【web拍手ネタ】(未完成) 無理矢理笑いを誘おうかとも思ったけど、素直に感動系にしました。 ここまで書いておいてなんですが、やっぱり自分にはコメディの方が合ってます。 =========================================================================== はじまりは、なんてことのない些細な出来事だった。 今となってはその始まりすら忘れてしまうくらい、些細なことだった。 周りからは友達が居なくなり、僕をいじめる人だけが増えていく。 僕がいくら友達を作ろうと気丈に振る舞っていても、昔からの友達ですら会話を避けていく。 いつしか僕はそんなピエロのような生活に疲れてしまった。 僕が引きこもるようになってしまったのも、当然だと思う。 一日中部屋に閉じこもる毎日を過ごすようにもなったが、 僕には唯一の友達が居るから、別に構わなかった。 時計の針は午後三時を指す。 そろそろ、友達が来る時間だ。 友達を迎え入れようとカーテンを開ける。 眩しい日差しが部屋に入り込み、僕は思わず目を瞑った。 窓を開けるのに数秒のラグがあった後、外の風景を眺める。 いた。 友達はブロック塀を伝い、華麗なジャンプを見せた後、家の屋根に着地する。 その後、開けた窓から部屋に入り、すぐ傍にあるベッドで丸まった。 そう、僕の唯一の友達は、窓からやってくる三毛猫だ。 物心ついた時には、既にその猫と友達になっていた。 幼稚園、小学校と通学時には一緒に散歩し、帰った時は家の前で待ってくれている。 子供ながらも何か愛情のような物を感じた。 人間と猫という隔たりはあるものの、まるで友達、いや家族のようにすら思えていた。 そんな半分飼っているような状況で今の中学生活までに至ったのだ。 引きこもるようになって2週間は経っただろうか、 自分の中では幸せだった生活も、ついに終わりを迎えてしまった。 うだる様な暑さの、雨の日。 ろくに眠りにつくことも出来ず、寝ぼけ眼で外を眺める僕は、 恐らく過ごしてきた人生の中でも一番見たくなかった光景を目撃してしまった。 家の前を通る車。 ブロック塀から飛び出す猫。 一瞬の出来事だった。 猫が10m近く跳ね飛ばされ、車はそのまま走り去っていく。 言葉にならない恐怖感が全身を支配する。 電気が走ったように体が反応し、僕は傘も持たずに家から飛び出した。 死んだのだろうか。 いやだそんな訳がない。 死なれたら、困る。 水たまりの中を走り抜け、横たわる猫に手を触れた。 雨のせいか、すでに体が冷たい。 色々な場所から血が出て、僕の呼びかけにも反応を示さなかった。 結局、そのまま僕の友達は死んでしまった。 手足や腹部の死後硬直が始まってしまったのを感じたときは、 居た堪れなくなってしまって部屋に逃げこんでいた。 僕から、唯一の友達が消えていった瞬間だった。 それ以降、僕はもぬけの殻のように生気を失ってしまった。 定期的に部屋の前に置かれる食事もろくに喉を通らず、 あの猫が来ていた午後三時になると、悲しみで泣き出してしまう毎日を送っていた。 心配した親が部屋のドア叩いていたが、それすらどうでも良くなってしまった。 1日が1週間にも1ヶ月にも感じられてしまうこの生活に僕はもう耐えられず、 ある日、僕は家族が寝静まった夜にこっそり家を抜け出した。 昔、通学に使っていた自転車に乗ってゆっくりと走り出していく。 久々に見る外の風景に、以前とは違う感想が心の中に広がる。 喧騒が鳴り響く駅前や、寂れたショッピングモールですら、情緒のある風景に思えた。 自転車で数十分は走ったかという頃、ようやく目的の場所に到着した。 眼下に広がる荒れた海、突き出た岩の数々。 自殺で有名な岬だ。 もう、こんなつまらない人生を過ごしていたって全然楽しくない。 ここから飛び降りたら確実に死ねるだろう。 なんの刺激もないこの人生から、さよならだ。 家を出る前にしたためておいた遺書を足元に置く。 そして、その遺書が風で飛ばされないよう、靴を脱いで重りにした。 これで、もう準備は万全だ。 いつだって、死ねる。 昔の楽しかった思い出を少しずつ否定していき、未練が残っているものを消していく。 自分の人生が最悪なものだったと思い込み、飛び降りる心構えをする。 ふと、足元に何かが触れた。 遺書が飛んだかと思い、慌てて下の方を見る。 死んだはずの猫がいた。 意表を突かれ、しばらく固まってしまった。 あの時死んだ猫と瓜二つの毛並みをして、体格も同じくらいだ。 死んでいなかった? もしかして、生きていた? ……いや、そんなはずはない。 生々しい死後硬直を目の当たりにしてしまったし、そもそも三毛猫なんてどこにでもいる。 ただ似ているだけだろう。別に、今更何が変わるという訳でもない。 もう、いいんだから。 「あのー……」 「えっ!?」 僕は思わず素っ頓狂な声を上げ、後ろを振り向いた 「あのー、ここに来て、何をしているんですか?」 猫に夢中で気づかなかった。見知らぬ人がそこに立っている。 「まさか……」 ……足元の遺書が動かぬ証拠だ。 今すぐに警察へ連れて行かれるかもしれない。 またあの何もない部屋に連れ戻される可能性が見えてきてしまう。 少しの間を置き、相手がようやくその単語を声に出した。 「自殺、ですか?」 僕は、それに何も答える事が出来なかった。 「死にたいんですか?」 ……。 気が動転していたのか、咄嗟に僕は意思とは違う言葉を口にしていた。 「……家出です」 「どうして?」 間髪入れずに相手は理由を要求してくる。 「……嫌になって」 「何が?」 「あの生活が」 「生活って、学校で何かあったりしたの?」 「そんなところです」 「ふーん……」 そして、沈黙が訪れた。 横に居る猫も鳴き声一つ出さずに佇んでいる。 聞こえるのは、岩礁にぶつかる波浪の音だけ。 何故だろう、この猫を見ている内に、いとも簡単に毒を抜かれてしまった。 すっかり自殺しようという気も失せていた。 そして今も忘れはしない、「生きたい」と思える原点ともなった言葉が彼から発せられた。 「じゃあ、転校すれば?」 自分では想像もできなかったこと。 周りからの攻撃に耐えられずに引きこもってしまった僕には、 ただ自分の身を護るため、家に居ること以外の行動ができなかった。 「え、そんな大掛かりなこと……」 「大掛かり?自殺する方がよっぽど大掛かりだよ」 「でも、転校なんてしたら、親に迷惑が……」 「自殺された方が迷惑だって分からない?」 「あ……」 ようやく僕は、自殺の道を選んだ自分の愚かさに気が付いた。 転校にせよ何にせよ、方法はいくらでもあったのに。 馬鹿だ、こんな場面になって今更気づいてしまった。 馬鹿だ。どうしようもないバカだ。 「分かった?」 「……はい、すいません」 「じゃあさ俺の通う学校に転校してきなよ。できる限り守ってやるから」 「え、でも……嫌じゃないの?」 「嫌じゃないよ。それとも転校したくない?」 もう、僕は迷うのを止めた。 馬鹿馬鹿しい自分の性格に、腹が立った。 「わかった、転校するよ」 その後、お互いに情報を交換し、親と話し合った。 予想外だったのが、親が転校を一も二もなく了承し、すぐに手続きを始めてくれたこと。 わざわざ住まいも転校先の近くの賃貸マンションに変えてくれた。 あれだけ親不孝な真似をしたのに、これだけ自分の為に動いてくれるのが不思議でならなかった。 今思えば、その気持ちも痛いほど分かるんだけど。 彼と家族のサポートもあり、こうして僕は念願の転校を果たした。 彼は助けてくれると言っていたが、僕はあえてそれに頼らず自分の力でなんとかするように心がけた。 自殺しようと思った時の苦しさに比べると、よっぽど楽だった。 気丈な態度で生活した結果、数日と経たない内に僕には多くの友達ができていた。 テストで凄い成績を取る人や、毎回ギャグが滑る人。 気づけば、僕の周りがとても賑やかになっていた。 あまりに簡単に状況が変わったために、どうして前の学校では出来なかったのかと疑問に思えたくらいだ。 さてと、そろそろあの猫が居る彼の家に遊びに行こうかな。 ここの所、遊びに行ってもほとんどが猫とじゃれつく時間になってるんだけどね。 どっちが飼い主か分からなくなるくらいで、ちょっと申し訳ないとは思うけどさ。 まぁそんな感じで、僕は楽しく学校生活を過ごしています。 結果的に死んでいったあの猫の命を貰ったような形になったけど、 その分まで僕は頑張って生きようと思います。 いえ、生きます。 じゃあまた、お元気で。 =======================================================================