「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 第30回更新分


Several years ago...

あの日、私は姉さんと一緒に遊んでいた。
遊んでいたと言っても、私はまだ物心つきたて、ただ自分が住んでいた場所のあたりを散歩するようなものだ。
しかしそのころはそんな行為ですら、私には探検に思えて仕方がなかったのである。
そしてあの場所へ足を踏み入れたのもそんな冒険の一つだった。

姉さんは私がその場所へ入り込むのを強く止めたが、私はほんの悪戯心でその声を無視した。
その場所は、「立入禁止」と様々な言語で書かれた黄色く長いテープが外周に沿ってほとんど隙間なく巻かれていて、私が子供でなければ入ることはできなかっただろう。
私が僅かな隙間を見つけて中に入ると、七本の太い柱が円を描くようにただ天を目指して立っているだけのつまらない光景が目に入った。
それらの中心には地面からすこしだけ高い段があり、私はその段の上に立とうと走った。
姉もやっとテープの間をかいくぐり、なおそんな私を止めようとしていた。

私はその中心に到った。
七本の柱はそれぞれ意外なほど遠く見え、また上を見上げると見たことがないほど青い空と、輝く太陽を私は見た。

そのすぐ後だった。
空から、とてつもなく強い風が吹き込み、外周を覆っていた黄色いテープは切れ切れに吹っ飛んだ。
そして七本の柱はそれぞれが別の色で光始めて、青い空と左右に見える景色を無色に染めていった。
私は何が起こっているか全く理解できずにいた。ただ姉が酷い声で私の名前を呼ぶのは聞こえる。
足の方から段々感触が消えていき、やがて泣き叫ぶ姉の声も消えた。
次の瞬間には私はただ無を感じていた。

その時こそ、私が時空遺児になった瞬間である。

私は時空遺児になることによって、世界を外から見ることができた。
この場合の世界とはつまり多重宇宙だとか、並行世界すらも含んだもっと大きな世界。
言うなればエゴの内側。とにかく私はその世界と世界の間にいた。
世界を外から見る、というのはある意味で非常に面白く、そしてある意味で悲しいことだ。
目まぐるしく動く世界は勝手に生まれ気がつくとパチンと弾けて無くなる。
私はその様子を数えきれないほど見た後に、またいつの間にか手足の感覚を取り戻していた。

手足の感覚が戻ったと言っても、目の前はまだ無だった。
しかしいくつもの世界を見た私には理解できた。

この世界こそ、私の世界だ、と。

けれども私はこの世界の神ではなかった。世界は全く私の思い通りには動かなかったからだ。
しばらく――時間がまだなかった頃からなので、それはほぼ永遠――して、私と同じような時空遺児たちがこの世界にやってきた。どうやらこの世界は時空遺児をひきつけ易い世界、もしくは時空遺児のための世界だったようだ。

時空遺児たちは私も彼らもみな同じような願いを持っていた。
自分がもといた世界に帰りたい。中でも私が五番目(サンキエム)と呼ぶ女性、トゥイレッティ・ダンセはそれが顕著だった。
幸い、一番目――私は彼をプロートスと呼ぶ。でかい男だ。――は時空に関しての研究に熱心で、この世界が私がもといた世界と原初の時間を共有しているということを解明してくれた。
私がもといた世界、つまり連盟世界には、その誤作動によって私がこの世界に飛ばされてしまったが、時空移転装置がある。連盟の人間が遺跡だとか、遺産と呼んでいたものである。

これを使い、私たちは各々の世界へ帰ることを望んだ。最初は何度も同じような装置を開発することを試みたが、それらは不完全すぎた。
そして最後の方法として私たちが導き出した答えは、不完全なニセモノを使って完全なホンモノまで到達することであった。

――ここまでが、全ての'ゼロ'に共通する記憶である。

つまりここが数人のゼロと、数回の連盟遺跡取得計画の分岐点ということだ。

私が知っている限りゼロは私を含めて九人いる。初めの一人は取得計画を平和的に行おうとしたが、遺跡の完全な起動に失敗し、それ以降のゼロは全て軍を用意して、連盟の征服という方法で計画を進めてきた。
特に八番目のゼロは計画の成功まであと一歩というところで失敗した。彼の軍内で反乱が起きたのだ。
反乱を起こしたのは時空遺児ではなかったため、彼とその側近たちの考えを理解できなかったのだろう。

そして私が九番目である。
私もまたあと一歩で完了というところまできた。八番目とは違い、反乱分子が始めから外にいてくれたおかげだろう。それだけは彼ら反乱分子を誉めることができる部分だ。

実は八番目と私以外のゼロは既に死んでいる。彼らが死んで失敗したか、もしくは私が殺したからである。
ではなぜ八番目が生きているのか、その理由は彼が私たちに反目する組織の中にその身を置いているからだ。彼はその組織の中で八を表す文字を自らの名とし、どうやら遺跡を完全に起動させるための鍵を集めているようだ。未だに彼が私の敵なのか味方なのかはわからない。
とにかく今は様子をみるしかないだろう。

***

「さて。キセアは姉さんに任せてあるし、アリスとリンも八(オクトー、η')が何とかしてくれるだろうから...しばらくは暇だね。」

そう言ってゼロと呼ばれる少年は、瞳を閉じてしばらく眠りにつくことにした。