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藤懸久明(ふじかけ・ひさあき)
昨年二月、札幌で「聴覚障害者のケーキ店」として、27年もの間、市民に親しまれてき
た100円ケーキ店「リリー」が閉店した。親会社の自己破産の余波による閉店だ。札幌市民 に「食」を、聴覚障害者に「職」を提供してきただけに、本当に悔やまれる。
閉店の背景には、近年の消費者のグルメ志向があったようだ。高級ブティックのように飾ら
れたショーウインドーの中に、高級食材を使ったケーキが並ぶ…。最近では、このようなケーキ 店がもてはやされ、リリーのような「安くて美味しい」を売りにするケーキ店は、「流行遅 れ」と見られていたようだ。消費者の「食」の変化が、リリーの客足を遠のかせたとも言えるだ ろう。そして消費者の「食」の変化は、聴覚障害者の「職」までもを変化させてしまった。
札幌の聴覚障害者支援団体では、交流会を札幌市内にある聴覚障害者の居酒屋「へんみ」
で行なっている。これは、「聴覚障害者の居酒屋で食事をして、売り上げに貢献すること で、聴覚障害者の社会参加に貢献したい」という意思の表れである。様々なボランティアが あるが、聴覚障害者の居酒屋での「食」が、聴覚障害者の「職」へとつながっているのだ。
障害者への協力という言葉を聞くと、「困っている人に、何かをする」という内容をイメージす
る人も多いだろう。しかし、決してそうではない。私達が毎日欠かすことのない「食」を障害者と かかわりのある会社に求めることも、大きな協力であり、障害者への「職」の提供にもなる。 「職」の提供こそが、障害者の自立に寄与し、障害者の自信になるのだ。
普段、私達が何気なく、そして毎日欠かさず必要とする「食」を聴覚障害者のみならず、すべ
ての障害者の「職」とつながるよう、献立を考えてみてはどうであろうか。「食」で「職」を支 える社会貢献である。
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