「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 第37回更新分
「はぁ・・・」
連盟へと戻ってきてからずっとこんな調子でため息ばかりをついているフェリオの姿が司令室にあった。リンたちは、その理由をアグゼの喪失にあると思っていたが、当の本人はそれでため息をついていたわけではなかった。
(あの一撃で終わりに出来なかった・・・)
たった一撃、あの刃を彼に突き刺していればこのわけのわからない戦いが終わると思っていた。それなのに、結果としてゼロを逃がし、さらにアグゼまで失ってしまった。当初の目的であるキセア捜索も叶わなかった。これでは連盟の長として申し訳がない。
しかし彼女はまた別なことも考えていた。キセアなくしてリンは連盟へと戻ってきたという事実があり、いずれアリスも戻ってくると断言する人間もいる。どうやら自分がこの場を離れている時間に、アリスやリンたちは自分よりももっと不可解な出来事に遭遇していたに違いない。
でもそれを素直に、もっと深く尋ねることが出来ないのだ。
連盟を統べる者が、連盟内にある装置によって同盟およびWEBRINGの統括者である彼女たちを失い、捜索に出るも手がかりなし。一連の事件の首謀者であろうゼロも逃がし、のこのここの世界に『戻された』そんな自分の立場を考えれば現状に口を出しにくいのだ。アリスやリンが置かれた境遇、乗り越えてきた試練に比べれば自分のやってきたことなんて何の意味もなかったかもしれない。そう考えるとどんな顔をして彼女たちが体験してきたことを尋ねればいいのかがわからなかった。
それに自分がいない間は、今は姿は見えないがウィンストンや、別館の館主であるフィリスもこの状況を察して手助けしているかもしれない。自分の居場所が途端になくなってしまったと思うと、妙な寂しさに襲われる。
「・・・情けないな・・・」
リンもアリスもここに戻ってくる、もしくはここに戻ってきて自分のすぐ近くにいるのに。彼女たちは今まで以上に遥か遠くへ、手の届かないところへ行ってしまったような気がした。
***
「ミュナって一体なんだったんだろうな」
リュウエの容態が安定し、ゼロが再び現れるであろう連盟のある世界への岐路を辿っている最中、エプシロンがふと口にする。リュウエの妹で、しかし兄には発生しなかった特殊な能力をゼロが欲したという形なのだろうが、その具体的な『理由』がやはりわからないでいるのはエプシロンだけではなく、リューネルトもアリスもラムダも。
ただ、リュウエだけは違った。この世界にいたリュウエならわからなかっただろうが、イマジナリー・ナンバーとなった今のリュウエにはそれがわかっていた。
「俺たちは、アリスの子孫なんだ」
・・・その場の空気が凍りつくのが誰にでもわかった。
「・・・え、それって・・・」
冗談半分でそれを聞いていたアリスはその質問もやはり冗談半分だったが。
「ゼロは後から知ったんだ。俺たちのDNAとアリスのDNA構成が酷似していることをな」
「ひ、ひ孫ですか?」
「それ以上だろ・・・ってそういうことを言っているわけじゃぁない」
アリスがあまりの衝撃の事実に思考回路がおかしくなってしまったようで、この後の質問全てがあまり的を射たようなものとはいえないものばかりになってしまい、不覚にもラムダは噴き出していた。それと同時にラムダは、何故ゼロがミュナをさらったのか、その理由がわかったような気がした。リュウエの言うことが正しければ、その答えは実に単純で、納得のいくものである。
「なるほど・・・ゼロはお嬢さんと『同じ力』を欲したんだな?」
「・・・ニュータイプか」
ミュナとリュウエ、双方アリスの子孫ではあるが、ニュータイプ能力の発生の差は歴然だった。リュウエは戦い向きの性格をしているし、センスもいい。メンタルサーキットを操れたのもそのせいだと言えるが、力の発生に関しては微々たるものだったに違いない。メンタルサーキットの適正がアリスより劣っていたことからもそれが伺える。
しかしリュウエはミュナの存在によって今の今まで生き延びられたという経緯がある。彼女はリュウエよりもニュータイプ能力が秀でていたということなのだろう。
それがゼロがこの世界に来た理由、ミュナを欲した理由であると考えることが出来れば自然である。
「けどよ、これで確実になったんじゃねぇか?」
エプシロンが、連盟消滅が阻止されても、ミュナやリュウエはその未来の世界でも消えないかもしれないと言っていたが、連盟が消滅し、アリスがいなくなった未来であっても彼女の遺伝子を受け継ぐ子孫が存在しているのだ。アリスが生き延びた世界になっても、その遺伝子を受け継ぐ子孫は存在しているということになるのではないだろうか。
「しかし連盟が消滅した世界の未来でアリスの子孫がいるというのも、どうだかな・・・」
エプシロンのポジティブな考え方とは裏腹に、リューネルトはネガティブな志向で物事を考えていた。
「もしかしたらミュナは別世界からこの世界に飛ばされてきた、なんて話じゃないだろうな・・・」
「おいおい・・・話をややこしくするなよ。せっかく簡潔に問題が解決しようとしてたのによ」
そんなエプシロンの憤りもリューネルトは簡単に受け流してしまい、それに対しての返答はしなかった。自分たちの存在は過去にも未来にもない、ここにいる今の自分だけが全て。そういう自分たちが他の人間の過去や未来に手を出し、口を出し、傍から見ればそれはただそういった人間たちの世界をぐちゃぐちゃにかき混ぜているだけなのだと見受けられるかもしれない。
しかしそういった『普通の存在』を、もしかしたら彼らは羨ましいと思っているのかもしれない。そうでなければここまで介入もしなかっただろう。例えナンバーズとアンチナンバーズの争いという大前提があったとしても。