◆メール会報H 2002年10月22日


 皆さん、こんにちは。お元気ですか?札幌学院大学大学院を卒業し、聴覚障害学生支援ボ
ランティアをしております、藤懸久明(ふじかけ・ひさあき)です。札幌では雪虫が飛び交ってい
ますが、皆さんのお住まいはいかがでしょうか?今年の札幌は、猛暑のニュースでにぎわう本
州とは正反対に、大変な冷夏で全く暑い日がありませんでした。暑さを感じる事のないまま、長
い冬を迎える事となりました。

 本当に久し振りの「メール会報H」となりました。私がメール会報を書かない間、何をしてい
たか、気になるところでしょう。本当に、色々なことがあったのです。私は札幌学院大学のノート
テイカー・ボランティアを去ることになりました。ここで詳しい理由は語らないことにしますが、残
念ながら本来の理想どおりにはならなかった現実があります。

 それでも私は、大学の外で、個人的な人間関係を通して、聴覚障害学生の支援活動をして
います。そして、今まで通り札幌学院大学の聴覚障害者である高橋渉先生の関係の勉強会
のご連絡をしていますし、交流会の企画運営もしています。
 ただ活動の拠点が大学外になっただけで、本当に今まで通りの活動を行なっております
ので、今後とも宜しくお願い致します。

 私が大学4年の時から担当をして、皆さんのご協力も得た上で講義保障に取り組んでいた、
聴覚障害学生の筒井亮輔君の卒業が決まりました!!皆さん、本当にありがとうございまし
た!!

 思えば、いろんな事がありました!!法学部長の紹介で、筒井君と初めて出会ったとき、
「私なんかに筒井君を担当できるのだろうか?筒井君が喜ぶ結果になるのだろうか?」
と真剣に悩み、「あぁ、お釈迦様、私に力を与えてください」と真剣に思ったものでした。

 筒井君が手話を知らなかったために、コミュニケーションに困ったこともありました。そして、
「あの子の笑顔を見た事がない」と周囲から言われるほど、全く笑顔や表情のない子でし
た。それが、ノートテイカーと一緒に講義に参加し、仲間と助け合う事で、そして仲間達と一緒
に手話を覚えて生まれて初めてコミュニケーションを身に付けたことで、笑顔を見せるようにな
り、その笑顔が仲間達全員に広がったのです。


 「その笑顔をみんなに広めたい」ということで、ノートテイカー組織作りを札幌圏の全ての聴
覚障害学生がいる大学に呼びかけたりもしました。そうした上での活動であり、そんな仲間達
に囲まれての卒業決定でした。
 ただ、私にはひとつだけ心残りなことがあります。「公務員試験を受けたい」と私に相談に
来た筒井君に対し、様々な『政治力』が働いたために、公務員講座にノートテイカーを付けら
れなかったことです。これだけは、今思い出しても残念でなりませんし、彼にはつらい思いをさ
せてしまったと感じています。
 今度、卒業が決まった筒井君から、皆さんに宛てたメッセージをこのHPにて掲載しますの
で、楽しみにしていてくださいね。


 勉強会のほうも、コツコツと行なっております。もうだいぶ前になりますが、5月18日には
幌市立幌北小学校の難聴学級にて、酪農学園大学の聴覚障害学生であるももたろう君
黒部陽平君の講演会がありました。小学校で行なわれた、難聴学級に通う小学生とその親の
会の皆さんの前での講演だったので、分かりやすく楽しいものに終始していましたね。そして、
ノートテイカーと一緒に講義に参加できる喜びと、感謝の気持ちをしっかりと述べてください
ました。やはり彼等も、彼らの仲間達との出会いの素晴らしさを真剣に語ってくださいました。

 彼らは学校にノートテイカーを募集していただいたり、コーディネイトをしていただくだけではな
く、自分達でも学生を集め、手話を指導し、そういった中から皆さんに理解を求める運動
をしています。学校にとらわれない、その学生の自主的で主体的な活動、そしてノートテイカー
制度のなかった大学において自らの手で権利を獲得していった様子を堂々と述べてくれたの
は、本当に感動的でしたね。










 この講演には、この写真のように、OHP通訳者の方も来てくださいました。こうやって通訳を
するのですねー。OHPの明かりで目を傷めないよう、皆さんはサングラスをしています。



 ただ、講演を見ていて残念に感じたこともありました。手話通訳者が、あまりにも聴覚障害者
に理解がなかったことです。通常は、全ての参加者に見えやすい場所に立って手話通訳をす
るものですが、その通訳者は座ったっきり参加者には背を向け、福島君と黒部君しか見
えないような場所で通訳をしていたのです。聴覚障害学生の親からは、「なんできちんとし
た場所で通訳をしないのですか?」と怒鳴り声が飛んだほどでした。


 そして、参加者の中にも残念な発言をする人がいましたね…。黒部君の「ノートテイカーが
いない頃は、大学を辞めた聴覚障害学生もいたそうだが、今の自分達は恵まれている」
との発言に、「その時の聴覚障害学生は、なぜ辞めたのか?ノートテイカーがいなかった
ら、大学を辞めるのか?」という質問をした人がいたのです。
 小・中・高校の聴覚障害児には、ノートテイカーなどいません。大学と違い、みんな一緒に講
義に参加しているので、ノートテイカーなど付けられる訳がないのです。
 その発言があったとき、小学生に誤解が起きるのを恐れた難聴学級の石川先生は、小学生
を全員、教室から出してしまいました。気の毒だったな…。

 聴覚障害学生だから、大学を辞めるということは全くありません。健聴者と同じ様に、進
路の変更、健康上の理由、不景気による金銭的な理由など、例え聴覚障害学生が大学を辞
めたとしても、理由は様々です。個別な事情を聞かずに、「ノートテイカーがいなければ、大学
を辞める」という枠ではくくれないはずです。それにもかかわらず、「ノートテイカーがいなけれ
ば、大学を辞めるのか?」という発言をしてしまっては、様々な将来の夢を持って生活している
聴覚障害の小学生達を傷付け、聴覚障害の小学生達に大きな誤解を持たせます。さら
には、まだまだ一般的ではないノートテイカーがいなくても大丈夫なように聴覚障害児を日々指
導している石川先生はじめ、難聴学級の先生方にも大変失礼な発言であります。自分の発言
で傷付く人がいることをどうして考えないのかな…?
 その事に関して、学生時代にはノートテイカーがほとんどいなかった聴覚障害者の方からメ
ールが届きました。



 「ろう者=大学をやめる」ということはないですね。
 進路変更・事情により辞めざるをえない人もいますしね。
 会社でもそうです。「ろう者は何かあればすぐに会社を辞める」「わがまま」といった考
えを持っているところが多いようです。
 ろう者が、社会人としてのルールやマナー・常識が足りない所もありますが、会社の無
理解もあります。
 待遇の悪さ(例えば、大学出なのに高校・短大卒並みの給与だったり、正社員ではなく
委託社員・契約社員・アルバイト待遇だったり、仕事内容が事務補助とか比較的簡単な
ものだけだったり、研修が受けられない・・)や応対の悪さ(例えば、情報の説明をしてく
れない・無視された・手話通訳を拒否する・・)などで、辞める人もいます。
 また、体調を崩しやむをえず退職する人もいます。
 (中略)
 定年までずっと働く人もいる、勉強熱心な人もいる・・そういう人もいることを分かってほ
しいと思います。
 会社がもっと理解してくれるといいけどね。



 このメールを見ても分かるとおり、聴覚障害者の一番大変な面は、聞こえない事ではなく、
こえない事から来る、ギシギシした人間関係なのでしょう。だからこそ、私や難聴学級の先
生方など、聴覚障害児を取り巻く人々は、先程述べたような聴覚障害者に対する誤解を与え
るような発言や、決め付けた考え方を嫌うのです。
 聴覚障害学生も同じです。彼らの一番大変なことは、聞こえないことではなく、聞こえない
事から来る周囲の無理解である事が多くあります。例えノートテイカーがいない講義でも、ち
ょっとの工夫が教員や仲間達にあれば、それらは解決できます。実際、大学にノートテイカー
がいなくても、弁護士になった聴覚障害者が3名います。
 ですから、この会報をご覧になったノートテイカーのいない聴覚障害学生には、「ノートテイカ
ーがいなければ、大学を辞める」ではないことを強く認識して欲しいと思います。そして、福島
君や黒部君のように、自らの手で権利をつかんで、有意義な学生生活を送って欲しいと思
います。


 その翌日の5月19日には、「身体障害者補助犬」と、法的な名前が付けられた、聴導犬
盲導犬介助犬を見に行きました。その時の参加者です。酪農学園と札幌学院大学の皆さん
が参加をしてくださいましたね。



 身体障害者補助犬のことは、もう皆さんもご存知ですよね?聴導犬とは、聞こえない方に音
の案内をする犬です。そして介助犬は、歩行が困難な方の介助をする犬です。
 しかしながら、聴導犬と介助犬はまだまだ全国に20頭ほどしかいないため、「見たことない
ぞ!!」という方も多いでしょうね。介助犬は、北海道にも1頭います!!



 車椅子の介助をする介助犬です。車椅子を引っ張ったり、車椅子から落としてしまった物を
取ってくれるそうですよ!車椅子に乗っていると、落としたものを自分で取れない方が多いとか
で、それを手助けしてくれるのです。自宅に帰れば、着替えの手伝いもしてくれるそうですね。




 言わずと知れた盲導犬です。



 そして、聴導犬です。写真の様子は、後ろから自転車が来たことを知らせているのですね
ー。聴覚障害者の皆さんは、「後ろから自転車が来ても聞こえないから分からないので、
歩道を走る自転車に引っ掛けられた事がある」と、よく言います。それを未然に防いでくれ
るのです。


 聴導犬のことは、こちらのHPをご覧になると、動画もあって分かりやすいでしょう。


 ただ、せっかく法的認知のされた身体障害者補助犬なのにもかかわらず、思わぬ「法律の
壁」もできてしまったのです。
 聴導犬団体関係者からは、この法律ができてしまったがために、署名運動をする事になっ
た、という話も聞かされます。私も「身体障害者補助犬法ができたら、障害者は幸せになれる」
と思っていたのですが、とんでもない法律の欠陥があったのです。
 それは、「1億円を持っていなければ、認定団体として認めない」というものです。

 一流企業じゃあるまいし、なんでこの不景気に、そんなことを要求するんだか…。どこの福祉
団体でも、通常は細々とやっています。福祉団体どころか、中小企業だって、1億円なんか持
っていないのに…。それに、ソフト面での条件ではなく、なぜ「1億円」という金額で分けている
のだか…。

 介助犬団体の中には、このようにHPで募金を訴えているところもあります。このHPの「重要
なお知らせ」をクリックしてみてください。(註:現在は公開を中止しています。)

 さらには、厚生労働省の方でも、このHPで1億円は無謀だったことを認めています。でも、
こんなHPを作るくらいなら、なぜすぐに法規定を改正しないんだか…。お役所仕事ですねー。



 話を勉強会に戻しましょう。この勉強会は、ダイエーがスポンサーとなって行なわれました。
ダイエーは頻繁に、身体障害者補助犬の勉強会を開き、法整備される何年も前から身体障害
者補助犬を受け入れた、大変先進的な企業です。
 この勉強会では、普段テレビやHPでしか見られない身体障害者補助犬の活躍を見られて良
かったのですが、ちょっとしたトラブルもあったのですよねー。
 勉強会担当者からは、「手話通訳が来ます」と電話で言われていたのに、いざ始まってみる
と、手話通訳がいないではないか!!!ビックリ!!!私も聴覚障害学生の井戸君も、私
達のメンバーも驚いてしまいましたよ!!!これは困ったとばかりに、私が井戸君の手話通訳
を客席でしていました…。場所も狭かったので、本当にやりにくくて疲れました〜。

 この勉強会に参加していた、手話のできるもう1人のメンバーに、「体が辛いので、代わっ
て!!」と言うと、「私はまだ、通訳まではできないんですよー」との答え…。辛かった…
(笑)。今度は下手でも構わないから協力してねー!(笑)


 手話通訳者が壇上に上がったのは、聴導犬が始まってからでした。会場に聴覚障害者がい
るのを分からなかったのかな〜。その手話通訳者は、聴導犬団体のスタッフでした。もうちょっ
と、こういった面での配慮や打ち合わせがあっても良かったのではないかなと思います。
 でもね〜、いくら手話通訳の方が来ていても、「手話の分からない聴覚障害者」という方も
数多く存在します。そういった方には、やはり「全く情報のない勉強会」になってしまったようで
す。この勉強会に参加していた手話の分からない聴覚障害者の方は、このような感想を私にく
ださいました。



 そういえば、イベントの時、藤懸さんが、男の方に手話通訳しているのを少し離れて見
ていましたよ。ご苦労様でした。
 手話通訳は色んな場面でありますが、手話をが出来ない難聴者のために、要約筆記
(スクリーン)がなかったのは、残念でした。
 そういう制度が、あることさえ知らない方が、多く集まるイベントなのに・・・
 「要約筆記」と言う制度があって、それに関わるボランティアさんの活躍を、見て頂くチ
ャンスだったのに残念でした。



 恐らく、主催者側も本当に聴覚障害者が来てくださるかという不安があったのだと思います。
実際、会場を訪れた聴覚障害者は、私の関係者だけでした。それだけに、主催者側も「大掛
かりなスタッフを呼んで、聴覚障害者が誰も来なかったらどうしよう?」という不安もあった
のかもしれません。でも、「事前にご相談ください」という案内くらいはあっても良かったのでは、
と思いました。


 それでは、いつも通り、交流会の写真をご紹介しましょう!!平成14年5月31日に、いつも
通り「へんみ」にて行われた模様です。お名前は、それぞれ向かって左から紹介させていただ
きます。



 左が、念願の服飾関係の仕事をしている聴覚障害者の森さんです。本当にお疲れ様です。












 今回、初参加の女の子です!!ちなみに、彼女の高校時代の恩師は、私達の団体でパ
ソコン通訳をしている中村さんのお父さんだそうです!!中村さんが聴覚障害学生支援
活動を始めた理由は、自宅でお父さんから彼女のことを聞いていたからだとか。2人とも、
ビックリでした!!世の中の縁って、不思議ですねー!!





 いつも仲の良い2人です。この日はお姉ちゃんが用事で来られませんでした。残念ですね
〜。今度はお姉ちゃんと一緒に来てね!!




 左は、なぜかコーラで酔っ払っている札幌学院大学の男の子です。彼のことは、高橋先生も
高く評価しています。まだまだ1年生だから、これからたくさんのことを吸収するはず!!頑張
ってね!!




 星野さんって、ドンドンやせて行っているけど、あんまり無理しないでね!!




 右は、北海道東海大学の聴覚障害学生の大塚君です。大塚君は私に、いつも勉強の話を
聞かせてくれます。これからも、色々と教えてね!!








「おーい、どうしてギャルに囲まれているの???」(笑)。



 中央は、札幌学院大学の聴覚障害者の高橋先生、です。高橋先生、いつもありがとうござい
ます!!そして、できの悪い教え子で、ごめんなさい…(涙)。







 そして最後が、全体写真です。最初は4人でスタートした交流会も、今ではこんな
 に大所帯になってしまいました!!




 本当は、もっと書きたいこともあったのですが、長くなってしまったので、今回はこのへんにし
ておこうと思います。次回は、今後のノートテイカーの展望についても書いてみます。私がいな
くなってから、日本一のレベルから急速に弱体化してしまった札幌学院大学のノートテイカー制
度と、急速に力を付けている浅井学園や酪農学園とでは何が違うのかを書いてみましょう。
 残念ながら、今の札幌学院大学は、浅井学園や酪農学園に追い越されてしまいました。
 でも必ず、私が外部から風を吹かせて改革をしましょう!!近日中に、高橋先生や関係
者と話し合いを持つ予定です。今後にご期待ください!!!

           札幌学院大学大学院法学研究科修士課程修了
               藤懸久明(ふじかけ・ひさあき)より



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