陶芸Q&A
窯・焼成
Q2.本当に綺麗な油滴はそれこそ本当に美しく、見ていて飽きないのですが。油滴は還元焼成なのでしょうか?だとしたら電気窯では無理でしょうか・・。 油滴とは関係ないのですが、落ち葉は事業系ゴミとしては出さずに、ため込んで灰にして釉薬をつくっては?
A2. うううううぅぅぅぅっぅ。辛いっす。何が辛いって、この手の結晶系釉薬の話を分かり易くするのは、1才の子供に相対性理論を理解させるくらいの難しさがあるっすよ。それから、根本的に、間違っている所があるっすーーー。で、頭を抱えていても仕方がないので、まず、訂正から先にしましょう。
油滴天目には、酸化と還元の両方があります。有名なのは酸化(OF)の方で、昨今のラスター天目というやつが還元(RF)であることが多いですね(こっちの方が綺麗に見えるからだと思うけども)。それから、電気窯は還元ができないと思っていらっしゃる方が非常に多くて困るんですが(この前も、その手の質問をうちの陶芸教室に電話してきた人がいる。会員でもないのに、何故?)、電気窯でも還元はできます。要は窯内の雰囲気を酸欠にすれば良いのですから、方法はいろいろありますが、一番簡単なのは、炭をいれて一酸化炭素を発生させることですね。
それから、電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、完全な酸化焼成はできないそうです。いわば、中性炎といったところでしょうかね。ただ、限りなく酸化に近いので、結果、釉薬の色が酸化になります。
で、質問の回答なんですけども、油滴の話は、申し訳ないのですが別な発言とさせて頂きます。(かなり長い話になりそうなので)
尚、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。
「落ち葉の釉薬利用について」
落ち葉を、釉薬として使用できるだけの量を確保するには、一般事業ゴミとして出る落ち葉の量では、話にならないと思いますよ。私も、そう思って大学時代に、学校中の落ち葉を用務員さんからもらって作ったことがありますが、バケツ1杯分くらいしかできませんでした。しかも、ああいった木灰は、非結晶体にするための特殊な焼成法で作りますから、かなりの技術がいるんです。
それと、葉っぱは大抵、高熱灼減成分や珪酸分が多く、釉薬のカルシウム分として使用することは出来ないことが多いようです。(実際、釉薬用の灰は、木の幹を焼成した物です。)また、木はその生息地や木そのものの部分(木の下の方の葉と上の方の葉でも違います)、時期によっても非常に成分比率が異なるので、常に一定のクオリティーを確保することができません。その為、釉薬に使用するには、それだけのクオリティーを確保するために多量の灰を精製し、また、蓄積・混成させなければなりません。たびたび、テストピースを作って釉調をテストする必要もあるでしょう。従って、事実上、事業ゴミの落ち葉を釉薬の灰として使用するのは、無理と考えた方がいいと思います。
もちろん、趣味として、同じクオリティーを確保する必要がない場合には、それほどの心配は必要ないでしょうけども。
ここまで読んで、もし頭が痛くなるようでしたら、油滴の話はかなり頭が痛くなりますから、覚悟が必要でしょう。もう少し考えて、なるべく頭が痛くならないような説明を次回、いたしますので、少々、お待ち下さい。
Q4.電気窯の横からガスの炎を入れたりして還元焼成したり出来るという話は聞いたことがありますが、窯の損傷を気にしてしまいます。電気窯は熱源として使用しているカンタル線が、昇温の際に熱分解してガスを発生させるので、云々…
ふぅん、そうすると、この線は窯を焚くたびに熱分解を繰り返し、熱効率も悪くなり、ついには切れちゃうってことなんですか?
又、電熱線の熱は輻射熱が主で、登り等の窯は直接炎が発生している・・・。この違いが焼成に於ける反応に何か差を与えているように思えてならないんですが。
A4.線がすぐに切れるっていうことはないと思いますけども、線が細くなるということはあるでしょうねぇ。一応、うちの陶芸教室では1カ月に4〜6回のペースで窯を焚いて、5年を目途に線の張り替えをしていますが、それでも、「かなりきてますねぇ。」と窯屋さんには言われます。
確かに熱効率は、1年目と2年目ではかなり差が出ると思いますし。季節による温度、湿気等の差を考慮しても、やはり、線の劣化によって1250度あたりの温度域までいく時間は徐々に長くなるようです。
あ、そういえば、私がいた大学の窯は、20年という、妖怪化してもおかしくない年期の入った窯でしたが、切れてました。窯を焚くごとにブチブチ切れるので、ガスバーナーで線を焼いて修理していたのを思い出しましたから、やっぱり、切れますね。線。それ以前に、線が前に飛び出してくるようになりますけどね。
それから、電気窯で酸化と還元のどちらが窯を損傷するか?ですが、これは、非常に難しく、極論で言いますと、酸化の方が電熱線の消耗が激しく、炉壁の消耗は少ないです。逆に、還元は炉壁の消耗が激しく、電熱線の消耗が少なくなります。従って、どちらで焚いても、1000回くらいが窯の限界のようですね。(もちろん、焚くことに関してはそれ以上できますが、昇温しずらくなったりという弊害が出てきます。)あと、電気とガスとでは、釉薬の上がりは全く違います。ガス窯専門に作っていらっしゃる会社の方とお話をしますと、「電気窯みたいな、でかいトースターとは違いますから」と言いますから、やはり、電気窯はでかいトースター式の焼方になるんでしょう。この言葉から、何となく違いは分かりますね。
まぁ、つけ加えると、電気はおっしゃるとおり輻射熱(対物放射)ですから、外側の陶器が発した熱が伝わって、中の陶器に熱を伝えるという形になります。(これで、焼むらがなくなるわけですが。)つまり、ガスのように陶器の隙間を縫って炎が中の陶器に当たるのではないですから、焼具合は当然、変わってくるでしょう。
Q8.備前焼って、肌が、茶色いのと、赤いのとありますけど、どう違うのですか?
A8.「色が違います」としか言いようがない....
ふざけてるんじゃなくて、僕にも説明できない。土と温度と...そんなこと言ってたらやきものはすべてそうですから。....説明にならない。
基本的には酸化・還元の雰囲気に寄るところが大きいと思います。備前の土の中には多量の鉄が入っていますが、その鉄が還元雰囲気になると土の表面に析出しやすくなります。(逆に、酸化は析出しにくい。)また、鉄は還元だと「酸化第一鉄」という鉄になり、これは黒い色をしています。酸化の場合は「酸化第二鉄」という錆色をした赤い鉄色になります。炎は、場所にって、この雰囲気の変化がでますし、窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があったりします。それで、その雰囲気に応じて鉄の析出や性質が変化しているのではないか。と言われています。
また、ついでですけども、備前では藁を器に撒いて「火襷(ひだすき)」という赤い線をだしたりしますが、これも土の中の鉄を、藁が持つアルカリ分によって表面に析出させるという効果によるものです。
Q11.還元落とし、とは・・・
A11.通常の還元の窯焚きは、昇温期に還元をかけ、目的の温度(物質温度)近辺になったら、還元を止め、その後、ねらしなどの操作をした後、火を止めて、冷却期に入ります。しかし、還元落としは、この冷却期まで窯の中を還元状態にするように、操作をする焚き方です。目的は様々ありますが、主に、この還元落としをすると、金属のラスター作用が助長されるという特徴を狙ったものが多いようです。(つまり、結晶釉系の釉薬などでは釉表面に金属分子が析出・結晶化しやすくなるわけですね。)鉄やマンガン、銅などの調合を上手く行い、この還元落としをかけてやると、まるで金を塗ったような黄銅鉱(たぶん)が出るときがあります。私は、一応、それを「ブロンズ釉」と呼んで使っています。
Q18.窯も場所によって酸化と還元の差が出来る部分があると言うことですが、では、一度、登り窯を焚くと、窯出しの時に、茶色い備前も、赤い備前も、同じ窯から出てくるのですか?
A18.出てくるのです。ついでに灰色(サンギリ)の備前も同じ窯から出てくるのですよ。穴窯だと、こういうことは良くありますよね。登り窯は穴窯よりも安定性が高いですが、部屋によって調節かけると、出来るでしょうねぇ。
Q27.二度焼きで色ムラが直るのは「焼もどし」
A27.色ムラが直るのは「焼もどし」って言って、コロイド結晶というものが低温で焼くことに因って再結晶が起こるためだと思います。辰砂釉に代表される銅赤釉は、このようにして焼き戻すことがあります。
Q61.楽焼きに挑戦!本焼の方法は?
A)窯を予め800度位にまで上げておき→施釉作品を長火箸で挟み窯に入れ(火箸で何処を挟むのか、火箸の使い方が悪いと釉剥がれが起るので簡単に”挟む”と言っても具体的に良く理解出来ないのです)→再び800度まで昇温→窯を開蓋長火箸で作品を取り出し(水冷の度胸はないので空気中で冷ます)このような手順。
B)予め作品を窯詰め→常温から150度/1時間で昇温→800度で電源断窯を開扉放置冷めるのを待つ。(A、B共私の独断と偏見の計画です。念のため)
A61.方法は,AでもBでも構わないと思いますが,むしろ,窯の状態との相談になりますね。
つまり,御使用の電気窯の耐火レンガが,どれだけ急冷に耐えるかという問題です。本焼き用の電気窯は,一般的にSK32という耐火レンガを使用しますが,これは,先の100度/1時間で昇温し,自然冷却することを前提に使用するものです。
楽用窯は,これよりも番数の小さいレンガを使用し,強制冷却でもレンガが割れたり,窯内に亀裂が入らないようになっています。
ただし,作品をサッと取り出して,フタをパッと閉め,窯の中が序冷になるようにすれば,差ほど問題はありませんから,御使用の窯が高温用のものであれば,とにかく序冷するか,速攻で作品を取りだす段取りをかなりしっかりとやっておく必要があるでしょう。
それから,800度まで温度を上げた窯に作品を入れるのは,非常に危険です。水蒸気爆破で作品が破損する危険も高いですし,800度という温度は,本当に熱いです。私は,顔が焼けるし,鉛の気化した空気を吸い込むのも嫌なので,溶接用の面を被ったりします。(小心者>自分)
それに,楽の釉は,パイロメーターでの対空気温度で測定できるものではなく,あくまでも,肉眼で熔けたかどうかの状態を確認していかなけえばなりませんので,何度も,のぞき込む必要もあります。
以上の事から考えると・・・
まず,作品を窯に入れ(常温),昇温し,約800度になったら,何度か窯の中の釉の熔け具合を確認する。熔けを確認したら,序冷するっていのが,一番簡単。しかし,それでは,単なる上絵と変わりませんから(笑),火箸で取り出す方が,ダイナミックですね。
また,作品は,空冷よりも,むしろ,水冷の方が安全ですし発色も良好ですから,水冷をお薦めします。いきなり冷やすと,作品が割れるような気がしますが,そもそも,素地が焼締まっていないので壊れることがないし,水に入れると,作品の熱で自然と水がお湯になり,適当に序冷状態になるんです。だから,大丈夫。他に,ホースで部分水冷するとか,おが屑に入れて強制還元をかけるとか,いろいろ方法があるんですけどあらためて。
Q82.焼成のことですが,時間をかければかけるほど,しっかりと土がしまるのでしょうか?
A82土の成分の殆どは、ご存知のようにガラスの元(珪酸)です。これが、αからβ、そしてムライトに変化し、長石が熔けて焼結現象というものが起こり、素地の隙間が埋まってガラス化します。これを、陶芸では「焼き締まった」と表現します。
焼締まりは、窯の温度というよりも、土に与えたカロリーの大小によって変化します。
古代式の穴窯などは、構造上、最大でも1150度内外の温度までしか出ませんが、その温度を3、4日持続させることで、しっかりと土を焼き締めます。私が実験したところでは、1260度まで単純に温度を上げ、火を止めた状態は、1230度で2時間弱キープをかけたものと、ほぼ同じ焼締まりとなりました。
という事で、基本的には土を焼き締めてガラス化すれば、素地の隙間がなくなる為に水漏れはとまると考えられます。ガラスによる被覆作用によって無理矢理土の表面の隙間を埋めたものが、いわば釉薬ですね。
Q97.ガス窯でブタンガスボンベが沢山ありました!
A97.プロパンでなくブタンを使用する最大の理由は,たぶん,安いという事でしょうね。ただ、気化させるための専用装置が必要になりますから,そのぶん出費はありますが,火力そのものはプロパン並ですし安いですから,ブタンを使用する事も多いんだと思います。
ただし,ブタンはすぐに気化熱で冷えて気化しにくくなるので,プロパンボンベよりも沢山用意し,複数のボンベから少しずつ噴霧したり,切替えながら使用していきます。小さな窯ならば,沢山のボンベは必要ありませんが,窯が大きくなってくると,かなりの数のボンベを使用するようになりますね。
たぶん,沢山のボンベがあったのは,そのためではないでしょうか。
Q107.錦窯の水抜き
A107.大型窯の焼成初期に発生する水蒸気は、そのほとんどが窯が吸い込んだ湿気です。
まず、窯の水を抜いてから、土の水を抜く。これが焼成初期の鉄則で、近代の電気やガスの窯では、あまり意識されなくなりましたが、窯は非常に多量の水分を吸っています。窯は、器よりもずっと耐火度の高い土(煉瓦)で出来ています。つまり、焼き締まらないので、それだけ湿気を吸いやすいわけですね。
素焼きや本焼きでは、あまり慎重にはなりませんが、上絵の時などは、この窯の水蒸気が残っていると、間違いなく釉薬に白い水蒸気の膜がつきます。だから、上絵を焼く窯は、昔から錦窯として、通常の窯とは別に作られていました。通常の窯では、湿気を吸いすぎていて、クリアーな上絵の色が出ないためです。特に柿右衛門赤のようなものは、色合いの変化が激しいですね。
昔の窯ほど水分は吸っていない現代の窯でも、夏場などの湿気の多い時には、多少、窯を空焚きして水を抜いてやらないと、微妙に膜が出る時もあります。
Q109.前焼を焼くのに7日もかかるのは3日間ぐらいがあぶりにあてるからというのがありますが、備前の土って短時間で焼くと煎餅?やキレがでやすいためなんですか?
A109.備前焼の多くは、登り窯やあな窯などの窯を使用しますから、先に話をしましたが、窯を暖めるためというのが第一のように思います。
うちでは電気窯で備前の土を焼きますが、2日で焚いても、クラック大発生という経験は、ほとんどありません。勿論、焼き締まりが弱いので、水が浸みるという問題はありますが、私の場合、あまり水漏れは関係ないので。
合成備前土はさておき、いわゆる備前土というのは水切れがひどいんですよね。焼成中の水蒸気を吸って、すぐに割れるんです。隣に、乾燥状態の悪い作品を置いて焼成すると、焼成中に水蒸気を吸って、亀裂が入り、そのまま本焼きすると、バックリ割れますね。鉄分の多い土なので、高温で煎餅(クラック)が生じやすいという事もあるし、確かに難しい土だと思います。
それだけに、上手く焼けると、格段に格好良い焼き味になるわけなんですが。
Q113.還元について
A113.大抵、1250度内外で熔けるように設定された釉薬は、おっしゃる通りに1150度程度で反応は終わりです。極端に言えば、1200度あたりでガスを止めて、ガス抜きしても還元色は出てきます。
では、還元で焼き抜く事には、何の意味があるのか。というと、大きく分けて2つあります。
1つは、素地にどれだけの還元をかけるか。という問題です。最近流行の短時間焼成窯の根本的な問題点が実はここにあって、「本格的な還元焼成もできる」という唱い文句は、同時に「本当の還元は出来ない」という事でもあるのですが、そこまでメーカーは言いません。
つまり、短時間焼成、あるいは1150度以下での還元終了は「釉薬は還元の色になっても、素地の還元がかからない」という事なんですね。
ご存じのように、焼き物の色は、単なる釉薬の色ではなく、釉薬を透過して見える素地の色(素地の焼き色)や、素地中の金属が、どの程度釉中に流出しているか、というものが非常に重要になってきます。磁器などの場合は、特に、素地がどの程度還元の影響を受けているかで、白色が非常に変化します。
辰砂は、ガラス化が促進された方が色が強いと言われていますから、当然、素地もガラスかを促進させた方が良いのは言うまでもなく、ガラス化を促進させる為には、高温で焼き抜くか、還元状態を長くして素地や釉中のフラックスで反応を高めるか、というのがポイントになります。
もう一つの理由は、辰砂独特のもので、銅コロイドを作れるか。という事があります。還元で発色する銅の赤色(鶏血紅や牛血紅とも表現しますが)は、高温で銅がどれだけ小さな粒子になり、また、冷却中にどれだけ銅コロイドが発達するか、という事にかかってきます。還元は、銅そのものの色に関する事だけでなく、粒子の生成にも関係するわけです。
この粒子の分解過程で、還元を何処までかけておくかは、同時に、粒子をどこまで小さく出来るか、という事であり、仮に粒が粒が大きいままだと、大抵、銅は青や緑色の発色をしてしまいます。辰砂で赤と青のムラができるのは、銅コロイドが生成されていない、あるいは銅コロイドが発達しなかったという事に由縁します。
もっとも、いくら還元を長くかけても、冷却期に徐冷を怠れば、銅の赤色は出ませんが。
余談になりますが、還元落としという技法もあって、これは冷却期まで還元をかけるという技法で、銅釉の時に、うまく落とせると、亜鉛のようなメタリックな色を出す事もできます。
Q115.酸化焼成の急激な昇温と焼成時間について
A115.陶芸で使用する窯というのは、登り窯のような近代窯の場合、最大で4%程度。電気やガスなどの現代窯でも、せいぜい6%程度しか、熱を有効に使用できないと言われています。悪い言い方をすると、残った5%程度の熱ですら、焚き手が上手く調節できなければ、ただの熱の無駄使いという事にもなるわけです。
で、この熱の利用は、当然、窯の構造にあらわれるわけですが、この窯というのが、極めてデリケートで、しかも炎を使用する窯は、わずかな隙間(ミリ単位)の有る無しで、空気の流れが変化し、焼き加減が変化してしまいます。しかも、窯は焚く度に、微量ではありますがダメージを受けていきます。この時、わずかづつ受ける窯のダメージが、ちょっとした改造によって、数回分で受けるダメージを一気に受けてしまう事もあるわけです。
例えば、改造が原因で、煙道にわずかな亀裂が生じ、それが窯の空気の流れを変えてしまった場合、結構な致命傷になることもまれにあります。灯油やガスの窯は、ドラフトやダンパーなどの構造、いわゆる煙道の穴の大きさの調節で還元をかけますが、数ミリ程度の穴の変化で、窯の還元雰囲気はかなり変わります。まして、どこかに亀裂が入れば、窯の変化は相当なものになるでしょう。そういう意味では、改造は諸刃の剣とも言えるのかもしれません。
ところで、最近見た窯の広告で「2時間で1250度。1日2回焼けてお得」というものがありました。その窯を買ったという人の話を聞きますと、確かに2時間で昇温するそうで、小さな窯だからという事もありますが、事実らしいです。ただし、必ず作品は素焼きしておくことが前提で、更に、10回に1回くらいは、作品が破損するそうです。まぁ、それでも9回は成功するのだから、と考えれば御の字なのでしょう。
しかし、注意しなければいけないのは、この昇温はトーストを焼くのと同じで、芯まで焼いているわけではありませんし、全ての土、全ての釉薬で2時間本焼きが出来るという事でもない。という事です。
ある特定の土、特定の釉薬に限り、それが可能であって、例えば、淡雪のような長石単味の志野釉や、指ではじいた時にキーーンという済んだ音色がするほど焼きしまった磁器は、期待できません。また、昇温は、あくまでも空気温度であって、物質温度では無いことも付け加えておく必要があるでしょう。
もっとも、そこまでのこだわりがない方の為の窯という解釈も可能だったりするのでしょうが。
ま、それはそうとして、事実、表面を焼く事に関しては、短時間の焼成は可能であり、どこまで焼くのか、というこだわりが無ければ、現在の技術水準では2時間で1250度の昇温も大丈夫なようです。また、熱効率の更なる改善が出来れば、もっと短時間での焼成も可能なのだそうです。まぁ、短時間焼成に、どれほどの面白みがあるかというと、ちょっと疑問も感じるわけですがね。
最後になりましたが、1200度を越える温度で何度も焼かなければ、素地は、目に余る程の傷みはありません。ご友人の焚き方は、そういう意味では問題ないのではないかと思います。
Q116焼成時の還元のかかり具合
A116.色味穴から出る炎の事を、「ろうそく」などと表現しますが、ろうそくの立ち方というのは、一定というわけではなく、その窯の大きさや、色味の穴の大きさなどによって、異なります。
昔、韓国で焼き物をやっていらっしゃる方に、「そんな炎じゃ、還元かからないよ。」と言われて、思いっきりろうそくを立てたらば、先輩から「そんなにしなくても、還元はかかるよ」と言われて困った事があります。結果的には、先輩の言うとおり、思いっきりろうそくを立てても、今までの焼き上がりとあまり変わりませんでした。
たぶん、釉薬や土の還元がかかる程度には頭打ちがあるので、規定量以上に還元をかけてもしようがないという事なんだと、その時に思いました。
ただ、窯屋さんに聞くと、還元のかかりが良い状態の時の炎というのは、やはりある程度決まっているそうで、やや青みのある炎の周りに、薄い色のグレーの煤がまとわりついている状態なんだそうです。
登り窯のようなものは、青い炎というのは、まず出ませんから、あくまでも電気やガスなどの窯の場合だと思いますけれども、その辺を通常の還元の状態として考えれば、それよりも炎が赤く、長さが短ければ弱い還元。炎の根本が透明になるくらいで、長さが長ければ強い還元だと判断できそうですね。
Q117.酸化と還元で、窯はどちらが短命か
A117.基本的には、還元の方が短命です。耐熱性の煉瓦などは、還元の方が傷みが早いからですが、電気の窯に関しては、酸化の方がカンタル線の劣化が早いそうなので、熱線の状態からすると酸化の方が短命とも言えますね。ただし、熱線は張り替えがききますから、そういう意味では、やはり還元の方が短命なのかもしれません。
知り合いが買ったアメリカ製の窯には、「還元ならば10回程度焚けます。」という注意書きがあったそうで、20万円近く出して、10回しか焚けないっていうのはなぁ・・・とぼやいていました。勿論、酸化ならば、100回程度は焚けるらしいです。
あとは、(電気窯では当然駄目ですけれども)揮発性の釉薬の使用は、かなり窯の寿命を縮めます。塩釉などのような高温焼成で揮発させるものは、損傷が激しいようですね。しかし、窯の損傷を覚悟しても、塩釉などは、かなり魅力のある色が出るので、その駆け引きは難しいところです。
Q132.伏せ焼きについて
A132.別名を「被せ焼き」といって、サヤが発明されるまでは、この焼き方が多く行われていたようです。
現在でも、昔の西洋の薄手のティーカップなどでは、明らかに伏せ焼きだと分かるものを見ることができます。焼成後に、口辺部分にサンドペーパーなどをかけてなめらかにした後、金彩を施しますが、よく見ると、サンドペーパーを掛けた部分の光沢感が異なるので、観察してみて下さい。特に、西洋のものは、厚く金を施していないので(あくまでも、私が見たものは、厚くなかったんですが)、分かりやすいと思います。
また、伏せ焼きとはちょっと違いますけれども、東南アジアの野焼きなどでは、いまでも器は伏せて焼いていますね。
それから、口辺部の釉は、筆で塗る場合と、皿の上に釉薬を入れて口だけ浸ける場合がありますけれども、大抵は、筆で塗ります。
口を浸ける方法だと、どうしても器を持ち上げる時に、気圧差で内側の輪郭線が汚くなったり、釉溜まりが生じやすくなりますからね。
Q134.足つき皿の形がへたる理由
A134.大別して3つの要因があって、
1,土の締め方が悪い
2,本体と足のバランスが悪い
3,使用している土に対して、焼成温度が適切でない
となります。伏せ焼きは、上記の2番の打開策として使用されるものです。もし、1および3番の問題は解決している段階ならば、三平さんの伏せ焼きの方法は、非常に有効な手段ですし、やり方も合っています。ただし、特に3番に問題があるということになると、伏せ焼きをした時、今度は中央部が落ちるという現象が起こります。
これは、皿としては致命傷で、何しろ物が乗りません。その場合は焼成の設定温度を低くするか、耐火温度の高い土をブレンドする(または、違う土を使用する)などの処置を行うという事になるでしょう。また、どうしても、土を変えたくないし、温度も変えたくないという事であれば、メ土(とめつち)を使用するという手もあります。
メ土は、高温で焼き締まらない土で作った円錐形で(先を鋭利にするのは、作品に跡が残らないようにするため)、これを、皿の落ちそうな場所に立てて、へたりを防止するわけです。
最近では、加工済みのメ土も売っていますので、それを買うのも手かもしれません。(結構、高価ですが)
更に、メ土を装飾的に使用したいということであれば、貝メ(かいどめ)という方法もあります。アサリなどの、やや厚みのある貝の中に土を入れ、その貝の上に作品を置きます。貝はカルシウムなので、焼成でも熔けず、また、焼成後も、簡単に除去する事ができ、除去後の跡も貝の形が美しいというシロモノです。今でも、流下しやすい作品の高台などには、貝メが使用されていますね。
ただ、メ土にしても、貝メにしても、跡が残りますから、まったく跡が残らないようにするには、最初から、へたる率を計算して、それに見合った形を作っておくなどの方法をとる事になりますけれども、これは、かなり面倒なんですよね。
Q150.窯を焚く際に注意する温度域
A150.素焼き作品の場合500〜600度の硅石膨張時の温度域、1050〜1100度の釉薬反応域だけ、急な温度上昇を避ければ、意外と無茶な焚き方も出来るものです。ちなみに、硅石膨張時には素地の破損、釉薬反応時には釉薬の縮れやめくれが起こりやすくなるので注意が必要なわけですが、最近は土も釉薬もハイブレンドでそういう注意も必要なくなってきているようです。
また、素地の芯まで焼き上げようと思わなければ、窯の性能によっては3〜4時間程度で焚くことも出来るそうです。(私は、そんな早焚きはやったことがありませんが)
1時間程度で700度まで温度を上げ、2時間で1250度に達するそうで、こうすると釉薬も熔け、素地もそれなりに焼き締まるそうです。物理的に考えて、どうしてそんな事が出来るのか、私はいまだに理解出来ないのですが、実際に焼けている作品があるわけですから、可能なのでしょう。
Q157.2時間で本焼きが出来る短時間焼成窯
A157.窯および窯を焼成する事についてですが、素焼きさえしてあれば、2〜3時間で間違いなく焼くことができます。消火後、2時間で作品を取り出せ、冷め割れも、今回はありませんでした。酸化・還元両対応で、メーカー推奨釉薬以外の4成分調合の生釉でも、よく熔けており、いわゆるガス窯のすっきりとした色合いが出ます。耐久性についても、1日1回焼成で、少なくとも10年は使えるそうですが、劣化の激しいパーツが幾つかありますから、逐次、交換をするという事で耐久年数には耐えられる構造になっていました。(でも、これについては、まだちょ
っと疑問もあるんですが。)
但し、この窯。「とにかく焼成時間が短い」という以外は、ただの直炎式ガス窯です。炉壁の二重構造による蓄熱システムとか、穴窯式構造による扱い易さ、など、いろいろと理屈が付いていますが、焼いた雰囲気も扱い方も小さなガス窯そのものです。
あえて言うと、焼成が終わるまでピッタリと窯に付いて、分単位でガス圧を調節しなければならないというのが、私にとってはデメリットのように感じました。手数が掛かりすぎるんです。
通常のガスならば、ガス圧を調節するのはせいぜい5〜6回。電気ならばスイッチを入れ替える2〜3回です。サイリスタがあれば、ボタンを押すだけの1回です。
慣れれば、手数は少なくなるのかもしれませんが、それでも10回程度はガスコックをいじることになるでしょう。こういうのが好きな方は、問題ないのでしょうが、結局、手数に関わらず、焼き上がりは一緒ですから、短時間という事にこだわりが無ければ、私にとっては無駄に手数が多いのは考え物と言う事が出来ます。
更に、焼成が早い理由の多くは、窯の構造もさることながら、内容積と作品の詰め方(作品と上の棚板は4cm以上開ける、ツクは外向きに必ず置くなど)にも大きく依存しているように思います。しかも、この詰め方が、ちょっと効率悪い。おそらく、同じサイズ、詰め方をすれば、違うガス窯でも、あまり時間の差は無いのではないかと思ったりもしています。
後日、8kwの電気窯で同じような詰め方をして挑戦したところ、4時間程度で目標温度まで達していました。 ガスならば、もっと早いかもしれません。
ということで、いろいろと書きましたが、結局、同じ量の作品を焼き上げる為には、短時間焼成窯を2回焚くのと、普通の窯を1回焚くのと、最終的な時間数は変わらないかもしれない。と、私は思ったりします。
焚く事が好きで、1度に作る作品が少ない(あるいは、作品が小さい)のであれば、短時間焼成窯は有効だと思います。
しかし、焚く手間は少なくして、ある程度の作品数を焼く必要があるのであれば、短時間焼成窯のメリットは少ないかもしれません。
以上、短時間焼成窯のレポートでした。
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