小説置場二戻ル。


寝覚月

「ぁ…? …は、ああっ!!」
 元々練習着から着替えた寝間着のような簡単な着物だったので、その襟元は容易に白哉に割って入られた。するりと侵入した手は冷たく、熱く火照った恋次の体の神経を敏感にさせる。

 酒に付き合え。とだけ言った白哉はそれ以上何かをいうことをせず、恋次も言うべき言葉が見つからなかった。
 どうして。とか、何を。とか、考えればいろいろ言葉はあったのだが、如何せん恋次も酔いの覚めない状態であったし、先ほど送り込まれた熱い液体が体を否応なく火照らせてしまい。
 恋次は自分よりも幾分小柄なその体に身を委ねてしまっていた。

 先ほどまで寝ていた蒲団に再び仰向けに転がされ、見えはしないがそこに白哉が覆いかぶさっているのだろう。
 大きく割られた襟元で、胸は露になり、その上を冷たい手が這っている。それは愛撫ともまた違い。
「あ、んっ」
 ただ胸を縦横していた手が、恋次の乳首をそっと摩る。それだけの刺激に恋次は、甲高い嬌声を漏らしていた。
 その反応が良かったからか、白哉の指は乳首を摘み捏ねるような動きをする。
 そしてもう片方の手は、器用に腰紐を外し、着物を肌蹴させていく。だんだんと外気に晒されるが、恋次の体は一向に冷える気配を見せず、冷たい白哉の手は火照った体に心地よく。
 体に纏わり付く着物が全開になり、その表面が露になったとき、一瞬恋次の上から白哉の気配が離れた。 と思ったらまたすぐ戻る。
 と同時に、部屋全体が仄暗い暖色の光で包まれつつあった。
 灯りは蒲団の足元の方においてあり、白哉が恋次に覆い被さると、恋次は白哉の影に覆われるようになる。白哉の表情は逆光になり、恋次にはよく見ることができなかった。
 だが、部屋全体を包む光でようやく、恋次は白哉を本人と確認することができた。
「朽木隊長…」
 熱に浮かされたように名を呼ぶと、白哉は手を体に這わせたまま、顔を近付け口付ける。
 顔が近付くと、その整った鼻筋も、黒く澄んだ瞳も、陶器のような白い肌も、全てしっかりと見ることが出来た。だが白哉の表情はいつもと変わらず、凛としたもので。
 その表情で、深く口付けられ求められることに、恋次は頭の奥が蕩けるような痺れを感じていた。
「ふあ、…ん、っ」
 恋次だけが息が荒くなり、唇の端から時折漏れてしまう声とその喘ぐ息とが部屋に響いていた。それと、唾液の交じり合う卑猥な音とが。
 白哉は唇を深く合わせたまま、手を下へと這わせていく。片手は先ほども弄っており硬くなった乳首に、片手は腰に伸び、巻きついている下着の上から恋次の中心をなぞる。
 小さく硬くなった乳首を指の腹で揉み扱く。
 もう片方の手は、中心の形を摩り、片手と同じように優しく揉む動きをする。
「あ、あっ。は…あ」
 そしていつのまにか、中心を覆う布は外されており、白哉の手は直にそれに絡み付いている。その動きは完全な愛撫とは言えず、弄んでいるだけのような、恋次にとってもどかしい動きに他ならなかった。
 恋次は、自ら腕を白哉の背中に回し、僅かに腰を浮かせ白哉の行為を促すように腰を揺らめかせる。
 それに促されてか、白哉の手の動きが、恋次を高めるものへと変化する。
「ん、んっあ、ああ!」
 それは躊躇なく放たれた。もう、羞恥も惑いもなくなっていて。ただ頭の中に、酒の所為だと妙に正気な自分も恋次は感じていたが。

 気を放った後の体中を襲う倦怠感に浸っている余韻もなく、白哉の愛撫は恋次を休ませることがない。
 手の中に放った白濁した液を、白哉は恋次の太腿の付け根からその間に塗りたくる。
 そして滑った指先を恋次の後孔へと宛てる。
「えっ! ちょ、っとたいちょ…」
 またも批難の声は無言でかわされ、白哉の指は誰も開いたことのない奥まりへの入口を解し始める。
 気を抜くとすぐにでも指が中へと入ってきそうで、恋次は体をぎゅうっと強張らせる。
 そんな恋次に気が付いて、白哉は離れていた唇を再び合わせる。
「ん、うっ」
 白哉の舌は、恋次を深く味わうように口腔を味わう。絡められた舌が、恋次の奥の熱を燻らせるようで。
 一瞬体が弛緩した瞬間に、白哉の指がするりと恋次へと入ってくる。
「あ、あ!」
 奥から侵入してくる白哉の指という異物に、恋次の体は自然に慄く。痛みはないが、胸の下が押されるような圧迫感があり、苦しい。
「力を、抜け」
 そう、白哉に低い声で耳元で囁かれ、体の芯がゾクゾクとなる不思議な感覚に襲われる。
 と同時に指はぐっと奥深くまで入り込んでくる。
「あ、ゃあっ!」
 入り込んだ指先が、恋次の奥で蠢く。小さな動きでも敏感なそこは、強い刺激となって恋次の体を震わせる。
 暫く中を蠢き、入口を解した指はその後さらに本数を増やされ恋次へと侵入してくる。
 時間としてはゆっくりとした行為だったが、恋次にとっては性急以外の何者でもなく、時に後ろが引きつる痛みも感じた。怪我などの痛みには慣れてはいたが、そこの痛みは初めての箇所で神経に直に触れてくるような感覚がある。
「も、もう、やめて…ください」
 息も切れ切れにそう伝えるが、聞き入れてもらえるはずもなく。
 唾液と恋次の放った液とで滑らせた指は、恋次の中を蹂躙し、卑猥な音と共に引き抜かれる。それでようやくほっと息のついた恋次だったが、替わりにそこに宛がわれたのは、指などと比較にならないほどに大きな質量のもの。
「ひッ…!!」
 それが何かを本能的に悟り、恋次は先ほどよりも大きく体を緊張させる。下半身はがっちり白哉に絡めとられていたが、自由な腕を使い白哉から逃げ出そうとする恋次。

「恋次」

 そんな恋次を両腕できつく抱き締める。
「隊長…今、名前…」
「恋次」
 何度も名を呼び、白哉は、恋次に口付けを落とす。
 それは甘く、優しく。両頬を掴まれ、体を密着させ、そうしてされる口付けは恋次の体を蕩かせていく。そのキスが甘く、恋次は知らず離れまいと自らも白哉の背に腕を回し、自らも舌を絡ませる。
 口は重ねられたまま、白哉は恋次の両足を大きく広げ体を割り込ませた。
「ぁあ…っ!」
 緊張が解けたのを見計らい、白哉は宛がった自分自身を恋次へと突き刺していく。
 その大きさも質量も指とは全く異なり、痛みも苦しみもその比ではない。ただ、痛みで苦しむ恋次を白哉はあやすように口付けを重ねる。
 舌を絡ませ合いながら、ゆっくりと、しかし容赦なく恋次に入り込んでくる白哉。
「う、…っふぅ」
 深く根元までがっちりと恋次に突き刺した白哉は、その動きを止め恋次の息が落ち着くのをしばし待つ。
「…恋次…」
 恋次は耳元の白哉がやや息を荒げているのを聞いて、瞬間自分の痛みも忘れる。
 中にいるのが、白哉だと。
 自分を抱き締めているのが、白哉だと。
 どうして今更そんなことを考えるのか、自分でもよく分からなかったが。
「…あ、あっ、たいちょ…う」
 ただ恋次は、熱に浮かされるように白哉の体を掻き抱く。
 白哉は僅かに腰を浮かせ、中に入り込んだものを少し引き抜く。すると白哉を包む襞は吸い付くように白哉を追う。ほんの少しの動きであったが、それは恋次にとって十分すぎるほど強烈で。
「もっと…気を抜け」
 恋次はただ必死なだけだったが、きゅうっと白哉を締め付けている所為で滑らかな挿入が出来ない。だが、僅かに漏れる白哉の先走りで、幾分中が濡れてくるのが分かる。
「…抜くぞ」
「あ、ああ――――ッ」
 白哉は恋次から上半身を離し、両手を腰に当て、中に入っていた自分自身を一気に引き抜いた。
 そして離れる直前に再び差し込む。
 グッと奥まりまで刺さった白哉は、腰を揺らし容赦なく恋次を攻め立てた。
「あ、ああッ?」
 白哉がある一点を掠った瞬間、恋次の体がビクンと大きく跳ね上がる。それを白哉が見落とすはずがなく、同じ箇所を何度も突く。その度に恋次の体に電流が走ったような感覚が襲う。
 そこを突かれ擦られるたびに、体中に走る快感。
「アッアッ、アッアッア……ッ」
 突かれる度、喉からは意図しない高い声が漏れる。それと同時に苦しげな息も漏れ、その顔はしどけなく涙に濡れていた。
「…ア、も、もうっ…」
 おかしくなる。
 恋次には、もう白哉に後ろを犯されていることも、自分が強く白哉の背を抱き締めていることも、何も見えてはいなかった。
 ただ、体を貫く快感に、恋次の体は貪欲にその身を悶えさせ。
 激しく挿入を繰り返される、初めてのそこは僅かに血を滲ませていたがそんな痛みは欠片も感じられず。侵入され襞を擦られるその行為も、卑猥な音を響かせているだけ。
 ぐちゅっ
 白哉が腰を大きく揺らし、肌が強かに打ち合わされる。抱き締められた体に挟まれ、恋次の猛りも大きく、濡れる。
「あ、は……アアっ」
 おかしくなる。
 もう、何もかもがどうでもよく。




「…早く、クダサイよ…」
 四つん這いのまま、後孔に物欲しげに指を這わせる。そこは十分白哉により解され開かれており、白い液を滴らせてヒクヒクと動いていた。
「アンタがこんな体に…」
「私が…なんだ?」
「あッ!! …あぁっ」
 恋次が言い終わる前に、白哉はがっちりと恋次の腰を掴み自らを捩じ込む。その早急な挿入に、それでも痛みを感じなくなるくらいにはなっていた。
「こ、こんなっ……カラダにっ、しやがってッ…あ、ああッ!」
 ぎゅうっと敷布を握り締め、言葉とは裏腹に自らも腰を動かす。
 背中をつうっと滑る白哉の指に、ゾクゾクっと体を戦慄かせ、白哉が食い込んでいる孔がきゅうっと締まる。
「…自分の体だろう?」
 白哉はゆっくりともどかしい様な挿入をしつつ、耳元でそう囁き、耳を甘噛みする。


 もう始まりがどうだったか、なんて覚えてはいない。
 ただ、今あるこの快感だけが現実で。



 目が覚めたら、全てが夢かも。
 しれないけれど。


小説置場二戻ル。