うつ病(躁うつ病)

■うつ病

「うつ病」は最近では誰でも聞いた事がある有名な病気になっていると思いますが、
その反面、間違った知識も多いように思えます。
「うつ病」にはいくつかののタイプがあり、
ショックなことがあって落ち込んでしまったというような心因性ものは、その1つにすぎません。
心因性の場合、精神病としての鬱病ではなく「抑うつ神経症」の場合も多いとされています。
他の「脳」や「神経伝達物質」に関連する「うつ病」にかかっている人の方が、
実際としては多いとも言われています。
遺伝の影響も少しあるようで、近親者に鬱病の人がいるとかかる率が高くなることが知られています。
病気そのものが遺伝するのではなく、落ち込みやすい性格やストレスに対する弱さが遺伝します。
鬱病は気持ちの問題だけではなく、脳の病気という側面があることを理解してほしいと思います。

■うつ病の症状

【精神症状】
精神症状は一日のうちでも波があり、たいてい朝が悪く、午後になるとよくなっていきます。
@抑うつ状態
気持ちの沈んだ状態を言います。これはその人の社会的、文化的背景に左右されることが多く、
表面上ではわからないこともあります。
しかし、程度が強くなると言葉では言わなくても、顔つきや姿勢、話し声、
ささいないことで涙を流すなどの態度や様子であらわれるようになります。
楽しいというような感情が失われている状態です。
A抑うつ思考
うつな気分になると誰でも同じようなことを考えて悩むものです。
まず「自分はつまらない、駄目だ、物事が上手くいかないのは自分のせいだ」など
自分を責めます(自責念慮)。
さらに、自分が「大きな過ちを犯した」と考え、みんなに謝らなければならないと考え込みます。
自分に全然罪のないことでもそうやって自分を追いつめてしまいます。(罪業妄想)
この他には、「ひどい貧乏で、家族が路頭に迷う」と言う貧困妄想、
どんな治療を受けてももう駄目だと思い込んでしまう心気念慮という症状もあります。
B自殺念慮
抑うつ的な気分が続くと生きていることが苦痛になったり、
早くこの世から消えてしまいたいと死を望むことが起こります(自殺念慮)。
うつ病の9割以上の患者さんに見られます。
【身体症状】
@仮面うつ病
うつ病の身体症状は日常生活でよく見られる症状であります。
寝つきが悪い、夜中に目が覚める、食欲の低下、胃腸の調子が悪いなどです。
活動エネルギーが喪失していき次第に何にも関心が行かなくなります。
このように身体症状が先立ち「抑うつ気分」などの精神症状が目立たないうつ病を
「仮面うつ病」と言います。
A睡眠障害
睡眠障害には「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」などがあります。
眠れないために余計に気が滅入っていき、日中も集中力が低下していきます。
うつ病による不眠には、長い間催眠剤を服用してもあまり改善しません。
それよりも抗うつ薬を睡眠前薬として服用する方がよいとされています。
それでも効かないときには、抗うつ薬と催眠薬を併用していきます。
B消化器症状
まずは食欲減退です。非常に頻繁に見られます。
うつ病の症状を考えるときには失恋したときのことを考えるとよくわかると言われますが、
まさにその通りです。
食欲不振に伴って体重減少、便通異常などが見られます。
胃下垂・慢性胃炎・自律神経失調症などの診断で治療を受けていることもあります。
この他には、肩こり・頭痛などの疼痛、性欲減退・生理不順などの生殖器症状もみられます。

■うつ病の種類

【単極型うつ病と双極型うつ病】
単極型うつ病は周期性うつ病ともいい、うつ状態のみが繰り返し起こるものです。
双極型うつ病は循環型うつ病ともいい、うつ病と躁病が起こり、その繰り返しが続きます。
単極型がいわゆる「うつ病」、双極型が「躁うつ病」と言うことができます。
単極型うつ病は今まで説明してきたような症状が出るものです。
治療しなければ半年から1年以上症状が続きますが、治療すれば3ヶ月ほどでよくなります。
治療は薬物療法では三環系抗うつ薬が主流ですが、新しくSSRIなどが登場してきています。
双極型うつ病は躁状態とうつ状態が繰り返されるのですが、躁状態についてはあとで説明します。
双極型うつ病は単極型のうつ病と比べて慢性化しやすく、うつ状態が多く出現、
30前後に発症・うつの時は過眠傾向になる・食欲も低下というより過食が見られる・再発を繰り返す
などの特徴があります。
単極型と同じように自殺念慮が出現し10%前後が自殺してしまいます。
治療は心理療法よりも薬物療法が主流で、うつの時はうつの、躁の時は躁のコントロールをします。
@身体因性うつ病
体の病気でうつ病と同じような症状が出るものを「身体因性うつ病」と言います。
うつ病と同時に、身体的な治療をしなければならないので、鑑別が大切です。
うつ状態を起こしやすい身体的病気は、内分泌疾患(甲状腺機能低下・亢進症、糖尿病)・
ウイルス感染症(インフルエンザ、肝炎)・中枢神経疾患(パーキンソン病、脳動脈硬化症、痴呆)
などの他、リウマチ、がん、手術後なども起こしやすいと言われます。
A出産後うつ(マタニティーブルー)
分娩後数日後から数日間続く気分の不安定な状態で、軽いうつ状態と似ています。
多くは一過性のものですが、2〜3週目に症状がはっきりしてくることがあります。
楽しみや興味が失われ、疲労感が強くなったり、不眠・食欲不振などの症状が出てきます。
この原因は育児に対する不安などや、妊娠・出産などによる急激な肉体的変動(ホルモンバランスなど)や
社会的(望まれない出産、夫婦間の人間関係など)とされていますが、よくわかっていません。
産婦20人に1人に起こるとされ、そのうちの10人の1人は重症化されるとされています。
B薬物因性うつ病
薬によって長期的に使用すると副作用としてうつ状態が起こることがあります。
C反応性うつ病
心理的負担とともにうつ病が起こることを「反応性うつ病」と言います。
突然起こった身内の不幸や大災害などがその例です。感情が抑えられ無反応状態が起こったり、
大声で泣いたり、取り乱したり、恐慌状態から徐々にうつ状態になっていきます。
普通は半年ほどで普通に戻ります。その他の特徴としては自律神経症状が強くあらわれます。
この場合、特に精神療法が大切です。
D抑うつ神経症
うつ病の症状が軽く、しかし慢性化したタイプと言えます。
自殺念慮はそれほどなく、比較的若い人に多いとされています。
いつ頃始まり、いつ頃終わったのかはっきりした経過をたどりません。
うつ病の患者さんの40%が抑うつ神経症とも言われます。
普段は気分変調障害ですが、ストレスが加わるとうつ病になります。
E仮面うつ病
身体症状が前面に出て(仮面をかぶって)、うつ病の症状が見えにくいのが特徴です。
F引越うつ病、昇進うつ病
引越などで周りの環境が急に変わったり、昇進などで周りから期待されたりすることで起こります。
要するに周辺環境の急激な変化に体と心がついていかなくなって、
早くそれに合わせようと焦ることから、うつの悪循環に陥ると言うことです。
五月病なども一種のうつ状態と言えます。現に春先にうつ病にかかる人が多いです。
これも、周りの環境の激変によるものかもしれません。

■躁病について

うつ状態とまったく反対の症状が現れるのが躁状態です。
躁状態の時に見られる症状は…
【爽快気分】
生命力が身体全体にみなぎり、健康感に満ち、全てを楽観的に考え、活動性が増した状態です。
いくら働いても疲れず、睡眠時間も少しで十分だと感じたりもします。
【観念奔逸】
物事を考える過程が異常に亢進した状態です。
考えが次々と泉のごとく湧きだし、とどまるところを知らず、
そのため、話題は豊富となるが話の筋が脱線しやすくなります。
ダジャレや語呂合わせが多くなり、早口にもなります。
【行為心迫】
次々に考えが思いつくので、次々に行動に移します。
軽症の時はドンドン仕事をこなしているように見えますが、
重症になると途中で仕事をほおり投げて次のことに移ります。
【多弁・多幸】
よくしゃべり、なんだか機嫌がいつもいいように見えます。
【易怒性・易攻撃性】
ちょっとしたこと(特に自分がこれからしようとすることをとがめられたときなど)に
すぐに腹を立て、罵詈雑言を浴びせたり、暴力を振るったりします。
【誇大的な思考】
自分の能力を過大評価したり、さらに血統妄想(自分の先祖は高貴で・・・)や
発明妄想(大したもの作ってもないのに大発明だと騒ぐ)が重症になると出てきます。
一見すると躁状態っていいように感じますが、重症例になると問題です。
これがなぜ問題になってくるかというと、自信に満ちあふれているため、尊大で高慢となりやすく、
なんにでも手を出そうとして乱売浪費をします。重症の躁病では自己崩壊的に不健全なのです。
同時に、社会的信用も失います。
純粋に躁病だけが続くと言うことはありません。必ずうつ病とセットとなって現れます。
慢性的な経過をたどることが多く、再発を繰り返すことが多いです。