下肢帯と下肢
骨盤骨骨折
先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全症
概要 : 生下時に特別な外傷や感染と関係なく、大腿骨頭が関節包をかぶったまま寛骨臼外に脱臼(関節包内脱臼)したものをいう
臼蓋形成不全症は臼が浅く臼蓋が急峻なもので、大腿骨頭位は正常であったり亜脱臼位をとる
発生頻度は出生1000に1の割合とされ1 : 5〜9と女児に多い
原因は遺伝説、関節弛緩説、子宮内肢位説、生後の環境説等があるが、原因は不明とされている
症状 : 臨床所見は年齢によりその特徴は異なる
新生児〜乳児期 : オルトラニィ Ortolani テスト、バーロウ Barlow テスト陽性、テレスコーピング Terescoping サイン、アリス Allis 徴候陽性
個人差・性差はあるが開排制限、大腿骨頭の外上方偏位(正常では大腿三角のほぼ中央に触れる)大転子がローゼルネラトン Roser-Nelaton線より高位にある。X線では臼蓋形成不全が確認できる。鼠蹊皺壁、大腿皺壁の左右差
幼児期 : 処女歩行の遅延、弾性の墜落性跛行、アヒル様歩行、トレンデレンブルグ Trendelenburg 徴候陽性
治療 : 早期発見、早期治療が原則。リーメンビューゲル Riemenburgel 装具(RB装具)で整復位を得られない場合は、オーバーヘッドトラクション overhead toraction を行う。その他の保存的療法で整復位を得られない場合は手術的療法を行う
先天性股関節脱臼の検査法
アリス Allis 徴候 : 股関節と膝関節を90°屈曲し膝頭を揃えた時に患側は短縮して見える
オルトラニィ Ortolani テスト : 股関節を90°屈曲し膝関節も屈曲位に保持し股関節を開排し大腿を下方に押し下げるとともに脱臼大転子を押し上げるとクリックを伴って整復されるかを確認する
バーロウ Barlow テスト : オルトラニィテストと同様な手技で大腿を押し上げるときに、股関節を軽度内転、内旋させて脱臼を誘発する方法
テレスコーピング Terescoping サイン : 大腿骨長軸方向へ突き上げたり、引き下げたりすると大腿骨頭の移動を認める
腸腰筋炎
ブドウ球菌が起因筋であることが多い急性の化膿性筋炎である。炎症を引き起こした腸腰筋による股関節の屈曲位は、腸腰筋肢位と呼ばれる。腸骨窩には圧痛、硬結、波動を触れる。脊椎カリエスでも腸腰筋部に膿瘍を形成するので、鑑別を要する
単純性股関節炎
特に認めるべき原因がなく、小児に起こる一過性の股関節の炎症、股関節の可動域は全方向に軽度制限される。跛行と痛みを伴う。安静によって数日ないし2〜3週間で治癒する
バージャー Buerger 病
長期にわたる喫煙と関係が深いとされる。20〜40歳の男性に多い。動脈の閉塞により痺れ感、蒼白、チアノーゼ、栄養障害、間欠性跛行、末梢の壊死、末梢の安静時痛等を起こすことがある。姑息的な薬物療法が一般的である。末梢壊死が進行する場合は切断することもある
分裂膝蓋骨
成人の膝蓋骨が2個以上に分裂しているもの、男性に多く両側がしばしばあり、3個に分裂していることが多い。無症状のことが多いが、痛み出した時のみ骨片を摘出する。他は保存的に治療する
膝蓋骨軟化症
概要 : 中年に多くみられるが若年者にも起こる。不安定性や運動時痛を訴える。変形性膝関節症等と違い、膝蓋大腿関節のみに強い変形を認める。発生原因は、形態異常や外傷等との関係が深いと考えられている
症状 : 階段の昇降時等で傷みの増強、膝蓋骨付近の圧痛やその付近の轢音
治療 : 保存的に安静固定、各種物理療法、手術的には保存療法で効果のない者等には、膝蓋大腿関節の適合性を高めるための脛骨の骨切り術が行われる場合がある
ベーカー Baker 嚢腫
膝窩に生じる滑液包炎で、膝窩に割りと大きな膨隆を触れる。中年女性に多いとされる。嚢包内の内容物を吸引したりする。繰り返し再発する症例には、嚢包の摘出が行われたりする
変形性膝関節症
概要 : 変形性の関節障害の中で膝は最も多い。高齢者の女性に多い。内側により強い変形をみる場合が多い
症状 : X線で内側の関節裂隙の狭小化や硬化像、骨棘をみる。初期は運動時痛、症状の強いものは関節液の貯留、運動制限
治療 : 保存的療法として、各種物理療法、運動療法、足底板の挿入等がある。症状の強いものや保存療法で効果のないものは、手術療法(骨切り術や、人工関節)の適応となることもある
膝内障
大腿四頭筋拘縮症
大腿四頭筋が、線維化や瘢痕化等によって膝関節の屈曲時に伸びが悪くなった状態。大腿四頭筋内注射によって起こることが多い。尻上がり現象、分回し歩行が特徴的である。手術をする時は慎重でなければならない
※ 尻上がり現象 : 患者を腹臥位とし、膝関節を伸展しようとするとある角度で制限され、それ以上伸展しようとすると患者の臀部が持ち上がる
※ 分回し歩行 : 大腿四頭筋の拘縮により膝関節が十分に屈曲できないために、患肢を外方へ振回して歩く
先天性内反足
概要 : 先天性股関節脱臼、先天性斜頚と合わせて、整形外科領域では最も重要な疾患である。男児は女児の約2倍の発生率で両側であることが多い。発生頻度は1000人に1人とされている。出生時に発見される
症状 : 尖足、距腿関節で内反及び前足部内転変形を示す
治療 : 本症例を発見したら1日でも早く治療を開始する
保存療法 : 矯正位でのギプス固定やデニスブラウン Denis-Browne 副子が用いられる
手術療法 : 保存療法で満足な結果が得られないときは、アキレス腱の延長術や腱の移行術が行われることがある。乳幼児でも約半数に何らかの手術療法が行われる
内・外反足
その他の内反足として、腓骨筋の麻痺により発生するもの。脳性小児麻痺等では痙直性内反足を呈することがある
先天性の外反足は殆ど報告がなく、足部の外傷後(下腿果部骨折等)の後にみられることがある
偏平足
概要 : 足底のアーチの低下をきたす疾患で、乳幼児偏平足、青少年期静力学的偏平足、痙性偏平足等がある
症状 : 変形をきたしていても無症状のこともあるが、外反母趾やその他の足部から、下腿の障害と密接な関係があるとされている
治療 : 足底板の挿入
外反母趾
概要 : 第1中足骨の末梢が正中方向に向き、基節骨と末節骨が一塊となり外反する。種子骨は脱転する。女性に多く先天説と後天説があるが、家族暦で証明できるものが多い。偏平足との関係が深いとも考えられている
症状 : 母趾のMP関節部内側の滑液包に機械的圧迫による炎症を起こす
治療 : 保存的に偏平足や外反に対する治療が行われ、効果がないときや始めから外反が高度な場合は、手術的に骨切り術や腱の移行術等が行われる
アキレス腱周囲炎
過度の運動、外傷後、或いは何ら誘因がなくアキレス腱部の疼痛、紡錘状腫脹、硬結を触れる疾患、安静や尖足位固定、ステロイド剤の局注等を行う
アキレス腱断裂
概要 : スポーツ外傷や転倒等によって起こる。また急激な筋の自家収縮によっても起こる。普段あまり運動をしていない中年者が急にスポーツしても起こる。損傷部位はアキレス腱の付着部や筋・腱移行部は比較的稀で、多くは腱の付着部より約2〜4cm 中枢側に起こるとされている
症状 : アキレス腱が完全断裂しても、長腓骨筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋等の働きにより足関節の屈曲(底屈)は可能であるが、爪先立ちは不能ある。またアキレス腱の断裂部には陥凹を触れる。トンプソン Thompson テスト(腹臥位で断裂側の下腿をつまむと足関節の屈曲が起こらない)陽性となる
治療 : 主婦等は保存的に尖足位ギプス固定されることもあるが、現時点では活動性の高い患者には手術療法が選択されることが多い
※ 最近では保存療法も工夫され格段の進歩をみているので、情報には常に注意していたい