エクス・スラッシャーズ〜船上のmerry苦しみます〜第2弾
神城蒼馬さんの作品です♪
すずの り ずむに ひかりのわ がまう
♪
「はーい、ここでおっ楽しみターイムッ! 定番定石お約束のプレゼント交換の時間だよ♪」
みんなケーキも食べ終え人心地ついた頃を見計らって、おもむろにアリスが進み出た。
「おっ、待ってました」
「楽しみですね〜、リンさん」
「そういうキセアも、自然と頬っぺたが緩んでますよー」
「えっ、そうですか?」
「そうそう、うりゃー」
「いたいれふりんふぁん、ふぁめてくらふぁい。らめぇ〜」
リンに頬っぺたを引っ張られ、キセアがジタバタする。そんなふたりをフェリオがあきれ半分に引っぺがす。
「こら、いいかげんにしろ。いつまでもジャレてたらプレゼント交換ができないだろう」
「ちっ、メガネモードのままか。はいはい、それで誰がどのプレゼントもらうかどうやって決めるの?」
そのリンの質問にはフィリスが答える。
「心配するな。アリスとの打ち合わせで私がすでにピッタリなものを用意してある。G菜、イニィ!」
「合点承知!」
フィリスの呼びかけにG菜とイニィが答える。ふたりは掛け声ともに会場の奥に運び込びこまれていた装置の布を外す。中から出てきたのはよく福引などで使われる抽選機だった。さらにセレナがメンバーにカードを配る。5×5四方に数字が書かれた、俗にいうビンゴカードというやつだ。
「これを使って今からビンゴゲームを行う。ビンゴになった者には自分の好きなプレゼントを選ぶ権利が与えられる」
「つまり、最初にビンゴになった人から好きなプレゼントがもらえるってことだね?」
リンの確認にフィリスが頷いた。この場合のプレゼントとは参加者がそれぞれ持ち寄ったものである。品物の形状から大きさこそ違うものの、綺麗に梱包され中身がなんであるか分からない。唯一分かるのは自分で用意したプレゼントだけという寸法だ。
「よーっし。そういうことなら絶対1番になるもんね♪」
ガッツポーズを取りながらアリスが意気込む。他のメンバーも同様だ。中身が不明とはいうものの、やはりみんな良さそうなものから選んでいく訳で、いいものが欲しいなら早く選べた方が有利なのだ。
「ふふん、あたしも負けないよー」
そういってリンも唇をなめる。リンの中ではとにかくアリスには勝ちたいと対抗意識が燃え上がっていた。と、そんなヒートアップするリンの肩を誰かがちょんちょん叩いた。
「何? 今戦略練ってるとこなんだから」
ビンゴに戦略が成り立つのかどうかはこの際おいて置くとして、振り向いたリンの先にいたのはゼリスだった。
「あの、ちょっといいでしょうか?」
「何々? リンさん流必勝法なら、ゼリスと言えど教えてあげないよ?」
「あの、それはそれでいいのですが……」
「じゃあ何さ? タッグフォーメーションの誘いなら喜んで受けるから。ふっふっふ。ゼリス、お主も悪よのう」
「いえ、そうではなくてですね……」
不適な笑いを浮かべるリンに、ゼリスはビンゴカードを差し出しながら言った。
「それで、これで今から何をやるのでしょう?」
「……へ? ってあんた、ビンゴ知らないのっ?」
リンに逆に尋ね返されたゼリスは目だけ動かして一瞬あたりをうかがうと、再びリンを見つめながらコクンと、小動物的な動きで小さく頷いた。うほっ、萌。
「あー、ゼリスかわいいようー。まさかそんな手で来るとはおじさん思わなかったよ。こ……これは! お持ち帰りぃ」
ゼリスの仕草に脳天直撃されたリンは、興奮するままゼリスを抱きしめようとした。
「何やっとるかこの娘は!」
「リンさん、だめ。だめなの〜」
ボカッ
「うっは、脳天直撃ぃ」
リンの頭にアリスのハリセンとありすの「はいぱーはんまー(と書いてある大槌)」の連続攻撃がクリティカルヒットし、リンはぶっ倒れた。
「リン、またあんたはっ。キセアだけでなくこんな小さな娘にも手出して!」
「リンさんっ! そういうことはダメのダメダメだよ〜」
ぶっ倒れて頭の上でヒヨコが踊っているリンを見ながら、アリスはやれやれと思った。
一方のゼリスは訳が分からなかったようで、相変わらずキョトンとしていた。
その後、ビンゴゲームによる抽選会は順調行われた。ルールを知らなかったゼリスはキセアが協力することで無事抽選会に参加することができた。
そしてメンバー全員が自分のプレゼントを選び終え、パーティーはいよいよそれぞれのプレゼントお披露目へと移行した。
ちなみに1番になったのは――。
「すごいですね、ゼリスさん。1番ですよ、1番!」
「いえ。キセアさんからデータリンクでビンゴに関する情報を教えてもらったおかげです」
「それにしてもすごいよ、ぜっちゃん。さすがだね♪」
「いわゆるビギナーズラック≠チてヤツですね」
そういうゼリスもキセアやありすから祝福されまんざらでもない様子。ちなみにブービー賞はぶっ倒れていたリンだった。
「なんでじゃーっ!?」
リンが手にしているのはタワシだった。一応リボンでラッピングされているものの、他の誰もが選ばなかった確信的「ハズレ」だ。
「コレ中身も何も箱にすら入ってないじゃん。ていうか誰じゃー!? こんなもの持ってきたのはっ」
「あたし」
きっぱり答えたのはアロアだ。アロアは意地悪な笑みを浮かべながらリンの肩を叩く。
「やっぱりこういうあからさまなハズレがあった方がおもしろいじゃない? まあ、本当はフェリオあたりが引き当ててくれるのを期待してたんだけど……。まあ、ご愁傷様」
そういうアロアは自分のプレゼントである凝った造りの懐中時計をさり気なく手で揺らす。センスから考えると、きっとセレナあたりが持ってきたものだろう。
ちなみに他のメンバーがもらったのはキセアが手編みのマフラー、フェリオは高価そうなティーセット、アリスは限定機種のスマートフォン(最新式の携帯情報デバイス)など、リンからすればどれもうらやましいものばかりだ。というかタワシに比べればそりゃみんなマシだろう。
中には変わったものを引き当てた者もいて、G菜の前にあるプレゼントは古い骨董品の壷だった。
「これはイイものなのでしょうカ?」
「ふむ、これは北宋か? いいのものだろう」
困った顔のG菜の前にフィリスが歩み出て壷をピンッと弾いた。全員が納得するほどのいいものだった。
さらにイニィにはパンダの抱き枕、セレナはガーデニングセット。スキュル、オロールのエア姉妹はそれぞれアンティークの飛行帽とモデルカーをゲットしていた。また会場の片隅ではフィリスが手にしたオロールのブロマイド写真を前に絶句している。
内容に差はあれど、皆素敵なプレゼントを手にしたようだ。――リンを除いて。
「落ち込まないでくださいね、リンさん。タワシだってお掃除とかいろいろ役に立ちますよ」
そういってリンに慰めの言葉をかけてくれるありすの両手には、大きなうさぎのぬいぐるみが抱えられていた。
……さてここで読者への挑戦状を叩きつけさせていただこう。今回のプレゼントはメンバーが持ち寄ったものだが、タワシを除く他のプレゼントは誰がどれを用意したのか推理してくれ給え。期待しているよ、モニターの前のワトソン君。まあ、ヒントはほとんどないがな。わはは。……などと痛い文章を書いているうちにあることに気がついた。まだメンバーの中でプレゼントを開けていない者がいる。
リンもそのことに気付きそのプレゼントを開けてない人物に詰め寄った。
「ゼリスッ。あんたの当てたプレゼントの中身はっ? いったい何なの?」
ビンゴで1番になっておきながら、ゼリスだけまだプレゼントの中身を確かめていなかった。そのゼリスの元にあるプレゼントの箱は他のものに比べ一際大きく、ゼリスの背丈より大きい。ちなみにこれこそが全員が狙っていた今回の目玉だったのだ。
「わたしも何が入ってるのか気になるな。早く開けようよ、ぜっちゃん」
「はい、分かりました」
ありすに催促されゼリスがその大きなプレゼントの元へ歩いてゆく。それにしてもこの箱は高さで150cmほどはある。いったい中身はなんなのだろう?
「というかあんな大きなプレゼント誰が持ってきたんだろ。アリス、あんた?」
「知らないよ。セレナさんかイニィじゃないの?」
「私じゃないわよ。それにしても大きいわねぇ」
「イニィが持ってきたのは、あれじゃないよ?」
他の面々も誰もが首を振る。ありすもさっき聞いたときにあれは自分の用意したプレゼントじゃないと言っていた。
おかしい――。
「ゼリス。確認しておくけど、それってあんたが自分で用意したプレゼントって訳じゃあないよね?」
リンは嫌な予感がしていた。……それは、まさかこの作品のオチはゼリスが自分のプレゼントを自ら引き当てるという寒いものだったということですかー?
「そんなはずないでしょう」
……あう、ゼリスっち。そんなジト目で睨まないでよ。ちょっとボケただけじゃん。
「誰がそんなボケ好き好んでやりますか。しっかりしてください」
ゼリスの言葉はリンには半ば予想通りのものだった。このパーティーの参加者は全員で13人。プレゼントは参加者がひとり一個ずつ用意していて、その内12個はゼリス以外が用意したもの、すでに当選者の手に渡っている。そして今ゼリスの前にあるプレゼントはゼリスが用意したものではない。
つまり――。
「それは無いはずの14個目のプレゼント。参加者以外が用意した偽物だ!」
フェリオの言うとおり、これはありえないプレゼントだった。いつの間にか紛れ込んでいたあるはずのないプレゼント。それがそこにあるということはそれを用意した人物、参加者以外の贈り主がいるということだ。その人物――仮にX氏と呼ぶことにしよう――は何者なのか? 何の目的があってプレゼントをすり替えたのか、そもそもプレゼントの正体は一体何なのか。少なくとも好意的な内容である可能性は低いような気がした。
どちらにしろ、この状態ではプレゼントを開けるにはあまりに危険性が高い。
「ちょっとストップッ! ありすちゃん、キセア。それ開けるの待って!」
リンが叫ぶ。その時にはありすと手伝っていたキセアのふたりが、ようやく見つけた紐を引っ張って箱を開けるところだった。
突然叫んだリンにありすとキセア、それにゼリスがキョトンとしている目の前で、プレゼントの箱が音を立てて開いた。
薄煙と共に、開いた箱の中から一堂の前に姿を現したのものとは――。
「これって、私ですか?」
思わずキセアが呟く。キセアの言う通り、箱の中から姿を現したのはキセアそっくりな外見をした少女――いや、そっくりの人形だった。ただその人形の着ている服は、本人と違いサンタをあしらったコスチュームで、胸の部分にはご丁寧にも大きく「DANGER(危険)」の文字がつづられていた。
「き……"危険なキセアたん人形=c…」
アリスがそのプレゼントの正体を口にするのと、辺りを猛烈な煙と閃光が包みこんだのは、ほぼ同時だった。
「に、逃げろーっ」
そう叫んだのは誰の声だったか。そんなことを確かめる間もなく、辺りに響く強い振動と爆音と共に、アリスの視界と意識はブラックアウトした。