それから、一週間くらいたった日の事であった。
いつものように、中庭でランチを食べているまいの横に真知子は座りながら言った。
「ねえ。今夜あいている?」
「ごめん。今夜はバイトなの。どこかに遊びにいくの?」
「うん。合コンやろうと思うんだけど、人数集まらなくて。ねえバイトどうにかならない?」
「悪いけどどうにもならないの。ごめんね。」
まいは、立つとツカツカ教室に入っていった。
夜・・・まいは、バイト先のパブでピアノを弾いている。
「いらっしゃいませ。鎌田様。ようこそ。」
店のマネージャーの声がする。
「ここ、最近のお気に入りなんだ。なかなか落ち着いた良い店だろ?」と客の声がする。
今日は、6人連れらしい。
まいは、ロマンチックなワルツを奏でた。
「ピアノの子変わったんだね。」
「はい。前の子は先日辞めたので。丁度良い子がいたのでスカウトしたのですよ。」
その時、連れの女の人の声がした。
「まい・・?」
見ると真知子だった。
まいは、無視してピアノを弾き続ける。
「なかなか上手じゃないか。」
「そうでしょうとも。何回もピアノのコンクールで入賞している子なんですよ。」
真知子の目はまいに釘つけだまいの指が鍵盤を踊る。
繊細な動きだ。
「リクエストできるんですか?」
真知子が言った。
「はい。どうぞ。」
「タイタニックのテーマをおねがいしたいのですが。」
「かしこまりました。」
マネージャーが言う。
まいは、マネージャーからそれを聞くと楽譜も見ずに奏でる。
せつない旋律が店の中を流れる。
マルガリータ、モスコミュール、サイドカー・・・カクテルを空けても、まいはずっと奏で続ける。
夜は更けていった。 |