第16話だっぴょ〜んの巻。
そして、辻加護が仲直りできないまま
金曜日を向かえた。

辻姉のバイト先である、カラオケ『秀樹』で
もりあがるミニモレンジャースタッフ(辻抜き)。
適度に酒も入ってノリノリである。
加護や他のメンバーも初めは辻がいないことを
気にしていたが、矢口が『勉強だってさ。』
と言ったことに加え、酒も手伝って頭からその存在が抜けていた。
無論、矢口が辻にこの件で電話をかけたことなどないわけで。

「はいはい、梨華ちゃん、またランク外〜〜。」

カラオケのブラウン管にしめされる、大きな数字。
なにやら怪しいおっさんアニメが『42点』の文字に向かって泣いていた。

「え〜〜…またぁ〜〜?えへへぇ〜〜♪」

矢口はそういうと、缶ビール1本、石川の前に突き出す。

「ハイ!イッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキ。」

イッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキイッキ

オオオオオオ〜〜〜〜!!!!

「ぷはぁっ♪キャ八♪オイシッ♪」

もうこんなイッキを4回飲まされている。
普通に飲んでいる分もいれれば
相当体内にアルコールが回っているようだ。

「よーし!!第5ラウンドだぁ〜〜!!いくぞー!!」

結局、次のラウンドも石川がイッキをしたわけで。
宴もたけなわな、午後10時半。
午後6時過ぎから入って4時間半。
飲み放題サービスで店も上がったりというほど飲んでいた。

「うっし、これから辻の家に陣中見舞いいくぞっ!!」

オ〜〜〜〜!!!

どうやらこれが狙いのようである。
そして矢口は次の行動に。
インターホンをとって、缶ビール20個と言い出すではないか。
それは、これから店出るというのだから、
もちろん『オモチカエリ』のことである。
まぁ、インターホンの受け手が辻姉であるから、
融通を効かしてくれるのだろう。

少し待つと、ご丁寧に辻姉がビニール袋に
缶ビールを30個以上、ダンボール詰でもってくるではないか。

「あー、ごめんねー文子さ〜ん。アリガトー。」

辻姉は内緒だからね、と口元に指を立てて言った。

「あ、文子さ〜ん。鍵貸してくれる〜?家の。
これからののんところ陣中見舞いしようと思って。」

陣中見舞いにカギが要る物なのだろうか?
すこし不思議に思っていた辻姉であるが、快くカギを渡してくれた。

「サンキュー、文子さ〜ん。」

こうして酔いどれどもは一路、
よっぱらい運転で辻宅へ向かった。


辻宅にて。

辻の両親は趣味を持っていた。
それは、社交ダンスで金曜の夜は、夜遅くまでいない。
社交ダンス自体は23時に終るのだが、ダンス友達と飲んだり
実質帰りは、深夜の2〜3時になってしまう。
辻にとって、両親も姉もいない静かなこの夜は、
事実上のテスト対策の山場であるわけで、黙々と勉強していた。

「えっと…等電位線はこうれすから…ここは12Vれすね。」

無論そんな山場に酔っ払いが訪れてくるとは考えもしないわけで。
来た所で、普通なら門前払いをするだろうが…。

「ふぅ、物理はここまででいいれすかね…。」

テキストを閉じて首を鳴らす。
ここ数時間、固定位置であったから、コリは相当である。
ふと閉じていた、写真立てを上げて、眺める。
そこにはトイズ屋上で笑顔満面のミニモスタッフ達の姿。

「あいしゃん…どうしているれすかね。」

「ここにおるでぇぇぇぇぇっ!!!」

ビクッ!!

なにやら声が聞こえた。
幻聴なんかではなく、これは生声である。
後ろを振り向くと…ドアがひとりでに…いや、

「陣中見舞いワショーイ!!」

ミニモスタッフ達が現れた。

あっけに取られる辻。
なにやら顔真っ赤な連中が酒の臭いプンプンさせながら
勝手に人の部屋、いや、人に家に入り込んで
勝手に座って酒を配り、宴の続きをし始めている。

「ほらっ♪ののちゃんも呑もッ♪おいしーよ♪あはっ♪」

「い、いや、ちょ、ちょっと待ってくらさいよ!!何で居るんれすか!!」

もっともなリアクションである。

「文子さんにカギ借りたんだYO〜。」

「か、借りたんらよって…。」

「ともかく!!陣中見舞いしに来てやったのヨッ!!
アンタも呑みなさいよっ!!」

保田は缶ビールを突き出す。
なぜか受け取る辻希美。

「つまみねーYO。」

「あ、ウチもってくるわ〜。」

加護がふらっと立ち上がると部屋を出た。
どうやら台所に向かったようだ。

「んぁ〜…。ゴトートイレ…キモチワルイ…。」

こちらもフラフラ部屋を出て行く。

「キャハハハハ、ゴッチン酔っ払いじゃん!!」

いや、矢口さん、あなたも十分酔っ払いです。
あなたは一番タチの悪い酔っ払いかと。

「ちょ、まってくらさいよ!!どういうことれすかっ!!」

まったく事態が飲み込めてない様子。

「いいのっ♪ののちゃんも呑みなさい♪」

理性派の後藤は居ないし、石川はタガが外れている。
石川は辻の持っていたビール缶のふたを開け、
そのまま辻の口元に押し付けた。

「いいれすよ!!ののは勉強があるんれすよ!!」

「ハイハイ♪ブレイクタイムでしょー、ブレイクタイムー♪」

「……ま、ブレイクタイム…れすかね…。…でもっ…んぐっ!!!!」

そう口をあけた瞬間に口の中に流し込まれたとさ。

「どう?おいしいでしょ♪すこし酒が入った方が頭に良いのよっ♪」

という見解が、一応元お嬢様の石川さんの弁。

「じゃあ、一缶つきあうれすよ。早めに帰ってくらさいね。」

そう言って、「ちょっとの付き合い」と思い酒をあおった。

加護が戻ってくるなり一言

「師匠が廊下で吐いとるよ!」

「え゛っ!!ちょ、ちょっと待ってくさらいよ!!!」

大慌ての辻は急いで部屋を出ると
廊下でリバースもんじゃを作っていた。

「まきしゃんっ、だいじょうぶれすかっ!!」

部屋から聞こえる笑い声。

「う〜〜…ごめんねー…汚しちゃった。」

すると今度は部屋から…

「ビール溢すなよー、ヨッスィー。」

「漏れじゃねーYO!梨華ちゃんだYO!」


こんなドタバタ劇に付き合わされるわけで。
しまいには、時間は2時を示すようになるわけで。

「うい〜〜っ、冗談じゃねーれすよぉー!!
あいしゃんが消しゴムのカス投げてきやがったんれすよー!!」

辻の足元には500ml缶が4つ空で置かれ、なおかつ手に1本持っている。

「あれはウチちゃうで〜、しらへんしらへん。」

「シラを切るのはよくねーっつーんれすよー!!!」

「シラを切るのはののやろぉ〜、ってか若シラガなんとかしいやぁ〜!!」

「アア゛!?いったれすね〜っく、このパゲ!!」

「なんやてゴルァ!!」

「やるんれすかっ!ウイック、上等れすよ!!」

「残り少ない髪の毛を毛根から根こそぎブチ抜いてやるれすよ!!」

「なんやとゴルァ!!そしたら麻酔なしでその見苦しい親知らずぶっこ抜いたらぁ!!」

「「ムキーーッ!!!!」」

ここで酔っ払いの喧嘩が始まったわけで、
止める人もいるわけも無く、ギャラリーが見ている中
殴ったり、噛み付いたり大騒ぎだったわけで。


「はぁ、はぁ…今日はこのくらいにしてやるれす。」

「それは、はぁっ、はぁっ、こっちのセリ…う…。」

言い切る前に何かキたようです。
慌てて加護は部屋を出るとトイレでレッツリバース。
その様子で大笑いのミニモスタッフだったが…。

「アハハハ、ザマーミロれすよ!!のみずぎは…ハッ…うぐぅ…。」

そう言っていた辻が今度は慌てて部屋を出た。
これに大笑いの面々。
加護が吐いていると、その隣に座って
同じ便器にレッツリバースですた。


結局、親が帰ってきても帰らず、
朝方、ミニモレンジャー達は帰っていった。

「うう…。もう、5時れすよ…3時間しかないじゃないれすか…。」

とても勉強するコンディションではない辻は、そのままベッドに倒れこんだ。


8時55分。

辻は絶不調の中、自転車をこいでいた。
とても急ぐ状態ではないので可能な限り速く漕いだ。

「テ、レスト…遅れ…いててて…。」

殴られた跡は痛いし、酒くさいし、胃はもたれるし
頭痛はするし、寝癖ついてるし。
最悪なコンディションで教室にたどり着いたのは
9時5分。
テストは15分過ぎていた。

「すいませんれす…、遅れてしまったれす。」

ひとまず教員に頭を下げて席を着こうとすると
加護が居ないのに気がついた。
気にしているわけにもいかないので、
すぐにテストを受け取り取り組んでみるが…

(うう…つらいれす…。頭がまともに働かないれす…。)

グダグダだった。

9時半を過ぎた頃。
教室が開く音がした。
ようやく加護が現れたようである。

『加護さん、いくら模擬だからって遅刻しすぎですよ。』

そう教員に注意され

「すんまへん。」

頭を下げて席についた。
そしてまもなくして、一科目目か終了の鐘が鳴り響いた。


辻がわずかな休憩時間でも覚えようと
次の時間のテキストを開いていると、
目の前にユンケルが置かれた。
見上げると、額に噛み跡をつくった加護が
にかっとスキッ歯を見せて自分の席に戻っていく。
ユンケルを手にとると

『昨日ゴメンナァ。』

そう書かれていた。

嬉しくなった辻は、微笑みながら
ユンケルを飲み干した。


そして月曜日


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|              第6回大学入試模試結果                   |
|                                                 |
|      1位  松浦亜弥    580点   平均 96.6                 |
|            ・                                    |
|            ・                                    |
|            ・                                    |
|            ・                                    |
|     45位  辻希美      492点   平均 82.0                 |
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|            ・                                    |
|            ・                                    |
|    176位  加護亜依     58点   平均 9.7                  |
|            ・                                    |
|                                  以上183人(欠席含め) |
|                                                 |
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ナ、ナハッ…。」

月曜日。

呆然と立ち尽くす辻希美の姿が掲示板前にあった。

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