「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 第12回更新分
「・・・まぁ、こんなことを言っていても始まらないな。で、その『アンチナンバーズ』のエプシロン君・・・我々と手を組む目的はさっきの不明組織の親玉を叩くということだったか?」
突然の来訪者を相手に、艦長のウィンストンは着々と話を進める。
来訪者、エプシロンと名乗る男との会談は会議室で行われ、彼の左右には兵士がちゃんと警備についている。
これで彼も逃げることすらできない。こうなれば、こちらから質問を叩き込んでいったほうがよさそうだろう。
「まぁね。それ以上は言えないけど・・・団体行動で動いたほうが動きやすいってのもあるかな?」
『アンチナンバーズ』が何人いるのか知らないが、団体行動を求めるというのは大規模な人数ではないはずだ。
ましてや彼は一人でこちらに顔を出し、トゥイレッティとか言うナンバーズを名乗る者も撃退させた。
それほど強力な腕の持ち主が、『アンチナンバーズ』とではなく我々に団体行動を求めるのだろうか。
「ほほぉ、その考えを出したほか、WEBRING SYSTEMをダウンさせたという君達の親玉というのに取り次ぐこともできないのかな?」
「トップシークレットだからね。俺達はただ奴らを叩きたいがためにそちらさんと手を組みたい。それだけさ。」
エプシロンは何食わない涼しい顔をして会話を進める。彼らがそこまでトップシークレットとして隠す意味はつかめそうにも無い。
ならばと今度は質問を変えてみるウィンストン。
「ふむ、他のメンバーがこっちに来る機会は?」
「さぁねぇ。別行動が基本的だから今どこで何してるのかも知らないし。戦場でばったり会うこともあれば街中で会うこともあうくらいだよ。」
確かに、彼の行動からして別行動が主流のようだ。むしろ通信などで合流なども知らせないとはまるで旅人そのものだ。
ウィンストンの熱心な質問を一方的にされるエプシロン。彼はそれで構わないが、この行動は一つの解決手段なのだろうかと気づく。
「あれれ、そこまで聞き出してくれているってことはその気になったのかな?」
「WEBRING SYSTEMをダウンさせてくれたとこと手を組むのは難しいな。こっちはそれで大混乱してる。まぁ、管理者本人はいないわけだが・・・その問題の矛先はこちらに向けられている。それを作った張本人は・・・。」
WEBRING SYSTEMがダウンしたあとのこちらの状況は表裏を返したかのように逆転した。
それを境にかあちこちでも戦乱が行われているとも聞くし、管理者であるフェリオも宇宙へと飛んでいったまま。
解決策が全く無いというこちら側にとっては、システムを落とされた組織と手を組むのは敵と無防備に馴れ合うのと同様だった。
「あーあーもー・・・俺に言われてもなぁ。とりあえず今は手を組むか組まないか、それだけ頼むよ。」
そこまでしてこちらと手を組む理由は分からないが、次にまたあのナンバーズがやってきたら対応も難しい。
「・・・傭兵の扱いをするが、それでも構わんな?」
「そりゃもちろん。ただ、また奴らが来たときはこっちで好きにやらせてもらうよ。それ以外はここを守ることも担当するよん。」
まさに傭兵扱いだ。だが、それにエプシロンは即決してくれたので、これでなんとか守備策の目処はつく。
だが、そんな軽がるしい即決の仕方は、ウィンストンにとっては罠なのではないのだろうかと少し恐怖心を抱いていた。
「ふっ、気軽に言ってくれるな。・・・だが、君の組織自体が分からない以上は当分の間監視をつけさせてもらう。」
軍としては当然の処置だろう、彼を監視下に置くというもう一つの条件。だが、これだけしてもウィンストンの不安は解消されない。何故なら・・・
「ご自由に。何なら出撃以外は薄汚い倉庫にでも軟禁してもらっても結構だけどね。」
といった、まるで自分を奴隷扱いにでもしてほしいという口ぶりのような自身がある。
しかし、これはこれで話はまとまりの方向へ向き、なんとか手を組んでやるという成立を果たすことができた。
「そこまでの覚悟があるなら、な。」
「なら、交渉成立・・・かな?」
一方、格納庫では負傷した機体が次から次へと休む間もなく回収されていく。
ミラージュ隊、ランサー隊、レグナム隊。どこの隊を見ても無傷な機体など存在しなかったのだ。
ただ一人ミラージュを駆け、全MS隊ではトップクラスを誇るクオンでさえも幾多の傷跡をミラージュに残されている。
「なんだよあの乱入者は・・・、かなり強引すぎねぇか?手を組まないかって・・・。」
ミラージュの足の甲に座り込み、支給されたスポーツドリンクを一気に飲み干すと、隣で同じことをしていた男に喋りかけた。
「まーまー、敵に回らないだけマシだと思えよ。核武装してたやつを余裕ぶっこいで圧倒してたんだぞ?」
彼もまた、クオンと同じく並ぶ腕前を持つとされるオーフェンという少し背の高い、20前半の顔を持つ男だ。
クオンとは違い、少しエプシロンのことを認めていたような口調で彼の強さを物語っていた。
「それにあの腕はフェリオに近い強さを持ってるんじゃないか?・・・ストラテーゴスとフェリオがいたら大分楽だったろうになぁ。」
確かにこちらの部隊を上回る実力はあのフェリオを上回るか・・・それとも紙一重なのか。
「確かに俺よりかはできるみたいだけど・・・なんかいきなりゴタゴタしてて頭ん中が変だな。」
「そうだな。お前なんてまだマシだがうちのランサー隊はほぼ壊滅状態だ。ま、奇跡的に全員脱出できたことが幸いだったがな。」
WEBRING SYSTEMのダウンから始まったいろんな出来事はクオンの頭を珍しく混乱させていた。
考えるときは他の誰よりも頭が回転していた彼なのに、とても妙なことだとオーフェンも思っていた。
それよりも、今は死亡者が一人も出なかったことは幸いだっただろう。核・・・という最凶の兵器を使わされていても。
「全くだぜ。俺なんか右腕とバックパックを持っていかれっちまってどうするかって思ったさ。」
戦いのあとに笑っていられるのはもう慣れていた。ずっと戦いばかりだった『あの日々』が終わったときから・・・。
「・・・アグゼのやつ、元気にしてんのかなぁー・・・。」
昔のことを思い出しながら、友達になって間も無く宇宙へと旅立っていったアグゼのことを思い出していた。
「さて、手を組んだのはいいが状況が分からない我々だ、君の知っていることでも聞かせてもらおうか?」
交渉成立は成し遂げたが、それ以前に我々には情報の量が足らなさ過ぎていた。
ちょうどいい機会なので、エプシロンが知ることのほとんどを聞きたいということで質問は更に続く。
「んー・・・俺らの相手とする奴らのことなら話せるかなぁ。」
「ほほぉ、それはトップシークレットには入らないということか。」
今、一番知りたい情報。先ほど戦ったナンバーズのトゥイレッティのことを含めてこのことは真っ先にかぶりつきたい情報だ。
どうらにせよナンバーズのことについては後々知ることになるだろうとエプシロンは先読みしていたため、話すことは容易だった。
「まぁ、何も知らないまま戦ってもらうのも俺は困るし。さっきの奴は分かったかい?ツンツンしすぎててロクに彼氏もできなさそーなやつだったけど。」
「No.5というと格上のレベルに値するんじゃないのかな?それを君は難なく退けたが・・・。」
No.0から始まって、5番目というのはとてもトップクラスに入る実力の持ち主なのだろう。
それを難なく退けたエプシロンがいるのだから、『アンチナンバーズ』が結束すれば打ち破れるのは容易いことだろうとウィンストンは疑問に抱く。
「あの辺なら単機相手でも楽なんだけどね。結束攻撃を仕掛けてくると流石にこっちも援護がいる。それに、やつらのトップクラスはN0.3から始まるんだ。」
話から推測してみると、ナンバーズは互いの長所を生かした連携戦闘を主流としているのだろう。
ということは、No.5であるトゥイレッティが単機突入を仕掛けてくるというのはこちらの戦力を甘く見ていたのだろうか。
あちらの素振りからして、エプシロンのことを知らないような感じでいたし、突然の出来事だったからあっさり引いた・・・ということになるのだろう。
「でもあのナースホルンという機体からの要求はこの施設の完全制圧が目的だと言っていた。それに、核装備で本気を出していたら全段発射をしてでもこちらの損傷率を稼いでいたはずだと思うのだけれど。」
すぐ背後で声がしたので、ふとエプシロンが振り向いてみるとそこにはレーンが銃を構えて立っていた。
彼の後頭部に銃口を突きつけると、エプシロンは微笑をもらしていた。
「へぇ〜・・・、君が監視役ってわけかな。なかなかじゃん。」
「お褒めありがとうと受け取っておくわ。だけど私は男にはさほどというほど興味はないから残念ね。」
更に銃口を突きつけられる力が入ってくる。流石のエプシロンも少し恐ろしそうな顔を見せたが、言葉の口調はそうでもなかった。
「お、そう読み取ってくれたのは嬉しいね。俺の言ってることはその感の鋭ささ。君ってもしかして・・・。」
「『ニュータイプ』・・・ではないわ。」
昔からレーンはニュータイプの素質があるのではないかと言われていたが、それは否だった。
そんな人と出会えるのかと期待して彼は言ってみたが、そうでないと言われたら少しがっかりしていた。
「まぁまぁレーン、銃を下ろせ。話を簡単にしてみると、彼女はまだ本気を出していないということになるっていうのか?」
確かに、こちらの防御陣を振り払ってきたのも軽々していたし、エプシロンとの接戦も長期戦に入ってもいなかった。
引き際も案外あっさりしていたし、本気で制圧しようとしているのであればもう少し踏み込んできてもいいくらいだったのだが。
「はい、私の予測上でですけれども。この男の腕があれば退けられますが、うちの部隊とはいえど・・・。」
「そうだねぇ、足手惑いになるかな。まー、まだ奴らは現れないよ。次来るときは団体か・・・No.4あたりかもしれない。」
まだ現れない・・・と彼は普通に言ってくれるも、あのような敵を団体で相手するのだと思うとずっと現れて欲しくはない。
これから来る戦いに備えるには、エプシロン以外の『アンチナンバーズ』もいないことには撃破も難しい。
なかなか現れてくれないし、会うこともないというのであれば、かなり険しい状況下にいることになる。
「ふむ、となると・・・アンチナンバーズのメンバーも必要となってくるか。」
「んー・・・何なんだったら呼んでみてみるかい?ナンバーズがこちらに来るって情報を餌にすれば来るかもよ?」
なんと、ちゃんと連絡を取り合えることを今更話された。こんなことだったら対策について頭を捻っていた自分が情けなく思うウィンストン。
呆れた表情と共にため息をついた彼は、エプシロンにそのことを頼んでみる。
「何だ、呼ぶことができるのか?ならできるだけそうしてほしいな。こっちも腕の立つのが少々やられてな、現時点での実力者はクオンという男だけなのだ。」
唯一被害が少なくて腕の立つのはクオンだけであって、後は機体を乗り換えた方が早いというまで損傷を伴っている。
こちらには最新鋭機のランサーも置いてあるが、やっぱり乗り慣れている自機の方が多少戦果にも関わってくる。
「オッケー、やってみるよ。ただし・・・そこの監視役のお姉さんにうちの機体の場所まで案内してほしいな。」
「分かった。レーン、案内を頼む。」
エプシロンのエオローは、何一つ整備も手もつけてないまま格納庫に置かれている。
そのことをエプシロンに告げて、レーンに案内役を任せると彼女は濁りの無い返事を返した。
「了解しました。」
WEBRING本部から少し離れた場所、草原地帯のど真ん中というところにいた謎の機体が一機。
コクピットでは、若い女性がタンクトップ一枚とハーフパンツを履き、髪を後ろでくくって機体の修理を行っているようだった。
「形跡なし・・・か。ここもやられたか。」
先ほど、何故だかは分からなかったが一機だけで逃走を図っていた機体を目撃していた。それは草原の外での出来事。
その形跡を追うようにしてここまでやってきたが、先ほどまであった機体から発するバーニアが作った草の焦げ後が見当たらなくなった。
同時進行でコクピットを出て、左腕の修理にかかろうとしていたときに突然の通信が繋がった。
「ん、通信だと・・・?誰から?」
急いでコクピットに戻り、回線を確かめる。通信先は「エオロー」と出ていた。
『こちらエプシロン。久しぶりだねぇ、リューネルト。』
通信を繋げてみれば、エオローの通信機能から送られてきたエプシロンの姿と声が展開された。
「エプシロンか。全く、ナンバーズと接触したのか?お前の仕業なのだろうか、こっちへNo.5が逃走していくのを目撃した。」
『あれ、珍しいね。殲滅者であるNo.5を見逃すなんてさ。』
彼の口ぶりからして、この女性、リューネルトというのは敵を見逃さない・・・つまりは猛追者なのだろう。
「滅多に負傷を追わない奴だ。お前がこのあたりに来ているなんて毛頭知らないから怪しくてな。」
このように、解析が早い彼女。こんな便利な彼女がいるからこそ、会話も進むし『アンチナンバーズ』とやらも侮れない。
『ととと、その口ぶりにしては近くにいるのかな?』
「今は広い草原のど真ん中で私の『概念』を修理してる最中さ。近くにいるということは・・・成る程、そんなところにいたのか。」
ふと外に出て、コクピットの道具入れから双眼鏡を取り出して辺りを見回すと、奥の方に見えるぽつんとした建物が見える。
『近いんだったらくれば見えてくるはずだぜ。エータもカイもどっか行っちまってるんだ。頼むよリュー姉。』
エータとカイ。同じ『アンチナンバーズ』の仲間なのだろう、彼らがいないということはとにかく戦力集めにもリューネルトには来て貰いたい。
少しノリにはついていかない彼女ではあるが、こういうときはちゃんと駆けつけてくれるのが彼女だ。
「リュー姉はやめろ。・・・修理ももうじき終わりそうだし向かおう。」
『サンキュー。こっちはこっちで監視下に置かれてるからそろそろ通信切るな。』
そう言ってエプシロンの方から通信を切られると、持っていた修理用ドライバーを道具入れにしまい込むと早速機体の機動スィッチを入れた。
彼女が『アンチナンバーズ』ということは、これは『機体』ではなく『概念』と呼ぶべきなのだろう。
「いずれはエータもカイも呼ぶということか。まぁいいか・・・私はそれが早まっただけのこと。素直に迎えにいくとしよう。」
そして、ようやく故障していた左腕の機動が可能となったことを確認すると、即座にバーニアを全展開にしてエプシロンの元へと向かう。
「じゃあそろそろ行こうかアンスール。私の感だと私達の出番時だということだな。」
リューネルトはそう呟くと、知性を兼ねた『概念』であるアンスールを駆けるのであった。