エクス・スラッシャーズ〜船上のmerry苦しみます〜第1弾
神城蒼馬さんの作品です♪
じんぐる べる じん ぐるべる すず が なる
♪
その夜は皆浮かれていた。
街は色とりどりの飾りに彩られ、星空を落としたようなイルミネーションの明かりを灯している。行きかう人々には笑いが溢れ、にぎやかなメロディがそれを盛り立てた。
そう――。
ぐさり
どさり
びちゃちゃ
街は一瞬にして血に染まり……
「ちょちょちょっ! ないない、それはないからっ!」
「そうなのですか? しかしこの文献にはそのように……」
「それ違う。絶対違う」
そこでリンのビシッと鋭いツッコミが眉間に炸裂し、ゼリスが「あ……」ととぼけた声を出して持っていた本をポトリと落とす。そこで一同の笑いが会場内に木霊した。
そう、今日は12月24日。泣く子も黙るクリスマスイヴであり、世間はそんな浮かれたお祭りムードを驀進している真っ最中であり、それは我らがオリガン娘たちも例外ではなかった。
彼女らは連盟本部所属の艦艇Cヴィック内にこの時とばかりに即席のパーティー会場を設置し、一堂集ってのクリスマス・パーティーを開いているのだ。
Cヴィック内におっ立てたクリスマスツリーを中心にした円卓を囲い、リン・アリス・フェリオの三人娘を始めとしたメンバーが早くもランチキ騒ぎを繰り広げていた。
「こうしてみんなで集まると、なんてーか壮観だよね」
そう言ってアリスは会場を見渡す。アリスたちオリガン連盟三人娘はもちろん、別館ナビのキセア・フィリスコンビにオロール、スキュルのエア姉妹。セレナにアロアにG菜。さらにイニィやゼリス・ありすらもゲストで参加している。
「むむむ……、この面子! これなんて十三人衆……」
「寒いボケかますなっ」
さりげなくアリスの隣にきていたリンがすかさず突っ込む。
「あはは。だけどホントに大勢集まったよねー」
「そうだね。それだけ私たち連盟も大きくなったってことかな」
相槌を打ちながらリンも会場の様子を見る。中央ではなにやらオロールとフェリオが派手に騒いでいて、それをスキュルとキセアのふたりがオロオロ見ている。
奥の方ではアロア、G菜、イニィにいつの間にか加わったゼリスの四人がゲームを楽しんでいるようだ。全員アンドロイド少女だけに何か通じるものがあるのだろうか。なかなかシュールな組み合わせだ。
組み合わせといえばそこから少し離れたところでは年長組であるセレナとフィリスのふたりが、こちらは互いに酌をしつつ何か語りあっているようだった。
確かに。その光景にオリガン連盟も賑やかになったとアリスも思った。
何やら参加者が女性陣ばかりに偏っている気もするが、それは製作サイドの都合であり、女性キャラたくさん出せば人気出ると考えた作者の陰謀であり、事実その方が読者も喜ぶのだからこれは俺たちのジャスティスなのだ。つまらない指摘をする方が無粋というものだろう。
などと作者に代わって作品の「予防線」をアリスとリンが考えてくれているうちに、ふたりは会場の中にひとりの少女の姿が見えないことに気がついた。
「あれ、ありすちゃんはどこだろう?」
今見た会場の中にはアリスと同じ名前の少女の姿がなかった。登場人物がまだ13人しか出ていないのに早くもキャラの名前が被ってるあたり、コラボ作品の醍醐味がうかがえる。そのあたりは読者諸兄にもご理解のほどいただきたい。
「アリス。ありすちゃんってさっきまでフェリオたちと一緒にいたよね?」
「うん、どうしちゃったんだろう?」
リンの狙ってるとしか思えないややこしい台詞にも全く反応しないアリス。このように慣れればどうってことないのである。それにアリスは自分と同じ名を持つ少女のことを結構気にかけているのだ。
ふたりがキョロキョロしていると、
「お待たせです〜♪」
会場の扉が開いて、そこから探していたありすがニコニコ嬉しそうに笑いながらふたりのところにやってきた。
「どこいってたの、ありすちゃん?」
「はいセンパイッ! ちょっとこれを取りに行ってました〜」
そういってありすは両手に持っていた箱をアリスとリンに差し出した。一遍が30センチ以上ある割と大きな箱だ。
「それって?」
「開けてみてください」
ありすから箱を受け取ったアリスは(←だからややこしーってw)、それをテーブルの上に置きフタを開けてみた。
「うわぁ、すごい!」
開いた箱の中には可愛らしくデコレーションされたケーキが入っていた。
「これありすちゃんが作ったの?」
「はい、リンさん。センパイたちに喜んでもらおうと頑張りました〜。えへへ」
そういってありすは顔を赤らめる。その素直な反応が微笑ましい。
「わー、おいしそうじゃないですか」
「確かに、飾りつけもとても良く出来てますね。その……すごいですぅ」
ケーキに気がついたキセアとメガネを外したフェリオがやってきて、それを機に他の面々もケーキの前に集まってきた。
食べ物の匂いに釣られてぞろぞろ集まってくるあたりが、実にオリガン連盟キャラらしく、すぐにケーキを前にして皆は盛り上がった――。
……ん? なんですか皆さんその無言のプレッシャーは? 不愉快だな、この感覚は……って。はいはい、分かりましたよ。
楽しげな気配をすぐさま察知して集まってくるあたりが、実にオリガン連盟キャラらしく、すぐにケーキを前にして皆は盛り上がった――。
……これでいいんでしょう? まったく女優には気を使うよ。
「ふむ、なかなかの出来栄えだな。OKだ」
「おいしそうだね、ありすちゃん」
「えへへ、ありがとう。イニィさん、フィリスさん。実はみんなに喜んでもらえるか結構不安だったんだよ〜」
「ソンナに心配することナイよ、みんな喜んでるもノ。ね?」
「ま、あたしはおいしいものが食べられればいいから。ありがとね」
G菜の言葉をアロアが継いで、周りのみんなも頷いた。やっぱりいいね、みんな食い意地が張ってて……げふんげふん。えーと、なかがいいおんなこののすがたはほほえましいね。
「その通りです。ありすさんは普段はおっちょこちょいですが、こういうことにかけてはしっかり者ですから」
そのみんなの反応になぜかゼリスが誇らしげに答える。普段はあまり感情を表さないゼリスも今日はいつもより楽しそうに見える。
みんながありすとケーキを囲う中、ふいにジャージ姿のオロールが進み出てきてありすをビシッと指差した。
「ありす氏!!」
「ひゃっ、ひゃい!」
いきなり指されたありすはビクッとするが、オロールはそのままニッと笑みを浮かべた。
「なかなかやるな、だが覚えておくように! 世の中には君よりもさらに上がいることを! 君の腕もなかなかだがまだスキュルには敵うまい、なぜならスキュルは我が妹だからだ! うむ、我ながら完璧な論理だ」
「お姉ちゃん、せっかくありすちゃんがケーキご馳走してくれるのに失礼だよ。それに全然論理的じゃないし……」
オロールのジャージの袖を引っ張りながら、ひとりで悦に入る姉の姿にスキュルは恥かしがっている。
「私はありす氏の更なる精進を願っていって言ってるんだ、問題ないだろう? ということでこれはいただきっ!」
「あっ……こらオロール、フライング禁止っ。つーか日本刀でケーキを切ろうとするなっ。こらこらこらぁ……って。こうなったらウチらも行くよ、アリスッ!」
「アイサー、リン隊長どの。今こそ元祖マスコットキャラの底力をぉぉぉっ!」
「私も援護するです」
飛び出すアリスとリンの裏でフェリオもすかさずメガネを装着する。
ガシャッ、ギュピーンッ。
「ふっ、おもしろい。この戦い楽しませてもらおう」
そうして炸裂するオリガン三人娘の華麗なるジェットストリームアタック! それを真っ向から受けるエア姉妹「落ちろっ、カトンボ!」「お姉ちゃん冬にカトンボはいないよ」、さらに「えへ、いただき!」「……意外と速いんだ」いち早くドラゴンフライユニットに換装したイニィを前にアロアがおもむろにナイフを抜く。「喧嘩は駄目デスよ皆さん」「アリスさん、リンさん、やめてくださーい(汗)」それをG菜とキセアが必死になだめようとする。
「あらあら、みんなせっかちねぇ」
戦場と化したテーブルから遠ざかりながら、セレナがちゃっかり確保していた自分用のケーキを口に運ぶ。
「ふっ、たまにはいいだろうさ。どれ私もうまいケーキをいただこう」
「あーん、それ私のよぉ」
セレナの確保した分を失敬しつつ、フィリスもケーキを味わった。
「みんなーっ、まだまだたくさんあるから慌てないで〜」
その騒ぎに苦笑しながら、ありすは自分のケーキが好評で嬉しそうだ。
「むぅぅぅん、糖が回ったっ!」「カトンボ、カトンボー。見つけたぞ、貴様がカトンボかっ」
「違うよ。イニィのDFユニットは飛龍だよ?」「お姉ちゃーーーんっ」「みなさん、デスからここは仲良く……あっ」「ふん、この程度か?」「フェリオ、今こそ貴方と決着を……」「パーティー行かなあかんねん」「アリスさんっ、リンさんもっ! キュィィーン……フォォォォォォォォォォォ!!!!」「うわぁぁぁぁっ!?」「キセアッ! まさか暴走?」「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ〜いです〜ッ」「蜩が、啼いている……」「カチューシャ起動。デハ、情報ヲ書キ換エマス」「なんてインチキッ!?」「まさに外道―――っ!!!」
もはや収集のつかない会場の騒ぎ。もとい狂乱。
それを片目に、ひとり隅っこでゼリスはケーキを茶請けに日本茶を静かにすすりながらポツリと感想を述べた。
「バカばっかです」
さすが。ここで求められるネタと、この作品の方法性を良く理解していらっしゃる……。