「OGFオリガンリレー小説〜ケ・セラ・セラ〜」 プロローグ
某日。オリジナルガンダム連盟本部会議室。
非常にすがすがしい天気である。気温、湿度、風力ともに有り過ぎず、しかし無さ過ぎもしない、過ごしやすい日になることは意外と稀なことである。
『連盟』と大々的に銘打ってはあるが、実質この連盟を運営している人員はたったの3人。オリジナルガンダム同盟を管理するアリス、オリジナルガンダムWEB RINGを管理するリン、そしてオリジナルガンダム連盟を管理するフェリオだ。みな若年の少女たちではあるがその能力には一目置かれ、この大規模な連盟という組織の運営をこの少人数で任されている。しかし立場上フェリオが連盟に在籍することはほとんどない。専ら外部への派遣を余儀なくされているため、事実上この連盟を管理しているのはアリスとリンだけである。
今日も静かな会議室にはいつものようにアリスとリンがいる。これまたいつものように管理している『もの』の状況報告をするために集まってはいるがたった2人だ。形式などはあったものではない。
「はいはいはーい!今回はね、3人も加盟者がいたんだよー」
いつも元気なのは同盟を管理するアリスだ。この元気が一体どこから沸いてくるのかが不思議でならない。後頭部で2つに縛っている髪の毛をくりんくりんいじりながら、またその肢体をふにゃふにゃさせながら一層彼女の元気っぷりをアピールしているように思える。
しかし彼女と対照的なのがWEB RINGを管理するリンのほうである。翡翠色の瞳をスッと細めてそんなアリスの行動を悲観視しているよう。
「・・・こっちは2つのサイトが新規加盟。3つのサイトを削除。以上」
「3歩進んで2歩下がる、だねー」
アリスの発言にリンが眉を顰める。
「空気読めよ空気」
「はへ?」
指を折りながら、何故リンから指摘されたのかを考える。3歩進んで2歩下がるは実質1歩進んでいることになるがWEB RINGはその逆。即ち。
「わかった!つまり数がへtt」
「その先は言うなよ」
特に運営や管理にノルマが存在するわけではない。しかし同盟と違い、WEB RINGは出入りが目まぐるしくなるのは必然なのだが、やはり数を減らしたくないというリンのささやかなプライドがアリスのその後の言動を許さないでいる。
彼女たちの仕事は管理運営ばかりではなく、実際にモビルスーツを扱い、訓練もしている。別に他国との折り合いが悪いとかそういったものではなく自衛のためというのが大基の目的であったりする。そのあたりは深く考える必要はない。・・・多分。
モビルスーツが格納されている倉庫へと向かう2人。先ほどの報告会ではアリスに引けをとってしまったが、そちらとは打って変わりこちらはリンが得意とする分野である。モビルスーツの操縦に立場の違いは生まれない。違いは操るものの腕から生まれるのだ。そういった意味ではアリスとリンが対等な立場に身を置くのはこのモビルスーツの操縦訓練になるわけだ。
いつものように基礎体力作りのメニューからこなす。連盟本部を置く敷地の外周を何周もランニングし、その後は筋力トレーニング、そしてやっとモビルスーツのコクピットシートにその身を委ねることができる。
ランニングの時点で若干息が上がっているアリスに対し、リンは涼しい顔をしながら次の筋トレのメニューに移ろうとする。
「えぇー!?まってよー!」
「・・・ったく。時間は待ってくれないぞ」
地面に倒れ、這い蹲りながらリンを追いかけるアリスの姿は滑稽だがこれはいつもの光景。そしてそんなアリスに目もくれず、サッと彼女に背を向けながらジムに向かうリンの姿もまたいつもの光景。
「そ、そんなに急いだって何があるわけでもないでしょー?ねぇ待ってよー」
「・・・嫌なフラグが立ったような台詞回しをするな・・・」
しっとりと流れる汗を拭きながらリンは若干いつもと違ったアリスの台詞に戸惑った。
今日一日分のトレーニングメニューをこなした彼女たち。アリスは案の定へとへとに疲れ果てている。ミネラルウォーターを一気に飲み干すとそのままソファに倒れこんだ。
「・・・だいじょぶか?」
自身も彼女と同じようにミネラルウォーターを口にするが、一口、二口飲んだところで穏やかな本部内に突如として激震が走る。
「ぶほっ!」
口に含んだ分が思わず放出される。
「やー!汚いよリン!」
「し、知るか!何なんだこれは・・・」
今までに聞いたことのないパターンの警報が鳴り響いている。この本部にいるのは彼女たち2人だけだ。彼女たちだけでこの警報が鳴っている原因を突き止めなければならない。制御室に向かい、一目散にコントロールパネルに目をやるとWEB RINGの制御系等に異常が発見されたという表示が出ている。WEB RINGの異常はこれまでも確認され、しかしリンの手で簡単に修理されてきた程度のものだ。安全性や安定性からいけば大した問題ではないはずである。
「わけわかんないよ・・・アリス?っておいー!」
「え、なになに?」
アリスがしっかり握っているのは電源のコンセントだ。しかも主電源に繋がるかなり太いもの。綱引きの要領で思いっきり引っこ抜こうとしているではないか。
「ほら、電化製品ってコンセント抜いて挿したら直るって言うっしょ?」
「アリスにはこれがパソコンか何かに見えるのか・・・」
コントロールパネルから視線を外し、足を思い切り屈伸させ、その躍動感溢れるしなやかな身体をバネにしてコンセントを抜こうとしているアリスに突進していく。
「とぁーー!北斗○拳奥義!シャイニングウィザード!」
「そんな奥義、聞いたことないよリンー!」
膝が見事に顔面にクリーンヒットする。そのまま慣性の力で一転二転身体を回転させながら壁に激突する。トレーニングの疲れもあるだろう、起き上がる気配すら見受けられないまのアリスを横目にリンは応援を頼むことにした。
『はい、リン先輩。こんにちは。お久しぶりですね』
「挨拶はいいよ。それよりちょっと厄介な問題が発生した。対処してほしいんだけど」
『了解です!』
リンが接続したのは連盟本部とは別の場所にある連盟別館でナビゲーターを務める『XEA SYSTEM』のメインユニット、キセアである。彼女の手を借りることは頻繁にあったことだが、彼女が『久しぶり』と言葉を添えたところを見ると最近は彼女の手を借りずに事が済んでいたことを思わせる。
キセアの目が変化し、システムエラー検索モードへと移行する。彼女の処理速度なら1分はかからずに検索し終えるが、今回はその1分を悠に越えている。
「大丈夫か・・・?」
『は、はい。大丈夫ですよ。もうすぐ突き止めますか・・・Ra・・・?』
ガクガクと彼女が振動を始める。顔色も若干赤くなってきている。放熱が追いつかないほど処理速度を向上させているのか、それともバグか何かが彼女にまで襲い掛かったか。
「キセア、やめな!」
『せ、制御が利きません!』
「な、何だって・・・?!うあっ!」
突如として目も開けられないほどの光が彼女たちの視界を塞ぐ。思わず目を閉じてしまったリン、そしてキセアと伸びているアリスにはその後自分たちがどうなったのか、次に目を開けるまで知ることは出来なかった。
WEB RINGシステムの暴走。
彼女たちに襲い掛かった出来事のうち、最も関与した度合いの大きいもの、それがこれである。
派遣場所から帰還したフェリオが目にしたのはめちゃくちゃになったWEB RINGの制御室。そして誰もいない静かな連盟本部だった。
「何なんだこれは・・・」
かけている眼鏡を外さず、冷静な心情のままでこの状況を把握しようとひとまずしたことはやはりキセアへの接続だった。しかしいくらアクセスしてもキセアに接続されないどころかキセアが『そこには存在しない』というエラーが表示される。
首を傾げるフェリオ。こんな現象、今まで起こったことはないし、ユニット換装で彼女の性能は飛躍的にアップされているから存在そのものが消えることはまずありえない。外部からの接続で彼女をどうこうすることが出来ないほどの強化プロテクトが施されているからだ。彼女を抹消するには大掛かりなシステム、そう、例えば世界と世界を行き来するこのWEB RINGシステムの力を必要以上の力で起動させれば出来なくもないだろう・・・。
「なるほどな・・・」
これだとアリスとリンが消えてしまったことも説明がつく。ここで問題になるのはWEB RINGシステムの暴走ではなく何故暴走したか、その原因が問題となる。考えたくもないがやはり外部からの何らかの接触によるものなのか。これはただのバグやエラーといったものでは片付けられない。
「ふぅ・・・」
ようやく眼鏡を外し、歳相応の可愛らしい一面を覗かせる。彼女たちはこの世界から消えただけであり、恐らく今は別世界へと転送されたのだとすれば、自分にできることは限られてくる。
「長い旅になりそうだね」