逆襲したりする。
・根拠がないのに恋人や配偶者が「浮気しているのではないか」と詮索する。

【分裂病質人格障害】

自閉的で孤独で、はたからみると感情があるのかないのかちょっとわからないタイプです。
異性を含めた「人」に興味がなく、そのため社会から孤立し、対人接触を好みません。
感情を表に出したりするようなことはなく、何事に対しても興味関心がないように見えます。
これらの症状が統合失調症(旧分裂病)の一部の症状と似ていることから、この名前になりました。
診断基準は、
・自分が家族の一員であったり、誰かと親密な関係になりたいと思わないし、楽しく感じない。
・ほとんどいつも孤立した行動を選ぶ。
・他人と性体験を持つことに興味があったとしても、少ししかない。
・喜びを感じられるような活動があったとしても、少ししかない。
・親兄弟以外に親しい友人、信頼できる友人がいない。
・他人が褒めることや、批判に無関心である。
・情緒的な冷たさ、よそよそしさがあり、感情の起伏がない。

【分裂病型人格障害】

上の分裂病質人格障害と混同してしまいそうですが…
分裂病とまでは言えないが、明らかに正常とは違う人たちにどの様な診断を下すか、
このことについて、精神医学の世界では様々な名前を付けてよんできました。
分裂病型人格障害は、分裂病と遺伝的な関係があるとされています。
境界性人格障害より分裂病に近い親戚みたいな障害です。
ストレスが原因で25%程度が分裂病に移行すると言われています。
他の、分裂病質人格障害、回避性人格障害、境界性人格障害などとの鑑別が必要になってきます。
診断基準は、
・関経念慮
・迷信深かったり、テレパシー、第六感を信じている。
・実際には存在しないはずの力や人物の存在を信じる。
・考えや会話が奇妙である(会話の内容が乏しかったり、ずれてたり、細かい事に拘ったり)
・疑い深く、妄想じみた考えを持っている。
・感情が不適切で乏しい。身振りそぶりが滅多にない。
・外観や行動が奇妙で、風変わりである。
・親しい友人がいない。家族以外に信じられる人がいない。
・社会に対して過剰な不安をいつも持っている。それは妄想的な不安でもある。

【反社会性人格障害】

犯罪者に多いとされるのがこの人格です。
人格障害の定義の中に「社会が悩む」というフレーズがありますが、まさにこの人格がそれです。
特徴は、良心の呵責を感じることなく、冷静に凶悪犯罪を行えることです。
一方、人の心理をよんで操作するのがうまく、魅力的さえあります。
犯罪的な行動を繰り返すものの、良心に乏しいのでほとんど罪悪感を感じることはありません。
不安やうつ気分におそわれることもありません。
人を愛する能力を欠いていたり、人の気持ちが分かる優しさが足りません。
しかし、人の顔色を伺いながら、戦略を立て、嘘をついたり、騙したりする能力は抜群です。
人を操作する能力はあるため、表面的には魅力的に見えたりします。
現在18歳以上で、行為障害が15歳以前に見られれば、反社会性人格障害が疑われます。
診断基準は、
・法を守ると言うことができない。逮捕の原因となるような行動を繰り返す。
・人を騙す傾向がある。自分の利益や快楽のために嘘を使うことが多い。
・行動に衝動性が強く、自分の将来の計画が立てられない。
・怒りっぽく、攻撃性である。
・向こう見ずで、自分や他人の安全を考えない。
・一貫して無責任である。仕事を続けられなかったり、借金を返済しなかったりしする。
・良心の呵責を感じない。人を傷つけても、いじめても、物を盗んでも反省しないで繰り返す。

【境界性人格障害】

ボーダーラインという言われ方もします。最近非常に増えている人格障害とも言われています。
一言でいってしまえば「神経症と分裂病との境界」です。
精神分裂病といってしまうには症状が足りず、かといって神経症でもない状態です。
具体的にどんな人格かというと、非常に衝動的で、感情の起伏が激しく、
そのため対人関係がいつも不安定な人格です。
感情をコントロールする力が弱いため、ときに暴力的だったり、自殺を図ったりします。
診断基準は、
・見捨てられる不安が強いために愛情をつなぎとめるために必死に努力をする。
・他人への評価が理想化したり、こき下ろしたりといった両極端で不安定なものである。
・同一性が混乱していて、自己像がはっきりしない。
・衝動的喧嘩・過食・リストカット・衝動買い・アルコール・薬物・衝動的な性行為などが見られる。
・自殺行為、自傷行為などをやろうとしたり、脅したりする。
・感情が不安定。
・いつも虚無感を覚える。
・場に合わない激しい怒りをもち、コントロールできない。そのため、暴力に走ったりする。
・ストレスがあると妄想的な考えや解離症状が出ることがある。

【演技性人格障害】

演技性人格障害は常に周りの人の関心を集め、自分が中心でいないときがすまない人です。
一見魅力的なのですが、底は浅く、自分の思い通りにいかないと感情を爆発させることがあります。
最近まで「ヒステリー性格」とよばれていたのが、この演技性人格障害です。
ヒステリー性格とは自分を実際よりもよく見せたいという願望の強い性格のことを言います。
自己中心的で、虚栄心が強く、わがままで、子供っぽい性格が多いようです。
ヒステリーとは「特別な心理的な原因によって起きる身体の変化」です。
その変化は色々な種類があって、「手足が麻痺したり、感覚がなくなったり、
夢遊状態になったり、意識混濁、記憶喪失などが出現するもの」となっています。
一方、ヒステリー性格(演技性人格障害)は「感情の昂揚しやすいこと、暗示性にとむこと、
大げさな芝居かかった行動に出ること、性的なことにむやみに関心を示すこと」となっています。
つまり、ヒステリーでは症状が身体に出ることで防御機制に出るのに対して、
演技性人格障害では、抑圧が十分な防御機制にならず、行動として出ることです。
この障害は本人に「治そう」という気がない限り難しい病気です。
多くの患者さんはアルコール依存症であったりうつ病で病院を訪れることが多いようです。
診断基準は、
・自分が注目の的になっていないと楽しくない。
・他人との関係は、不適切に性的で魅惑的・挑発的な態度をとる。
・浅はかで感情を表に出す。
・自分への関心を引くために身体的外見を利用する。
・感情表現がオーバーなのだが、内容がついてこない。
・芝居がかった態度や誇張して表現する。
・他人や環境の影響を受けやすい。
・対人関係を実際以上に親密なものとする。

【自己愛性人格障害】

ナルシストのことです。その原因は母親の過保護と父親の不在です。
そのおかげでいつも自分は特別なものだと感じています。
そのため、誰かに自分のことを非難されるのをとても耐えることができません。
自分は特別な人間だと感じ、様々な対人関係の障害が出てくるのが特徴です。
まわりの人間は自分を敬うのが当然と感じ、他人への思いやりに欠けます。
究極の自己中心的な人間、裸の王様がこの自己愛性人格障害です。
この自己愛性人格障害には、大きく二つのタイプが存在すると言われています。
@無自覚タイプ。これは日本に多いタイプで、まさに自己中心の塊です。
多くは、母親の過保護によって生じます。愛情を注がれ過ぎたために起きます。
「特別な子供」扱いすることで、「私は特別な人間なんだ」と思い込んでるのです。
厚顔無恥、誇大、顕示欲の強さなどがこのタイプの特徴です。
A過剰警戒タイプ。小さな頃から親の愛情を受けなかったため、褒められずに育ったために、
「自分は本当はもっとすごいんだ」と空想して、傷付いた自尊心を取り戻そうとするタイプです。
傷付きやすさや、過敏性が強く密かな自己愛を持っているのが特徴です。
このタイプはアメリカで多いとされています。
共通しているのは「自分は特別だ」と思っていることです。
「独特で」「完璧な」「才能がある」と自分を表現し「普通の人には理解できない」と感じています。
診断基準は、
・自分は特別重要な人間だと思っている。
・限りない成功、権力、才能、美しさにとらわれていて何でもできる気になっている。
・自分が特別であり、独特であり、一部の地位の高い人たちにしか理解されないものだと信じている。
・過剰な賞賛を要求する。
・特権意識を持っている。自分は当然優遇されるものだと信じている。
・自分の目的を達成するために相手を不当に利用する。
・他人の気持ちや欲求を理解しようとせず、気づこうともしない。
・他人に嫉妬をする。逆に他人が自分をねたんでいると思い込んでいる。
・尊大で傲慢な態度、行動をとる。

【回避性人格障害】

最も不安が強いのがこの「回避性人格障害」です。
他人からの拒絶、批判を恐れ、恥をかくことに非常に敏感です。
そうした危険があれば、他人と関わろうとすることをやめます。
失敗を恐れるあまり、新しいものにチャレンジすることもなく、仕事は責任の軽いものを選びます。
要するに「自分が人に受け入れられるかどうか」に対して非常に過敏になっています。
日本人の性格、文化(他者中心的で、他人の感情を損なわない、自己を主張しない控えめな文化)
に類似する傾向があるため、日本人にとっては彼らは違和感がなく存在することができてきました。
一方、自己主張の強い国アメリカではさぞ、異常にうつっていたとのことです。
自己主張をしない=能力に欠けている=社会的な評価が低いとされているために、問題となっています。
ただし、日本で最近問題となりつつある「回避性人格障害」は少しが違います。
日本の少子化、父親不在、母子結合、過保護などの結果に大きくなった子供は、当然、
自分で判断することの能力も乏しければ、非常に傷付きやすいものです。
自分を傷つけない、暖かい(ぬるい?)場所にしか行こうとしません。
その根底にあるものは「低い自尊心と低い自己評価」です。
他人には受け入れてもらいたい気持はあるが、自分には他人に何かをしてもらえるだけの価値がない
と感じているため、その欲求を他人に伝えることができません。
拒否されることに対して、極度に敏感で傷付きやすく、嫌われたりバカにされたりするのを恐れ、
対人場面や社会生活を避けるようになります。
診断基準は、
・批判、拒否、拒絶をあまりにも恐れるために、仕事上大切な人と会わなければならない状況を避ける。
・好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたいと思わない。
・恥をかかされること、バカにされることを恐れるために、親密な間柄でも遠慮がちである。
・社会的状況の中で、批判されはしないだろうか、拒絶されはしないだろうかと心を奪われる。
・自分が人とうまくつきあえないと感じるため、新しい人間関係を築けない。
・自分は社会的に不適切な人間で、長所がなく、人より劣っていると思っている。
・恥ずかしい結果になるかも…と思い、新しいことを始めたりチャレンジすることに異常に消極的。

【依存性人格障害】

「甘えの強い性格」です。甘えが強く、大切なことも自分で決められず他人の判断に任せます。
並はずれて従順で、非常に受け身的、世話をやいてくれる人がいなければ何もできません。
いつもまわりから元気づけや励ましが必要です。
孤立を避けるために、自分自身の欲求でさえも、他人の欲求に合わせます。
自分の責任を他人に押しつけるので、いざ1人になると非常に不安や抑うつにかられる人格障害です。
境界性人格障害と似ている点もありますが、依存性人格障害のメインは
「自分にかまって欲しい過剰な欲求と、それを維持するための服従的な行動」です。
比較的女性に多く、末っ子に多く見られます。
依存性人格障害が発生する過程には、親の子供への接し方があげられ、回避性人格障害と似ています。
過度に干渉的な親が存在し、「世の中は危険がいっぱい」ということを子供に刷り込んでいくのです。
子供が少しでも自立しようとすると、親は子供を非難し、忠実だとひどく溺愛します。
自立とは、親や社会から見放されるもんだよと刷り込まれていくのです。
診断基準は、
・普段のことを決めるにも、他人からの執拗なまでのアドバイスがないとダメである。
・自分の生活でほとんどの領域で他人に責任をとってもらわないといけない。
・嫌われたり避けられたりするのが怖いため、他人の意見に反対することができない。
・自分自身から何かを計画したりやったりすることができない。
・他人からの愛情をえるために嫌なことまで自分から進んでやる。
・自分自身では何もできないと思っているため、ちょっとでも1人になると不安になる。
・親密な関係が途切れたとき、自分をかまってくれる相手を必死に捜す。
・自分が世話をされず、見捨てられるのではないかと言う恐怖に異常におびえている。

【強迫性人格障害】

この人格の基本的な特徴は、
「秩序、ルール、完全主義などにとらわれすぎて、柔軟性や効率性がない」ことです。
強迫性人格障害はどちらかというとA型人間であり、うつ病との関連が示唆されています。
強迫性格の特徴は几帳面、倹約家、わがままで、人に仕事を任せられなかったりするのです。
「硬さと頑固さ」という特徴もあり、一つだけの「正しいやり方」や「物事の原則」を主張し、
他人の視点や考えに妥協することを拒みます。
もしも、そういったように自分の思ったようにいかなかったり、完全にできなかったりしたら、
抑うつ状態に陥りやすく、頑固で柔軟性に欠けているので、ひとつのことにこだわってしまいます。
診断基準は、
・何がなんだか分からないくらいに小さなこと、規則、構成、予定表などにこだわる。
・必要以上に完璧主義にこだわりすぎて、達成できないことがある。
・娯楽や友人関係を犠牲にしてまで仕事にのめり込む。
・ひとつの道徳、倫理、価値観にとらわれすぎて、融通が利かない。
・とくに思い出があるわけでもないのに使い古したモノや価値のないものを捨てることができない。
・他人が自分のやり方に従わない限り、仕事を任せることができない。
・自分にも他人にもお金に対してケチで、お金は将来の何時かに備えて蓄えておかなければならない。
・頑固である。