「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 第2回更新分

  村から出てからどれくらいたったろうか、何も無い道路を延々と走り、ようやく目的が見えてきた。
今日、初めて顔を合わしたはずなのに、彼とは何時の間にか溶け込んでいた。
彼、アグゼにとっては彼女、フェリオから繰り出す一方的な会話にうんうんと頷いてくる。
翻訳機能イヤホンが無ければ、彼女ともこうやって打ち解ける事も無かっただろう。
「さってと・・・ここまで来れば御出迎えがあるかな? うちのMSが一機、見張りがいるけど驚かないでね。」
MSという言葉がイマイチわからない彼だが、驚くなということは頷いて了承する。
直線の道に差し掛かると、奥に見える機影は1つ、こちらを見ているようだった。
姿が見えるくらいまで近づくと、ライフル型の武器を持った灰色のMSが薄暗く見えるようになった。
するとフェリオは、ハンドルの隣にあった無線機を取り出した。
「こちらフェリオ。今からそちらに向かうから警戒よろしくね。」
アグゼから見ると、黒い箱に言葉を投げかけているように見える。
だが、すぐに黒い箱から若い男の声が飛んできた。それに対してアグゼはびくっと反応する。
『こちらミラージュ、任せときな。・・・で、その肝心の子は連れてきたのかい?』
「まぁね。可愛い男の子だから、虐めちゃ駄目よ?」
話の半分で、彼との通信回線は強制的に断たれてしまった。
それをフェリオはため息をついて無線機を元の場所に戻す。
「ゴメンね・・・結構横着だけど、いい人だから気にしないで。」
無線機から聞こえてくる男の声に少し怖がりを見せていたアグゼ。
だが、フェリオが優しく安心させる一言をかけると、彼はさっきまで見せていた笑顔を見せる。
そして、車は一直線の道を何一つ障害も無く駆けていき、『宇宙船』へと向かって行くのであった。



中古の輸送船の割には、格納庫もMSが4、5機は軽く並べられるほど広かった。
恐らくはこの状態から改造を施したのだろう。宇宙船なのだから当たり前だろうが。
格納庫を後にして、その隣にある駐車場の2階に大きな白い車を駐車させる。
フェリオは車から降り、アグゼを降ろしてやると彼の手を繋いで誘導する。
広い広い船内だから、迷子になると探すのがとても面倒なのだ。
「いい?今からブリッジっていう、運転席みたいなところにいくからね。」
にこにことして話しかけれくれるフェリオだから、アグゼは安心感を覚えたのだろう。
大人しく彼女の手に引かれて、駐車場を後にした。
向かう先はブリッジ。ちゃんとアグゼを連れてきた事の報告をしにいかなければならないのである。
廊下を歩いていく中、壁に凭れかかる男と出くわした。そう、さっきの通信の男だった。
薄い光と一体化したような金髪、フーズの周りや腕周りに羽根のような毛布をつけた茶色の軽ジャケット。
黒のジーンズを履いた、服装を見ても分かるように、軽い性格と口調を持った男。
「おっす、フェリオ。その子が例の子か?」
「そうよ。ちゃんと仲良くしてやってね。」
フェリオが、アグゼを前に出してやると彼は少し恥ずかしそうに男から目を反らす。
男は笑って見せると、彼の頭をぐしぐしを撫でてやった。
「はははっ、こいつはいい友達になれそうだなぁ。 俺はこの宇宙船のMSパイロット役のクオン、16歳だ。よろしくな、アグゼ。」
すっと右手を差し出してアグゼの右手を強制的に握り、一方的な握手を交わす。
彼も、悪い人じゃないと認識すると素直に握手を受けとめる。
「それじゃクオンさん、私達はこれからブリッジに向かうから、この子とは後でね。」
「あぁ、分かった。俺はMS格納庫にいるからまた顔見せてくれよな。」
クオンは大きく手を振ると、アグゼも小さいが手を振って返した。
そしてまた、フェリオに手を引かれてブリッジへと向かうのだった。
宇宙船といっても、戦艦よりは小さいのだから船内も迷うほど広くは無い。
だから、ブリッジまでいくのにはさっぱり時間がかからなかった。
ブリッジの、自動扉が開いて中に入ると、しっかりと設備が整っている部屋がそこにあった。
「失礼します。」
そう一言彼女が言って入ると、ブリッジ内にいたオペレーター全員が彼女に視線を当てる。
すると遅れて、一番豪華と言えば変だが、位置名としては船長席に座っていた者がこちらへと向いた。
「お、今戻ったんだ。お帰り、フェリオ。」
「あれ?レーンじゃない。船長はどこに行ったの?」
ロングの茶髪を手で靡かせて、青色のTシャツとスカートを履く女性。
フェリオの口振りからして彼女は船長ではないのだが、船長席に堂々と座っている。
「今部屋に戻ってるよ。出発前だから少し緊張してるのかしら?」
彼女はクオンとは少し離れているが19歳という若さで一応は士官学校を卒業している。
だから、こうやって平然として船長席を任せられているのだ。
「なら、報告はレーンにしておけばいいよね。・・・ちゃんと連れてきたよ、アグゼ君。」
何か自慢気にフェリオの背中に隠れていたアグゼをレーンの目の前に出してやった。
すると彼女は、物珍しそうに彼を見ていると、少しにやけた顔を見せた。
「へへぇ・・・この子、生まれつきから喋れないとか?」
それを聞いたアグゼは、少し困った顔をして2つも余分に頷いた。
そんな気化されてもいない事をずばりと当てたレーンを、フェリオはパチパチと拍手するだけだった。
「そこまで当てれるなんて・・・やっぱり勘がいいんだね。」
「まぁね。女の勘はカオス理論を超えているっていうけどさ。 それよりも、彼が微妙に口をパクパクさせてたから、何も喋れないのかなって・・・それの連想で。」
彼女との会話を翻訳イヤホンを通じて聞こえていたアグゼは少し赤面をしていた。
彼にとってはコンプレックスになるのかとレーンも考えていたが、そうではなかったようだ。
そして、レーンはクオンと同様に彼の頭を優しく撫でてやった。




一方、あれから謎の光に包まれてから目が覚めたように目を空けたリン。
そのまま倒れたのだろうか、自分は寝転がっていて、ようやく意識が戻っていた。
「・・・うぅ・・・ん、こ・・・、ここは・・・?」
WEB RINGシステムの暴走のことはちゃんと頭の中に入っていた彼女。
自分は制御室いるのだろうと思って、コントロールパネルに向かって原因を解決しようとした。
だが、その考えは周りの風景を目にして砕かれた。

「な・・・!ここは・・・どこなんだ!?制御室どころか・・・森林が・・・!?」

空には丸い満月が見え、辺りは虫と小動物の鳴き声が響き渡るジャングルに値する場所。
自分の寝転がっていた場所は比較的広くかったが、見渡す限り森林が広がっていた。
「くっ、どういうことなんだ?私達は確かに制御室に・・・!!」
信じられない事態がリンの目の前に浮かぶ。いつも冷静な彼女が今は正反対だった。
とりあえず、深呼吸して落ちついて考えてみると、あの光は一体何だったのか。
「もしかしてあの光は別世界への入口だったということ? でも・・・次元連結ができる大掛かりなプログラムなんてどこの誰が・・・。」
考えてみながら森林の中を掻き分けて進んで行くと、すぐにジャングルの出口へと到達してしまった。
彼女は急いでそこから抜け出すと、そこは広い砂浜と無限に広がる海だった。
そう、ここは誰も住んではいないだろう無人島であったのだ。
「不運だなぁ・・・。アリスもいなくなっちゃうとするとどうやって捜せばいいのか・・・。」
無人島となると、食料も何も調達できない絶望の土地。
ふとポケットを調べてみても、当然何も食料は入ってなくて幻滅する。
MSも持ち合わせてないし、助けを呼ぼうにも何年かかるのだろうか。
しかし、ここで行動に移さないといけないと彼女は沿岸を歩いていくと、まさに奇跡は起きたのだった。

「・・・幸運だなぁ。こんな世界にもMSがあるなんて・・・!!」