「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 第3回更新分
古い戦場の跡なのだろうか、リンが見つけたモビルスーツは少々外面が悪かった。
さらには半分は海に沈んでいる。
自分でも何を警戒しているのかよくわからないが、とりあえずは辺りを見回して安全を確認した。
そしてしっかりと足場を確かめながらそのモビルスーツへ近づいていく。
遠くからは木々の陰に隠れて解からなかったが、左腕前腕から先が付いていない。
傷跡からも以前にこの場所で戦いがあった事が伺える。
「大きさは...そうだな、9メートルくらいかな。」
触れられる距離までくるとリンはそう分析した。
崖にもたれるように倒れ込んでいたが、立てばそのくらいだろう。
「動く?」
単純に考えれば可能性は低い。
せめて通信機でもあれば。
すぐにリンはそのモビルスーツを登り始めた。
コックピットらしきブロックが機体中央あたりに見える。
構造はリンの知るモビルスーツとそう変わらないようだ。
予想通り外部からもハッチが開けられるようになっていた。
そのハッチを開いた瞬間、リンは再び唖然とする。
「うわ...」
コックピットは見たこともないカタチをしていた。
いや、リンにとってはコックピットと言いきれる自信もなくなってきた。
広がる空間の中央にシートが見えるが、それ以外何もない。
何のための空間だろうか、思考はそんな根本的なところまで引き戻されていた。
リンは少し震える手を伸ばしてシートの輪郭をなぞる。
すると、カチリという音、そして感触と共に壁の一部が透き通るようにして外の景色を映し出した。
「これは知ってる。」
全天周囲モニタ、リンはこのような技術をそう記憶している。
溜息をひとつ吐いて、意を決したようにシートに座るとそれに合わせてリンの右手側に半透明の小さなウィンドウが現れた。
「これは...知らない。」
そのウインドウはどう見ても空中に浮いてる。
同じような技術、もしくはほぼ同じ現象を再現できる技術ならリンは知っているが、それらと決定的に違うのは浮いているウインドウに触れられることだ。
そのウインドウの中で淡く、赤く点滅する場所に触れると新たに三つのウインドウが、今度はリンの胸前あたりに現れる。
一瞬、目で追えない速度で文字列が流れ、そして止まる。
[FAITAL ERROR : AUTOBALANCE SYS. DID NOT BOOT]
「ええっ〜」
順調に、そして神秘的に起動してくれた所為で少し期待していたが、一気に白けた。
オートバランスが起動しないということは、立てない事と等しい。
歩行型モビルスーツで立てないということは、全く役にたたない。
ということは、このモビルスーツはガラクタだということだ。
...リンは嫌になるくらいシンプルな自らの三段論法を嘲笑する。
悔しい。
これだけでは悔しすぎる。
なにか、せめて今自分がいる場所の手がかりさえ見付かればよい。
幸いこの役たたずもコンピュータだけは動くようである。
ただし、いくつかファイルを漁ってみたがラテン、ギリシアアルファベットに算用数字と記号、プラス特殊記号を用いたパスワードの所為でオープンどころか、アクセスさえ許されなかった。
「流石にOSの書き換えなんかさせてくれないよね。」
そんな言葉を吐いて、コックピットを出る。
結局CUIの仮想端末のコンピュータ名(機体名?)にゲルマニクスと書かれている以外、収穫はなかった。
それから小高い岩山に登り、沈む日に向かって大声でアリスとキセア、そしてメガネのアイツの名を叫び、そのまま倒れて今日は終わりにすることにした。
***
瞬間、理解し難かった。
とにかく最初に感じたのは痛みよりも寒さだ。
光を確認したすぐ後寒さを感じて、ぼふっ、という軽くて重い音と同時に背中に少しだけ痛みを感じた。
空が見えている。
赤い空が、とてもきれいだ。
「うわぁ...」
と思わずアリスは声をあげた。
しばらく眺めていると、騒がしい声が遠くでしたと思うと、すぐにその声の主はアリスの眼前にひょこ、と顔を出す。
「大丈夫あなた?」