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第一話

あぁ、新しい朝が来た。
絶望の朝だ。

起きると同時に、電線に並んだスズメが一斉に飛び立った。
端っこにいたスズメはよほど慌てたのか、バランスを崩してきりもみ回転で落下していった。

うん、今日も絶好調。

制服に着替え、教科書の詰まったカバンを持って階段を下りていく。

「うわ……きた……」

居間を通り過ぎる時に、ちらっとそんな声が耳をよぎった。
声の主を確認しようと振り向くと、ソファーに座っていた兄が、急に目線をそらす。
(あぁ、兄さんか、仕方ないな)

偶然視界に入ったサンドイッチのいい匂いが、食欲に猛烈な勢いで訴えかける。
多分これを食べたら午前中は空腹を感じずに過ごせるに違いない。
あのサンドイッチを頬張りながら、温かいミルクを飲めたら幸せに違いない。
そう思いながら、僕は家を後にした。
あそこに僕の食べる物はないから。

しばらく平坦な道を歩いていると、近所の人と目が合う。
箒を持っていたので掃除をしていたことは分かったけど、
僕が来たからそれも中断するらしい。

いそいそと家に入って行き、玄関にいる子供に一言。
「いい、お友達が来ても、まだ家の外でちゃダメよ!」
聞こえてるよ。

気にしたってどうにもならないことだし、ご近所さんを無視して学校に向かった。
行く先々で僕のいる方の歩道がすっからかんになっているけど、
気にしたってどうにもならないことだし。

学校の始まる10分前に、ようやく学校に到着する。

途中、教頭先生が前から歩いてきたので挨拶したが、聞こえなかったらしい。
無言で、僕を中心に半径5mの壁があるかのごとく、横に回って通り過ぎていった。


高校だと言うのに、物音一つしない。

そして、僕の目の前には地割れができている。

僕は、その地割れの中を歩く。
それに伴って、地割れはどんどん広がっていく。

僕が昇降口についた頃、その地割れは元に戻り、喧騒を起こし始めた。

寝ているフリをしていた時に偶然聞いたことなのだが、
僕は、透明人間と真逆にとても注目されていることから、
あだ名として「不透明人間」と呼ばれているらしい。
誰とも話していないので真偽のほどは分からないが、
もう少しマシなあだ名をつけて欲しかったと、こっそり思う。

誰ともエンカウントすることなく教室の席に着いた。
しばらくして先生が出席確認を始めたが、
僕の名前が呼ばれることはないので、適当な教科書を眺めて時間が過ぎるのを待つ。

……さて、そろそろ長い一日が始まる。
元気に、静かに、頑張ろう。

第一話 終


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